きんもくせいの詩

こんにちは、検索迷子です。


今日は、草なぎさんの話題ではないので、ファンのかたごめんなさい。
どうしても今の季節に書きたいことがあり、
もともと検索迷子が好んで書いてきた詩の紹介をします。


秋から冬に向かっていくこの時期、
冷たい風とともに金木犀の香りに足を止めることが多い。
今日は、金木犀のことを綴った詩を二編紹介します。


例年、金木犀の詩を探して見つけられなかったが、
今年は二編見つけることができた。
早く書かなければ、金木犀の季節が終わってしまうと思いつつ、
ずっと保留にしていたのですが、
あるかたから背中を押していただいて、今日は急いで書いています。


ちなみに、金木犀とはオレンジ色の花をつけ、
もくせいは、銀木犀といい白い花をつけるもので、
同じような香りがします。


金木犀のほうが銀木犀の変種のようです。
詳しくは、こちらのサイトに詳しいのでご覧ください。
金木犀と銀木犀の違いは 花言葉や時期を比べてみた


ひとつめが、金子みすゞさんの「もくせい」です。
私が入手した本は、図書館の書庫から出してもらった、
1984年発行JULA出版局「美しい町 新装版金子みすゞ全集I」です。


探せば、現在発売されている本のなかにも収録されていると思いますが、
今日はそこまでご紹介しきれずすみません。
名前だけ図書館司書の資格を持っていますが、本当に今日は大慌てのため、
調査をさぼってごめんなさい。

もくせい


もくせいのにほひが
庭いっぱい。


表の風が、
御門のところで、
はいろか、やめよか、
相談してた。


秋のまっただなか、
まさに金木犀の香りが空気中に広がる様子が伝わる。
あまい香りに気持ちまで華やかになるような詩だ。



そして、もう一編。
長田弘(おさだひろし)さんの「冬の金木犀」。
みすず書房、2015年刊「最後の詩集」より。

最後の詩集

最後の詩集


この詩は、昨年は存在しなかった。
長田さんは今年の5月に亡くなられ、文字通りこれが最後の詩集なのだ。
そう思うと紹介するのはせつなくなるが、
秋を終えて、冬を迎えた金木犀を綴ったこの詩を遺してくださった。


長田さんの詩集については過去にも紹介させていただいた。
本についての詩集
夏休みにゆっくりと読みたい絵本
亡くなった際も検索迷子で何かを書こうと思っていた。
だが、あまりに偉大な詩人の詩に向き合うことができず、
いまやっと、この詩を紹介しようと思う。

冬の金木犀


秋、人をふと立ち止まらせる
甘いつよい香りを放つ
金色の小さな花々が散って
金色の雪片のように降り積もると、
静かな緑の沈黙の長くつづく
金木犀の日々がはじまる。
金木犀は、実を結ばぬ木なのだ。
実を結ばぬ木にとって、
未来は達成ではない。
冬から春、そして夏へ、
光をあつめ、影を畳んで、
ひたすら緑の充実を生きる、
葉の繁り、重なり。つややかな
大きな金木犀を見るたびに考える。
行為じゃない。生の自由は存在なんだと。


この詩の奥深さを語るには、
今の自分の言葉では足りないかもしれない。


甘くつよい香りを放つ今だけがすべてじゃない。
ひたすら緑の充実を生きるのだ。


いま、金木犀の香る道を歩きながら、
一年にわずかな期間しか自己主張をしない金木犀が、
一年の大半を緑の充実のために生きているという事実が、
なにか、薄い膜のように気持ちを揺らしてくる。


ジャンプする前には、かがむことが必要だとわかっていても、
かがみ続けることとの多い日々を、自分は豊かに生きているだろうか。
もし、甘くつよい香りさえも放つことができなかったとしたら?
とか。
沈黙の日々を肯定しながら生きていけるだろうか。


もう少しコメントをしたいところですが、
この詩をもっと読み込みたいというのが正直な感想です。


とにかく一日も早くご紹介だけしたくて、今日は書きました。


金木犀、そちらでは香っていますか。


では、また。