新川和江の、捜す

こんにちは、検索迷子です。


新川和江(しんかわかずえ)さんの詩集、
新川和江詩集、角川春樹事務所刊より、
「捜す」の詩を紹介したい。

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

捜す
       新川和江



わたしは誰のあばらなのでしょう
わたしの元の場所は どこなのでしょう
日が暮れかかるのに
まだ 見つからない


川が流れています わたしの中を
みなもとは どの山奥にあるのでしょう
せせらぎの音がつよくなるので
さかのぼって 行かずにはいられません


暗くなっても 家に帰ってこない
ついに帰ってこない 女の子がいるものです
捜さないでください 彼女自身がいま
<捜す人>に なっているのですから


捜すということは、永遠に続く迷路のようなものだ。
自分自身、検索迷子というブログタイトルをつけたくらい、
捜すことがどういうものなのか、その答えを知りたいと思っている。


この詩の登場人物は一人なのだろうか。
それとも、捜している複数の人を描写したものなのだろうか。
捜してみないと読み解けない、
視点がつかみにくい詩だ。


混沌とした思いを、
こうした詩の言葉を借りて、
自分も同じ、自分とは違うと、
整理したり、かき乱されたり、意識を別に追いやったりしながら、
捜しているものを、探し出そうとしている。


捜しているだけでは、終わらない。
だから捜しているものの答えを、
一時的にでも終わらせてくれるものを見つけ、
やっぱり捜し続ける。


スパッと答えが見つかっても、
見つからなくても、
捜すことは終わらない。


捜すことが癖になっている。
それでいいのか、と問いかけ続けてしまう。


捜さないでくださいと、言えるなら言ってしまいたい。
そういう心のふわふわに気づかされる詩だ。


捜すこととは、
なんて、深いのだろう。


新川和江さんの詩は、過去にもレビューしています。
よろしければお読みになってください。


検索迷子 − 「元旦」という詩


では、また。