検討しますを言わせない営業

こんにちは、検索迷子です。


期待をせず読み始めて、思いのほかに得られるものが大きい本にときどき出会う。
今日は、その一冊、『”検討します”を言わせない営業術』、
浅井隆志(あさい・たかし)著を紹介したい。

“検討します”を言わせない営業術

“検討します”を言わせない営業術



著者の浅井さんは、現在はセールスの学校の代表をして、
セールスの研修などをされているようだ。
セールスの学校 校長 浅井隆志のブログ


ところが、以前の職歴を見ると、
闇金とかキャバクラ店長といった異色のものもあり、
こういう方が書く営業術っていったいなんだろうと思い手にした。


導入部分は軽く読めて、次第にしっかりと体系立てた理論とか、
経験を実践に変える力があるのがわかり、へんな先入観はなくなった。
著書の後半にいけばいくほど肉厚になって引き込まれた。
読み終えて、とても意味のある内容ばかりだと思った。


営業術というタイトル通り、営業トークのために書かれた本だが、
そのほかの日常的なことにも応用可能な点がたくさんあるだろう。

心理学がベース

本書では、営業術のテクニックとして心理学のNLPとか、
LABプロファイル(ラブプロファイル)という理論をベースとして、
納得しやすい名称などが引き合いに使われている。
そのため、心理学の本としても読むことができるだろう。


用語の解説としては、次のサイトが参考になる。

NLPタッチ

NLPとはNeuro-Linguistic Programmingの頭文字,、N'、'L'、'P'から来ています。
日本語では「神経言語プログラミング」と訳されています。


代表システム私たちは"五感"を通じて世界を認識しています。その"五感"とは、
・視覚 ・・・ Visual
・聴覚 ・・・ Auditory
・触覚 ・・・ Kinesthtic
・嗅覚 ・・・ Olfactory
・味覚 ・・・ Gustatory
のことを言います。

NLPでは人の"五感"の背景にある
神経論理構造を「代表システム」と呼んでいます。

代表システムは五感の頭文字を取り「VAK」と表現されます。
(嗅覚と味覚は触覚に含まれてます)

また、同サイトには、
ラポールミラーリング、ペーシング、バックトラッキングキャリブレーション
といった用語解説も詳しい。


LABプロファイルについては、NLPのプログラムの一つのようだ。
言葉の魔術師になるためのテクニックといえるだろう。

日本NLP協会


NLPのメタプログラムが進化して開発された
LAB(ラブ)プロファイル®は、言葉と行動を分析し相手の思考パターンを把握します。

LABプロファイル®のLABは、Language and Behaviorの頭文字をとったもので、
言葉(Language)と行動(Behaviour)の関係性を分析したものです。

LABプロファイル®(NLPメタプログラム)は、「心を変える言葉の魔術」とも言われていて
14のカテゴリー(12の質問)と34のパターンを使い瞬時に相手のパターンを把握するスキルです。

本書では、この2つの要素を著者の体験とひもづけたり、
実践的な内容に噛み砕いて伝えてくれている。
これらの理論は本書後半に詳細に書かれいる。


そのほかにも営業の現場で少しずつ使っていけそうな内容を、
以下、本書を抜粋した形でご紹介します。

営業マンの7つの落とし穴


本書によると次の内容だ。

1 営業マンは笑うな
2 営業マンは汗をかくな
3 営業マンは嘘つきであれ
4 営業マンはサボれ
5 営業マンは頭を下げるな
6 営業マンはしゃべるな
7 営業マンはノルマを達成するな

文字だけ見ると、え?と思うこともあるが簡単に解説すると、
無意味な笑顔は警戒心を持たれる、
汗より頭に汗をかけ、
本物のプロとしてスマートに見せよ、
がんばれるときは徹底してがんばる、
仕事相手とは対等であれ、
相手の心を開かせ話を聞け、
本来の営業の目的を見失うな、
といったようなことが書かれている。

お客様の心を知る


行動の根源にあるものは、2つあるという。
欲と痛みということだ。
すべての行動がどちらかに起因、あるいは混在しているようだ。


相手を理解することによって、売り方や言葉が変わるということを理解するため、
欲と痛みのどの要素が相手に響くかを考えるということになる。

ストクロージングの重要性


クロージングにも準備がいるのだと、私は知らなかったため、
ここはとても参考になった。
契約に向けての懸念事項や、検討事項を先回りして聞いたり、
問題点をクリアしていくということだ。


その手法としては、
もし仮に何々するならば、
たとえば、何々する場合、
ちなみに、ほかに何かありますか、
といったような仮定法を使うことによって、
聞きにくいことを聞き出すということのようだ。

バックトラッキングは、オウム返し


先にも書いたが、心理学のNLPの手法であるバックトラッキングには、
3つのポイントがあるようだ。
・事実を返す
・感情を返す
・要約して返す


相手の言っている言葉を受け止めて、返すことの効果があるようだ。
確かに、自分が話したことを、何々なんですねと返してもらうと、
相手と意思疎通が図れたような気持ちになるという経験は多い。

信頼関係の前提


これは、わかっていたようでわかっていなかったことかもしれない。
それは、
相手の反応は、すべて自分のコミュニケーションの成果である、
ということを受け止めるということだ。


