退職を迷っている人へ

こんにちは、検索迷子です。


ニュースで、労災や過労死の認定やサービス残業の件を見て、
労働者側が不利な状況に立たされているのを知ると、
本当に給与労働者は小さい存在だと思わされる。


私自身、いくつかの会社にいて、会社の人事制度というものは、
労働者のことではなく会社都合でできていると思うことが多かった。


ある会社での当たり前が、他社では特例事項だったり、
就業規則ひとつとっても、似たような記載であっても、
その実際の運用は人事担当者、
おもに人事部長の裁量ひとつのローカルルール運用が多いと思った。
そして、就業規則に書いていないようなことまで、不文律でいくつもあった。


なぜかというと、個人の事例は前例がなかったり、周辺事項が常に異なっていたりして、
毎回、その都度判断ということが多いからだろう。


でも実は、多くの会社には、
サービス残業が蔓延し、会社側はそれを黙認したり、
あるいは言葉や書面にしなくても強要している。
どうして、みんな我慢することに慣れてしまったのだろう?
みんなが我慢しているからという理由だけで我慢し、誰も労基に駆け込まない。
そんなに、そんなにいい会社で高級取りでなくても、皆がそうだ。
それでいいのかなと思う。


ふと見渡すと、どこにでも、心身症による休職者がいて、
ある日突然いなくなるという逃亡のような退職をする人はいる。
試用期間中に辞める人だってたくさんいる。
そんなのは全然、特別ではない。異例ではない。


もちろん、働く全ての人がそうではないだろうけど、
この広い世の中の会社には、どこにでもそういう人はいる。
身近にはいないかもしれない。
心療内科に通院する人も、産業医がいる会社も今では随分と増えて、
当人がそれを口にすることも多くなった。
心身症が人を寄せ付けないほどの特別な病気ではない現実に、
当人だけが、自分が悪いと責めたり、傷ついてはいけない。


健康で、勤怠もよく、愛社精神に満ち溢れていて、
仕事も上昇気流で、給与も上がる一方という、サラリーマンの鏡のような人は、
そのまま突っ走っていてもいいかもしれない。


でも、もし今すぐ辞めたいと思っているなら、
あと少し考えてみても遅くはないと思う。
特に、次が決まっていない人は少し考えてみて欲しい。


なぜか。
それは、次が決まらずに退職すると、
煩雑な事務手続きを全部自分でやらなければならないからだ。


入社するときは、事前とか入社してから、
人事担当者やら転職会社やら、同僚やら上司やら、
あれこれ世話を焼いていくれる人がいる。
書類一つのちょっとした間違いを教えてくれ、
わからない手続きは相談にのってくれ、好意的にすべてが進んで行く。


でも、辞めると決まってからはすべてが一人なのだ。
辞めた後は誰も相談に乗ってくれない。というか相談しにくいだろう。


サービス残業に疲れ切っているひとに


辞めようと思ってるけど、あと三ヶ月くらい我慢できるなら、
少し準備をしたほうがいい。
それは、勤務時間の正確な記録を残すということと、
給与明細を残すということだ。


サービス残業をしていて、時間外申請がしにくいところもあるだろう。
それでも、もう辞めると決めているなら、
申請は過小で手当てを減らしてでも、
時間の記録は絶対に本当の時間でしたほうがいい。
あらかじめタイムカードを押してから、サービス残業はしてはいけない。
これでは、会社に存在していたという何の記録も残らない。


そして、サービス残業が不文律になっていることや、
タイムカードの打刻が早めに行われて、引き続き業務をしているという、
会社の悪しき慣習を、何かに記録しておいたほうがいい。


たとえば、私が知る上場企業の話では、
・始業一時間前に、みんな仕事しているんだから早出を強要された(無給)。
・昼休みに、10分で食事を済ませて、残り時間は仕事をしろと言われた(無給)。
・全員が残業しているから、同じように残業をして、早く帰宅するなと言われた(無給)。
・毎日、タクシー代を自腹で払う課員が蔓延(無給なうえに、タクシー代未払い)
・休日出勤は申請しないのが慣習(無給)
・22時前になると深夜手当てになるから、全員でタイムカードの前で声をかけあって、
全員が一列になり、時間詐称のための打刻をしていた。


