小泉進次郎の話す力

こんにちは、検索迷子です。


政治には疎いが、つい気になって手にした一冊がある。
それが、『小泉進次郎の話す力』佐藤綾子(さとうあやこ)著、幻冬舎刊だ。

小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


著者の佐藤綾子さんは、日本大学教授であり、
日本のパフォーマンス学の第一人者として、
政治、財政界、医学界などの支持者がいて、
議員演説指導をしたり、
社会人のパフォーマンス教育などを手がける方だ。


「表現されない実力は、無いも同じだ」という、
佐藤さんのパフォーマンス学のモットーは、たいへん興味深い。


本書では、小泉進次郎氏のほかに、
父である小泉純一郎氏、オバマ大統領のスピーチにも言及している。


が、圧倒的に本書に引き込まれるのは、
小泉進次郎氏のスピーチのうまさとその技法だ。
正直、これまで意識してきたことがないが、
本書のなかの事例を見ていくだけでも、
話に引き込まれる感じがわかる。


パフォーマンス学のプロとして佐藤さんは、
就任演説では専門的分析をしても非の打ち所のなかった、
オバマ大統領に匹敵する演説の名手として、小泉純一郎氏を挙げている。

そして、小泉純一郎氏の2008年の引退後、
誰が名手として登場するかと思っていた頃に、
小泉ジュニアの演説を聴いて、
その上手さに目を見張ったというから本物度合いがわかるだろう。


小泉純一郎氏も、
わかりやすいフレーズを多用する、
あとで詳述する「二元重複(コンディプリケイション)」というリピート話法、
専門的パフォーマンス心理学の技法を駆使していた。


そして、小泉進次郎氏は、その西洋型ディスコースの技法、
特徴を網羅しただけでなく、
さらに現代的な聴衆心理把握の技法を身につけていた。

進次郎氏の話法

次のような内容が事例とともに紹介されている。
16の事例で紹介されている。


身近な話題で相手と自分のあいだに橋を架ける「ブリッジング効果」、
徹底的に下げておいて次に急に上げる「コンシート話法」、
自分の見られ方について観察者の視点を持つ、
巻き込み話法の[we]の手法(一緒に何かをしようという呼びかけ)、
具体的な名前を数字を使う、
原稿を見ず自信を演出する、
聞き手に選ばせ決めさせる(自己決定欲求を満たす)。
笑いを誘うことで聞き手に幸福な気持ちを与える。


ここまででも十分凄いのだが、さらにテクニック面があがっている。


左右均等のアイコンタクト、
聞き手をよく知る、
ネタの変更は臨機応変自由自在。


この事例として、国会で父親と名前を間違えられたときの、
切り返しが興味深かった。


そして、さらにぶれない軸のようなものを感じる例もある。
野次と拍手には間をおく(言葉をかぶせない)、
自分がどこからどう見えるかよく知っておく(外見)、
父を尊敬し的確に引用する。


さらに、
響きのよい音とリズムで聞き手を引き込む(連辞:レペティション)で、たたみかけるように話をしたり、
決め言葉やワンフレーズで心をつかむということをしている。
この、ワンフレーズは、小泉純一郎氏が得意としている、
サウンドバイト(音の噛みつき)」で、最初に短いはっきりした言葉で、相手の心をつかむ、という技法に長けているようだ。



これだけ挙げてみただけでも、
普通のスピーチで必要とされる要素はほとんど網羅され、
さらに上級テクニックが多数使われているのがわかる。


ここまできたら、もはや世襲とかDNAとかだけではなく、
本人がいかに努力をしているかが伺えるというものだ。


政治もこういう切り口で見ていくと面白いと思ったし、
とりいれられそうなことも多数ある本だった。
何より、この本一冊で、小泉氏にとても関心を持った。
これから、注目して演説を聴いてみたいと思う。


パフォーマンス学関連サイト

佐藤さんの活動は次のサイトでも見られる。
社団法人パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)
国際パフォーマンス研究所
佐藤綾子オフィシャルブログ


特に、政局が動くと政治家の分析に引っ張りだこの様子が、
今、この時代に旬な人たちのパフォーマンスを、
第一線で分析されていることがわかって面白い。


パフォーマンス、というと派手に聞こえるが、
どうすれば伝わるかを極めるためには重要なことだと、
あらためて考えさせられた。


では、また。