会社の外で稼ぐ準備

こんにちは、検索迷子です。


何度か転職をしたり、フリーランスで働く人の話を聞いたりしていると、
生涯ずっと一社で働き続けることの難しさを感じることが増えた。


たとえば高齢になって体力はあっても、
やりがいがある仕事に就けているだろうかとか、
あるいは早期退職制度があったりとか、
一つの会社で働き続ける限界のようなものは、
自分の内面からも、外的要因からも突然やってきそうな気がする。


今はサラリーマンとして仕事をしていても、
それ以外の収入の道を立てておく必要性みたいなものを感じる。
独立開業したいという起業熱とは違い、
何があっても食べていけるスキルを身につけておく、
という感じだろうか。


そんななかで読んだ本が、とても参考になった。
柴田英寿(しばた・ひでとし)著の、
『サラリーマンのための「会社の外」で稼ぐ術』だ。

サラリーマンのための「会社の外」で稼ぐ術 複数収入獲得マニュアル (朝日新書)

サラリーマンのための「会社の外」で稼ぐ術 複数収入獲得マニュアル (朝日新書)


柴田さんは、日立製作所で長年勤務されて、
並行して個人的に活動されている。
それらのノウハウを惜しみなく教えてくれている本であり、
出会った方の事例なども紹介されている。


赤坂ブレックファーストクラブを主宰したり、多方面でご活躍のようだ。
経歴などはご自身のホームページHidetoshi Shibataに詳しい。


未読だが、『お先に失礼!する技術』も柴田さんの著書で、
書名のインパクトが強かったのでとても印象に残っており、
ああ、あの方かと思いながら本書を手にした。

お先に失礼!する技術

お先に失礼!する技術


ライフワーク・ポートフォリオを考える


本書では、会社の外で稼ぐメリットや、
ライフワーク・ポートフォリオ(会社とそれ以外の活動のバランス)を考えた、
時間の使い方の提案がされていた。
そのポートフォリオでは、会社側に時間の大半を割くのではなく、
家族や会社以外に割きたい時間や将来をまず最初に決めて、
残った時間で会社の仕事を効率よくこなす、
という点が説明されていて、視点として面白いと思った。


勤務時間から残った時間で何かするのではないのだ。
人生で優先すべきことを考えていかないと、確かに目標を見失いかねない。


これまで、定時で帰るひとというのは、
仕事と遊びを割り切っている人とイメージが一見あった。
しかし、柴田さんの場合は、会社の仕事でも業績をあげて管理職となり、
日産のゴーン社長を前にプレゼンをした経験もあり、
会社の場面でも、やるべきことをしっかりとやっている方ののようだ。


また、英語やMBAなどの勉強や、
開業準備書を書いてはいたものの成果が出なかった時期の苦しみや、
一人の世界にこもっていたころは空回りしていたような振り返りもあった。
かなり多くの時間、遠回りしたようだ。


そして、次第にいろんなことがうまく回るようになり、
周囲を巻き込みながら、人のいやがることを引き受けながら、
どんどんと会社の外にネットワークを広げていったということがわかる。


複数収入獲得へのステップや事例(ネットビジネスや不動産投資、
寄稿、出版、講演など)なども、
一つの手段だけに固執しているわけではなく、
総合的に回っていくものなのだと発見も多かった。


特に、成功するための戦略として、
伝えることに注力することが上げられていたのは、納得のいくことだった。
何かに詳しいだけではなく、それを伝える力を持っていなければ、
周囲の人しかその実力は知らないため、
儲かるということの間に大きな隔たりがあるということのようだ。
アウトプットしない知識は宝の持ち腐れということなのだろう。


「会社の外」で稼ぐ人の共通点


柴田さんは「会社の外」で稼ぐ人の共通点として、次の3つを挙げている。
1.勤め先に感謝している
2.自分のやりたいことを自分なりのやり方で追求している。
3.仕事が速く、周りの人への気配りが繊細。
会社の外で活躍している人は、会社の中でも活躍しているということだ。


これは、とても思い当たるフシがある。
少し前まで、会社の外で稼ぐ方法を持っている人を見ると、
会社への潜在的な不満を抱えているとか、
なにかずるいことをしているような印象がなくもなかった。


就業規則上、違反でなかったとしても、
なにかちょっとうさんくさいとか、忠誠心がないような感じとか、
あるいは立ち回りがうまかったり、
集中力が散漫なのかと見えたり、
なにか、理解できないことが多かった。


だけど、ここ数年、知り合いにも会社の外で稼ぐスタイルの人がいたりして、
柴田さんが挙げている共通点と全く同じ要素があることに気づいた。


たしかに、仕事は速いし、よく気がつく。
そして、今の勤め先を肯定的にとらえて、
その環境や資源を使ってできることや人脈形成などに感謝をしている。
思いっきり忠誠心があるかといえば、そこはほどよく距離を置き、
でも、会社の利益を出すことに誰よりも貢献していたりする。


やりたいことが明確な人の場合は、収入源の一部であるという会社のなかで、
無駄に軋轢を生んだり、
人間関係に悩むようなことはないのかもしれない。
考えてみたら、私の知人の社外でも活躍している人は、
周囲といつも協調しあえるスキルがとても高いようだ。


本書にはそのほかにも、控え目であるようにとか、
就業規則上問題がなかったとしても、
社内で社外活動のことは言わないほうがいいとか、
上司にはかわいがられるようにしておいたほうがいいとか、
自分の自慢話はしないようにとか、
そういった人間関係上のコツなども書かれている。


また、確定申告などの事務手続き上のことも、
いかに会社に知られずに、申告するかといったこともわかるようになっている。


大胆に一攫千金を狙うというような内容ではないが、
10年スパンで現在の仕事をしつつ、他の活動ができる可能性を広げようと考えるなら、
ヒントとなりそうなことが多いと思った。
何よりも会社を敵に回さず否定もせず、かつやりたいことを実現しているプロセスは、
今までそういう本を読んだことがなかったため参考になった。


会社の外で稼ぐという観点だけでなく、
会社で与えられる仕事以外に自分は何がやれるかと考えさせられた。


自分はどんなことで働き、社会と関わっていくのか、いけるのか、
そういう未来のことを考える布石ともなりそうだと思った。
もちろん、稼げればなおいいでしょうが。
いきなり肩たたきをされてしまったとき、気づけはやれることが何もない、
そういうことは絶対に避けたいものだと思った。


それにしても、柴田さんの社外で稼いだ多くの実績だってもともとは、
たった一つの面倒なことを引き受けることから始まり、
勉強すれども結果が伴わない葛藤からの軌道修正からのものだったのだ。
地道な活動を一つずつ積み重ねてきたことが、本書から伝わり、
こういうことをいとわない姿勢が現在の立場を気づいたのだと思う。


見習って、取り入れたいことは多い。
いちサラリーマンとしては、目が覚めるような本だった。
ただし、やり方だけ見習っても、そもそも何をやりたいのか、
人生で長期的に取り組みたい目標がない限り、二重生活の効率化は進まず、
収入につながるようなものはついてこない、ということもわかる本だ。


お金をたくさん稼ぐことが主目的ではなく、
やりたいことが複数ある人が、どうしたらよりよく生きられるか、
そしてそこで収入を得るか、そういう本なのだと思った。


では、また。