こういうのがざらにあります。この発言は部長クラスでさえ言います。
それだけ、労働条件についての知識が薄いのです。


そして、こうしたサービス残業的な要素は、
本人がそう申告したのだからという理由で、受理されてしまいます。
上司も人事も黙認しているのが普通です。


申請ベースでは、それが不文律で反抗できなかった、
圧力があった、慣習だったということは、できるだけ残しつつ、
でも、事実は必ず記録しておいたほうがいい。
それが、退職したあとのハローワークに持ち込んで相談すれば、
違った活用ができることもあるのだ。


あなたが、今の会社を辞めたくないなら、
できる社員であることを誇示するために、それを続けるのは自由でしょう。
でも、もうしんどい、これは厳しいと退職を考え出したら、
ちょっと次のことを頭に入れておきましょう。


「一身上の都合」が、「特定受給資格者」になり、待機制限がなくなることも


たとえば、退職時に会社から受け取る離職票は、
社労士さんの事務所で処理することもあり、退職後に郵送されてくる。
多くの人は初めて見るもので、人事が書いたのだからと信じているだろう。


このとき、退職理由に、「一身上の都合」を会社が選んでいる場合、
それをそのまま受け入れると自分に不利なことがある。
それは、失業給付が3か月の待機制限があり、
実際の失業手当を受け取れるのがずっと先になるということだ。


あなたがもし、残業時間が多い会社にいて、辞めようとしているなら、
その時間はしっかりと記録しておいたほうがいいだろう。
それは、退職の直前三ヶ月すべてが超過勤務時間が45時間以上であれば、
その待機制限がなくなり、すぐに失業手当の受給ができる可能性があるからだ。


その一例を示してくれているサイトがあったので、ご紹介します。

労働センタースタッフ日記−失業保険「特定理由離職者」って?


これまで特定受給資格者として遇されていた、体力減退、病気、負傷、五感の衰えなどで、あるいは親族の介護・看護などで退職せざるを得なかった「正当な理由のある自己都合により離職した者(ただし雇用保険加入期間が6か月以上12か月未満の場合に限る)」が特定理由離職者として”再定義”されたことも注目点です。これは従前からも、自己都合退職ではあるが「給付制限3ヶ月間」を受けないものとして運用されてきたところですが、今回改めて「特定理由離職者」として位置づけられています。

使い勝手は大いにありそうですね。  

以上の法改正のポイントを把握され、特定受給資格者及び特定理由離職者各制度をどうか有効に使いこなしてください。

*特定受給資格者の主な事例 
  1.倒産
  2.会社移転による通勤困難
  3.解雇
  4.勧奨退職
  5.契約締結時における労働条件との著しい相違
  6.賃金未払いや著しい賃金減額
  7.1月45時間を超過する長時間労働
  8.有期労働契約で3年以上継続雇用された場合における雇い止め
  9.パワハラ


この7.の1月45時間を超過する長時間労働は、
私が知る限りでは、「退職前過去三ヶ月連続」が条件です。
また、45時間超過というのは、(一日8時間*勤務日数)+45時間ということです。


さらに、最近は企業ごとにさまざまな人事制度を適用しているため、
裁量労働制などで、一定時間の残業手当をあらかじめ含んで支払いをしていることがあります。
それによって、この45時間の考え方がどうなるのかまでは調べていませんが、
事前に時間があれば調べるといいですね。
とくに、長時間労働をしてつかれきって、次も決めてないで辞める人ほど、
この失業手当待ちの3ヶ月は長いものです。
最近、退職金制度のない会社も多くなり、ますます心もとないことでしょう。


ちなみに、私は最初にいた会社を「一身上の都合で」退職したあと、
ハローワークで「残業多くなかったですか?」と聞かれて、
「あ、多かったです。」「給与明細ありますか?」「一部捨ててしまってます。」
「タイムカードのコピー、取り寄せられますか?」「お願いしてみます。」
と、人事に言いにくかったのですがお願いしました。
それで、タイムカードを取り寄せて、残業時間が多いとわかり、
待機期間がなく失業手当がもらえました。


そのときは全く気づかなかったのですが、
別なときに同じことをやろうと思って、タイムカードのコピーを持参していきました。
そうすると、ハローワークの窓口で、
「一身上の都合に異議申し立てをして、長時間労働を理由に」ということになるので、
こちらの言い分をもとに、企業に確認をとる、とのことでした。


