こんにちは、検索迷子です。
北海道の観光ガイドブックを見ていて、目が釘付けになった写真があった。
これまで、どんな場所の風景写真を見ても、
プロが撮影すれば、きれいな写真で当然と思っていたが、
そんな思い込みを打ち砕くような、
ぐいっと気持ちを引き寄せられる写真に出会った。
その美しい場所は、美瑛の丘だった。
北海道美瑛町の丘の美しさは以前から知っていたが、
美瑛を集中的に撮影しているカメラマンの方がいるとは存じ上げなかった。
早速、写真集を入手にしてみた。
それが、前田真三(まえだしんぞう)・前田晃(まえだあきら)作品集『二人の丘』だ。
- 作者: 前田真三,前田晃
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/03/10
- メディア: 単行本
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故人である父、前田真三さんと、その息子さんの前田晃さんの親子二代による、
写真家としての競演作品集だ。
父が撮影した写真と、ほぼ同じ場所、あるいは似たテーマや状況のなかで、
二人の写真がペアで紹介されている。
一点だけでも十分美しさは伝わるが、
二点あることで、同じ場所でも違った表情を見ることができ、
その分、写真の風景に迫力が増し、厚みがでる。
そして、生涯ただ一度しか撮影できないような、
作られた場所とか偶然の一枚という奇跡的な要素だけではなく、
美瑛が本当に美しいから、美しく撮影できるチャンスが何度でも訪れる土地だとわかる。
この写真集の素晴らしさは、写真だけではなく、
各写真に加えられている撮影エピソードにもある。
息子の前田晃さんによるものだが、
中学生の頃から父の撮影に同行していたこともあり、
父の傑作作品一枚一枚の写真の撮影の場面、背景を知っているゆえの、
伝聞ではない、同じ時代に立ち会った解説文が生きている。
父の撮影した写真とペアとなったものを、
父が撮影したときのこと、そして自分はどんな気持ちで撮影したのかを綴り、
写真一枚ごとに、この一枚にどんな意味があるのかストーリー性が感じられる。
前田晃さんが、
「畑の美学」のページで、父の真三さんについてこう書いている。
私が父を非凡だと思うのは、それまで風景写真の被写体として考えられていなかった畑の風景に、写真ならではの美学を見出したことだ。
美瑛の丘は、畑が本当に美しいと思わせてくれる。
土と緑と空と天気で、こんなに多様な組み合わせや広がりが出るのかと驚く。
なかでも、土色がこんなに美しいとは、思ったことはかつて一度もない。
湿気のない土や空気感、
雪国ならではの四季のめりはり、
起伏のある丘陵地帯、
美瑛には美しい風景の条件が揃っている。
でも、その美しさは、表現してくれる人によって初めて引き立つ。
前田真三さんが美瑛の良さを見出して、写真によって伝えてくれて、
その写真に自分が偶然出合ったことを感謝したくなるような、
それほどまでに、二人の丘は見事な写真集です。
ちなみに、前田真三さんは「出合い」という言葉を良く使われているようです。
と絶賛しつつも、
前田真三さんが著名な写真家ということは、今回初めて知りました。
Wikipedia - 前田真三
前田さんは美瑛に魅せられて、美瑛町に写真ギャラリー「拓真館」を開設されています。
北海道文化資源DB - 前田真三写真ギャラリー「拓真館」
ぜひ一度行ってみたいですね。
この『二人の丘』ですが、
晃さんの息子さんで、デザイナーの前田景さんによるデザインだそうです。
親子孫の三代による写真集ということで、
二人の丘でありつつ、三人の丘のような写真集ですね。
一枚の写真、一冊の写真集にこんなにエピソードがあり、
そのとりこになってあれこれ背景を調べてみて、
美瑛の丘の魅力もさることながら、
前田真三さん、前田晃さんの写真の引き寄せる力もすごいと思いました。
美瑛の美しさに出合えた、その喜びをくれる写真集です。
一枚を見つめ続けてしまいたくなる、美しき美瑛の丘に思いを馳せて。
では、また。