種をまいたのは自分だと自覚するところから、
相手の反応は自分が引き起こしたもので、
もし不具合があったら、自分のこととして振り返って、
結果的にどうするかを考えていくということなのだろう。


また、相手を理解するためには、
現在、過去、未来の順番に相手の生い立ちや考え方を聞き出し、
価値観や考え方の違いを理解していくという手法があるようだ。
自分を知ってもらうことに人は喜びを見出す、という点をうまく引き出し、
相手の警戒を解く効果もあるだろう。


さらに切り返しの際は、NLPの手法であるリフレーミングがいいようだ。
これは、相手の思考の枠組みを架け替えるということで、
ネガティブ発言をした人に対して、ポジティブ発言で返すということだ。
たとえば、
自分はあきっぽくてだめだと言う人に対して、
好奇心が旺盛なんですねと言い換えるということになる。


あなたを肯定して受け止めていますよと言うサインとして、
ポジティブな言葉を使っていくのだ。

嫌いな相手を好きになるために


行動を習慣化すると、心も変わるという。
それは、形入法(けいにゅうほう)という方法論のようだ。
たとえば、役職がつくと責任感を伴った行動をするといったことのように。


嫌いな相手に対しては、肯定的意図を受け止めることが大事なようだ。
行動は嫌でも、その行動の原因となっている意図を考えていくということだ。
たとえば、喫煙は嫌だとしても、喫煙の根底あるリラックスしたいという意図を汲む、
そういうことのようだ。
貧乏ゆすりとかも、そう考えていけばいいのだろう。


また、自己受容と他者受容は正比例すると言われるようだ。
つまり、相手の嫌いな部分を実は自分も持っていないか、ということだ。
だらしない人への怒りがあるときは、自分のなかにも同じ要素がないか。
自己嫌悪している部分を、他者に厳しい目でも見ていないかということのようだ。
相手を好きになるためには、まず自分を受け入れることが大切となってくるのだ。

検討しますを言わせないセールストーク


書名ともなっているここが本書の本題となる。
著者が考えたプログラムがあるようだが、そのベースとしたのが、
LAB(ラブ)プロファイルと、4MAT理論(フォーマットりろん)のようだ。


4MAT理論は次のサイトに詳しい。

実務から学ぶ 研修学   〜学習ノート〜
4MAT理論

1980年に元教師のバーニス・マッカーシーという人が、個々の学習法、とりわけ脳の左右半球の優勢性に関する特徴を考慮に入れた、自由形式の全体論的な教授モデルを開発し、「4MAT(4つの敷物)」と名づけたそうです。
もともとは、学校教育のカリキュラム設計用のモデルだったようですが、現在では、社会人の研修作成時におけるガイドラインとして利用されているようです。
内容は、
1.経験:課題や練習に取り組んでもらう
2.振り返り:課題や練習の振り返り、感じたことや起こったことを口に出す
3.関連づけ:1で経験したことと研修テーマとの関連性を考える
4.理論/コンセプト:理論やコンセプト、研修内容を知る
5.簡単な練習:学んだことの簡単な練習
6.本格的な練習:現実的な状況設定をした上での練習
7.実践への準備:職場や現場で実践できるための準備
8.実践:職場や現場での実践
というものです。


こうした理論をベースに、浅井式セールスとして、
BIPRO(ビプロ)セールスを提案しているようだ。

BIPRO(ビプロ)セールス

1.benefit ベネフィット −顧客の利益・メリット
2.item アイテム −あなたの提供する商品やサービス名
3.process プロセス −導入手順or導入プロセス
4.option 可能性 −さまざまなベネフィット

これらの要素を相手に合わせて伝えていくということのようだ。
相手に魅力を感じてもらい、検討しますと言われないようにする、
ということなのだろう。

話す技術


話のうまい人を分析してわかった共通点というのが参考になった。
それは、話の抑揚のつけかたということだ。
・強弱
・スピード
・間(ま)

これらのバランスがいい人の話は、つい耳を傾けたくなるというのは納得できる。

文章を学ぶ


文章を学ぶとトークが冴えるという。
そのコツとは3つあるようだ。
・ワンセンテンス一文
・展開型(不明点を掘り下げて説明していく)
・書き出しは主語と感情(喜怒哀楽)


この文章の書き方を取得することにより、会話にも変化があるという。

省略された言葉を見破る


相手とやりとりするとき、意図がうまく理解できず話がかみあわなくなることがある。
それは、相手と自分の価値観や価値基準、過去の経験や体験の違いによるものだ。
先入観もある。


それをうまく明確にしていくためには、次の3つの質問が使えるという。
・具体的には?
・過去に何々といった経験はありますか?
・もう少し詳しく伺ってもよろしいでしょうか?


掘り下げる言葉を上手にはさんで、相手の本音を引き出したいものだ。


本書には、そのほかにも、
叶うとは、十回口にすることだとか、
種をまかずに花を咲くことを期待する人が多いとか、
わりとシンプルだけど、小さい努力を積み重ねる大切さを伝えている。


引用が長くなりましたが、営業職に初めて就く人や、
対人面で悩みを抱えている人にはヒントが多い本だと思った。


では、また。