ところが、こちらの申請のほうは結果的にあきらめました。
理由は最初の会社のほうが虚偽なく時間申請をして、残業手当を受けていた点と、
労基による指導がときどき入る会社だったため、
人事担当が揉め事にならないよう寛容に処分してくれたのでした。
今にして思うと、私は「一身上の都合に意義を申し立てて辞めていた」ということだったのです。


後者の会社のほうは、裁量労働制で一定時間の手当てをもらっていたり、
打刻より少なく残業申請していたり、何よりも不利だったのが、
タイムカードも給与明細も現物がありませんでした。


両方とも社内のイントラネットでしか見られないため、
退職日にあわててプリントアウトしたのですが、
サービス残業申請ベースの記録が表示され、
社内にいた時間の記録がありませんでした。
異議申し立てをする書類をかき集められず、断念しました。
本当に長時間労働だったため、絶対に証明したかったのですが無理でした。


だれも、この45時間*3ヶ月のことなんて、現役で働いている人は知らず、
誰からも教われないんですよね。
辞めて初めて知り、手の打ちのようがないのです。
申請ベースは自己都合といわれるならば、社内に拘束されていた時間や、
そのときやっていた業務の時間(メールでもエクセルでも日付が残るよう)を
何かで証明できなければならないのですよね。


職歴のブランクがなく、次が見つかっても油断禁物。離職票は半年分いる。

さて、退職時にもらう(社労士事務所から郵送されてくることも)離職票ですが、
これはハローワークのお世話にならず、仕事がすぐ見つかったからいらない書類だ、
と捨ててしまってはいけません。
少なくとも、次の勤務先で半年以上働かない限り、
仮に半年以下で辞めた場合は、そのときの離職票と、最近やめた離職票をあわせて、
直近六か月分が、失業手当の算出のためには必要なのです。


せっかく仕事についても、不幸にも半年以内に何社も転職する可能性だってあるのです。
前職の離職票は、たとえハローワークに行かなくても半年は保管しておきましょう。
保管しておかないと、再発行してといいにくいお願いをすることになりますよ。



多くの人にとって、退職の手続きは気持ちが萎えるものです。
誰も、期限を決めてくれず、コツを教えてくれない。
しかも、会社を辞めた自分の心の傷は癒えない。


だけど、だからこそ、さっさとハローワークにいき、
手続きに必要なことを知ったほうがいいでしょうね。


それと、やめる前に就業規則をしっかりと読んでおくこと。
就業規則には、会社のルールを破った人間はこうしますという罰則が満載で、
それをしらずに権利を主張してもしょうがないですからね。


一生懸命働き、この会社のために命を落としても惜しくないと思っていても、
それは当人だけ。
もしあなたが、病に倒れたら、遺族はあなたの愛社精神などおかまいなしに、
悲しみを金銭的解決で紛らわすために裁判をするでしょう。
そんなとき、あなた自身が自分に不利な条件をたくさん残してしまったり、
あるいは改ざんして、事実を闇の中に放ってしまっては元も子もありません。


仕事の納期やプレッシャーのために、サービス残業をする事情は、
痛いほどわかりますが、
サービス残業時間を改ざんするなら、帰ったほうがいい。
事実の時間をしっかり記録したほうがいい。


これは、退職して収入源のない自分を守るためでもあり、
もし、あなたが命を落としたら、家族のためにもなります。


プロジェクト工数の嘘で二次被害


そして、もっと身近なことでいえば、
優秀に見せようとするあまり、実際は100時間かけても、
30時間しか申請をしなければ、あなたはそれだけでできるのだとまた同じ分量の仕事がきます。
プロジェクトマネジメント的な観点でいけば、それはマネジメントの不備だし、
あなたの力量以上の仕事を割り振っているわけです。


それはあなたのサービス残業による好意ではもはやカバーできない以上に、
あなたの実力不足の面でもあるかもしれません。
本当の原因を探すのはマネジャーです。
あなたが自分を責めることでもありません。
だからこそ、本当の時間を申請したほうがいいのです。


次回同じようなプロジェクトを、
今回を参考に短い工数で見積もってしまうリスクがあります。
そうやって首をしめる循環が続いてしまうのです。
根本的な解決に近づけるためには、
人員不足かなど、プロジェクトの実力、体力をはっきりと見せるほうがいいと思います。



好きでその仕事をやっているなら、そのあと何が起きても受け入れるでしょうか、
命まで落としてやる仕事かどうかは本人しだいです。


すこしでもネガティブな気持ちが心に宿り、
なんとか少しでも損をしないようにやめたいと思ったら、
就業規則を読み、ハローワークに相談できる書類を準備しておきましょう。
私だって、一度は認定されたけど、二度目はだめだったという経験が、
結構悔しかったりします。
こういうのって、頻繁に経験することでもなく、
誰かに聞けることじゃないんですよね。


だから、書き留めておこうと思いました。


サービス残業でタイムカードを押そうとしているあなた、ちょっと待った!
それでいいの?


