こんにちは、検索迷子です。
人に薦められて読了した本がある。
『顧客はサービスを買っている −顧客満足度向上の鍵を握る事前期待のマネジメント』、
北城恪太郎(きたしろかくたろう)監修、諏訪良武(すわよしたけ)著、ダイヤモンド社刊の本だ。
顧客はサービスを買っている―顧客満足向上の鍵を握る事前期待のマネジメント
- 作者: 諏訪良武,北城恪太郎
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/01/17
- メディア: 単行本
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サービスサイエンスという、
サービス業の業務に対して、科学的アプローチを適用し、
体系化し、科学的、工学的な評価や分析が、
IBMで取り組まれてきて、
この10年ほど注目されるようになってきたという。
本書はそういった考えをベースとしている。
サービスサイエンスとは、という言葉を知るためにも意味がある一冊だった。
というと堅苦しいような内容かと思いがちだが、
本書では、サービス業の成功の鍵は「お客様の満足」として、
そのお客様の期待値にどこまで応えることができたかという達成度で決まる、という考えがベースとなっている。
そのため、従来は定量化しにくいと言われていたサービスを分類したり、
特性や構成要素を明らかにして図解している。
これは著者、諏訪良武さんが実際に、
オムロンフィールドエンジニアリングの、
サービス・プロセスの「見える化」を実践してきたことによる、
生きた事例に基づくもので、とてもリアリティがある。
当社はオムロン製品の保守サービスを担っている会社である。
本書を読むまで知らなかったのだが、
オムロンは、駅の、自動改札機、券売機、精算機を鉄道会社に納め、
銀行のATMや、両替機にも大きなシェアを持つという。
余談だが、
私自身、社会で提供されるサービスとして、
ストレスなく誰でも使える、
説明がなくても体感的にわかるサービスとして、
駅の券売機や銀行のATMのようになりたい、と常日頃、人に話している。
が、どこの会社で提供しているサービスかとまでは、
考えたことがなかった。
それらの社会のインフラともいえるサービスを支えているのが、
諏訪さんの在籍した当社ということだ。
公共性の高い製品を扱うゆえに、
保守には秒単位でのスピードが要求されるなか、
関係会社150人、2000名以上の社員が関わるサービスの改革は、
かなり苦労をされただろう。
基本に着実に、お客様のニーズを汲み取り、
現場とサービスの見える化を丹念に行った結果、
業界でベンチマークされるような存在と現在はなっているという。
見えない、形のとらえどころのない、サービスというものを、
どうやって売っていくか。
分類して、分解して、モデル化をする手順を踏めば、
問題点や改善点が整理されていくという。
そして、目指すサービスの姿が明らかになるのだ。
事前期待とは
本書の副題にあるように、顧客満足の鍵を握るのは、
「事前期待」にいかに応えるかという。
本書から関連することを、いくつか引用したい。
まず、サービスの定義として、
2007年2月、情報処理学会の「ソフトウェアジャパン2007」の際、
諏訪さんがまとめたのが次のものだ。
第6章 サービスと顧客満足の鍵を握る「事前期待」
図6-1 サービスの定義
人や構造物が発揮するものの機能で、ユーザーの事前期待に適合するものを「サービス」という。
事前期待の構成要素は次の内容だ。
第6章 サービスと顧客満足の鍵を握る「事前期待」
■サービスか、余計なお世話かは、「事前期待」私大
図6-2 事前期待の構成要素
事前期待の構成要素は4つの要素から成り立っている。
事前期待の内容
−サービスメニュー
−サービス品質
事前期待の持ち方
−共通的な事前期待
−個別的な事前期待
−状況で変化する事前期待
−潜在的な事前期待
ユーザーの属性
ユーザーのサービスへの関わり方
図6-3 事前期待の持ち方
事前期待の持ち方は、4つのタイプに整理することができる。
共通的な事前期待
→マニュアル化する個別的な事前期待
→顧客DBに登録する
状況で変化する事前期待
→観察と会話から感じ取る
潜在的な事前期待
→お客様を好きになる
→知恵や事例を蓄積する
サービスと言うとき、顧客満足度を高めると言うとき、
それは提供する側の視点になっていないか、
本書では考えさせられることが多かった。
サービス業に限ったことではなく、
誰かに何かを提供する仕事をしているなら、
本書は一読することをおすすめしたい。
特に、事前期待に応えられているか、
という問いかけは、
ともすれば事後対応になりがちな動きに、
相手の望むものを想像する力こそが、
サービスの源になるのだと気づかせてくれる。
では、また。