それでいい、と健康な明日が来ると思っている人はみんな思うんですよね。


でも、私は過労死で何人もの知人を失くし、
何人もの認定されなかった人を見てきました。
こういう人たちは、書面による証拠がなく、自発的に長時間労働をしていたと言われたのです。


いざとなったら、会社と個人は対立関係です。
それを知ったうえで、自分を守りましょう。
家族がいるならなおのこと真剣に。


個人は小さい。
でも、小さくても少しはできることはある。


ちやほやして入社を歓迎してくれた会社とも、
退職願、このたった一枚で別人となるのです。
会社は、最後はあなたを守ってくれません。


健康で、金銭的にも困らず、次の仕事に明るく向かいたいですね。
そして、離職票は半年間は捨てずにね。

私は人事のプロではないので、経験に基づいた話だけですが、
もっと詳しい人に聞いてみるといいと思いますよ。
サービス残業をしなければ仕事がまわらない組織は、いくらでもあると知っています。
でも、あなたが健康を害してまで、したいサービスって何でしょう。


なお、これは私の経験と、知り合いからの話に基づくもので、
すべての人に適用されるわけではないと思います。
相談できる人がいれば必ず確認してください。


ちなみに、長時間労働だから、一身上の理由にしたくないと、
あまりにもストレートに人事にごねるのはやめたほうがいいかもしれません。
揉めごとになりそうですし、客観性がないので。
人事を敵に回すのは、いろんな面で不利になります。


私は初回にそういう知識がなかったから、
逆にトラブルにならず企業は実態を認めてくれたのだとおもいます。
解雇などは、また違った対応になると思いますから、必ず確認を。



そのため、一度きちんとそういう知識がある人を介して相談しましょう。


笑顔で働けていますか?
それとも、次を目指しますか?


どんなに入社できてうれしかった会社でも、
時に、憎しみや敗北感のなかで、いつかはこうして去っていくのです。
そのとき、少しでも負担が軽くなるよう、準備をしておきましょう。


では、また。


追記:

情報の非対称性


企業と労働者の関係を考えるとき、
経済学でいう『情報の非対称性』という言葉がいつも浮かんできます。

wikipedia - 情報の非対称性


経済学では、市場における各取引主体が保有する情報に差があるとき、その不均等な情報構造を情報の非対称性 (asymmetric information) と呼ぶ。情報の非対称性は、人々が保有する情報の分布に偏りがあり、経済主体間において情報格差が生じている事実を表している。



「隠された情報」と「隠された行動」 [編集]
情報の非対称性はしばしば、それが取引が開始される前に存在する情報の非対称性であるのか、それとも取引が開始された後に存在する情報の非対称性であるのかに、区別される。

取引開始前における情報の非対称性というのは、例えば中古車市場における中古車の品質情報の格差が挙げられる。買い手が知らない情報を売り手が知っているという点から、このような情報は「隠された情報」と呼ばれている。他方、取引開始後における情報の非対称性というのは、例えば自動車保険市場を考えたとき、保険に加入しようとしている人は自分の運転能力を知っているが、保険会社はその人の運転能力をあまり把握できない。このとき、保険に加入した人の行動が保険会社にとって完全には明らかではないという意味で、保険に加入した人の行動は「隠された行動」と呼ばれている。契約の履行は、保険に加入した人の行動に起因するが、保険に加入した人の行動について保険会社が情報劣位者となる。

情報の非対称性を「隠された情報」と「隠された行動」に区別する理由は、引き起こされる問題の性質が異なるためである。経済学の世界では一般に、「隠された情報」は市場において逆選抜の原因になり、「隠された行動」はモラル・ハザードを引き起こすとされている。

いかに、情報をキャッチするかが鍵ですね。どんなことも。