草なぎ剛さん主演「スペシャリスト」の感想と見どころ

こんにちは、検索迷子です。

今日は、草なぎ剛さん主演の連続ドラマ「スペシャリスト」の感想と、見どころについて書きたい。


これまでスペシャリストを視聴して、3回感想を書いたが、これまでの感想の軸は「演技をする草なぎ剛さん」という切り口だった。
草なぎ剛さんの「スペシャリスト」の卓越した演技スペシャリストの連続ドラマ第4回の感想)
草なぎ剛さんの「スペシャリスト」の声スペシャリストの連続ドラマ初回感想)
草なぎ剛さんの静と動の役割スペシャリスト4の感想)


今日は、「スペシャリスト」のドラマ自体をレビューしたいと思う。実は、草なぎさんをブログで話題に書き始めて5か月経つが、作品だけを純粋にレビューするのは初めてのことだ。また、もともと映画レビューなどは好きで過去にブログに書いてきているが、テレビをほとんど観ないうえに、ドラマも見ない自分が連続ドラマをテーマに書くのはブログを初めて6年半になるが、初めてのことである。


今回、自分にとって未知なことに挑戦しようとしている。なぜそうするかと言われれば、単純に、いいドラマをより多くのかたに観ていただきたいという気持ちもあるし、草なぎさんご自身も新しい局面に挑戦されているのだと思うと、この時期だからこそ、自分もちょっと負荷をかけて、本気の応援のカタチを表現したいと思ったからだ。私が書くよりもっと説得力のあるかたや、Twitterで素晴らしいつぶやきをされているかたは多数いる。でも、まとめて一か所に集めて書くのも、私ができる小さな役割だと思っている。

スペシャリスト」を観ていないかたに紹介するなら

今日は、「スペシャリスト」を視聴していないかたにも読んでいただきたく、すでに視聴しているかたからすると既知のことも、回りくどく書こうと思うがそこはお許しいただきたい。


スペシャリスト」は、継続視聴者のかたも楽しめるのはもちろん、まだ視聴していないかたが、第5話が放送される、今日これからでも楽しめる可能性が十分あるドラマだと思う。そう思う理由を含めて、以下ドラマを紹介していきたい。


まず、まったくドラマを観ていないかたに一言で紹介するなら、「人の深層心理を解き明かす、一話完結型の人間ドラマ」とあえて言いたい。これはドラマのキャッチコピーにあるような、「無実の罪で10年服役した「元受刑者」の刑事」が難題を解決する刑事ドラマとか、「服役中に知り合ったさまざまな犯罪者データによって、犯罪者心理を知り尽くしたスペシャリスト」が活躍するドラマというほうが、本当ならば、より具体的だとわかったうえで書いている。


でもなぜ、宣伝文句とは違う切り口で紹介するかというと、視聴を重ねるにつれて見方が変わってきたからだ。これは刑事ドラマという限定されたくくりよりも、もっと大きな人間そのものを描いていると思ったし、犯罪者心理を知り尽くした謎解きの話というよりも、視聴者を含めて人間の深層心理を探りながら、展開しているような作りのドラマだと思ったのだ。


「人の深層心理を解き明かす、一話完結型の人間ドラマ」と書いたのは、私自身、刑事ドラマとか犯罪者心理とか、ちょっと物騒な雰囲気がするものを寄せ付けないタイプで、宣伝文句通りに人に紹介されたら、まず観ないだろうと思ったからだ。刑事ドラマは硬派すぎる印象があり、ミステリーに必ず出てくる死体も見たくないし、難解すぎるトリックも頭がついていけず、それらがまったく自分には引きとならないからだ。


だから自分だったら、心理学を表すサイコロジーという単語から連想できる、「深層心理」を解き明かす、「人間ドラマ」なら少ししっくりくるかと思った。これはあくまで私がそうなだけであり、万人受けするわけではないが、もし誰かにおすすめするならば、「相手の好みをわかったうえで、紹介する単語を変えてみる」という一例と受け取ってほしい。


「一話完結型」としたのは、連続ドラマを途中から視聴する、置いてけぼり感や、いまさら感を払しょくするためだ。「スペシャリスト」は2013年からテレビ朝日の土曜ワイド枠からスペシャル版4回を経て、連続ドラマ開始前から一定数のファンのかたがいたと思う。また、テレビ朝日が、「相棒」「科捜研の女」といった高視聴率のドラマを放送し、脚本も同じかたが書いているところから、そのストーリー性の確かさも信頼があるだろう。ただ、日頃、テレビ朝日のそうしたミステリータッチや刑事ドラマになじみがないかたからすると、その信頼の尺度さえ、難解なストーリーではと思わされ、敷居が高いこともあるだろう。そんななか、「一話で完結する要素」が大半を占めるとわかると、一話くらい見て見ようかという気がわくような気がする。


昔、「相棒」の試写会が当たって観に行ったことがあったが、実はそれまで名前は知っていても、一度も「相棒」を観たことがなかった。でも、映画をきっかけに面白さがわかり、このストーリーなら観られるなと興味を持った。それは一話でも十分完結する作りにあっていたからだ。また、「踊る大捜査線」もブームだったにも関わらず、まったく興味がわかなかったが、たまたま普段ラブストーリーばかりを観る会社の同僚が、「一話観たらはまって、レンタルで一気に借りて徹夜をして観た」と聞いて、そんなに面白いのかとためしに一話観たら、そのはまる理由がなんとなくわかった気がした。


この二作に限らず、ストーリーや人物設定に追いつけないかとか、敷居が高いと思っているような作品でも、まずは「一話」を観て、登場人物やストーリーのどこかに魅力を感じられれば、継続視聴になるんだと体感したのだ。それは宣伝文句通りのはまりかたをすることもあるだろうし、脚本の良さや、役者さんそのものに惹かれることもあるだろう。一度はまったら、その理由なんてあえて考えなくてもいいと思うが、問題はそれを自分以外の誰かにおすすめするときだ。


私自身は少なくとも、一話完結という気楽さが導入となることも多く、常連でない自分が、途中から視聴してもついていける楽しめる余地がある、一話完結ドラマというのは割と入り込みやすい。ただ、その一話を観てもらうためには、すでにその番組を知っているかたが、そっときっかけを差し出していく工夫もいると思っている。身近なひとからのおすすめは、私がここで書くよりきっと何倍も信頼度があり、おすすめの重みが違うはずだ。

さまざまな人間の心理を描ききる「人間ドラマ」

「刑事ドラマ」ではなく、「人間ドラマ」としたのもの、番組にある普遍的な要素からそう思うからだ。脚本家のかたが実力があるかただと、前回の記事で書いたが、どなたの脚本だから凄いという先入観なしにも面白いと思っている。ドラマの舞台は警察署であり、刑事が中心のドラマではあるが、そこで描かれている内容は、人そのもの、人の心理そのものだからだ。いわゆるホームドラマのようなわかりやすい温かさとは違うが、人の心の中を描く表現や会話、人物描写や人物設定が、この「スペシャリスト」は秀逸だと思う。


私たちが想像できる範囲でほっと安心できるような、息継ぎができるシーンがあるのも視聴していて苦にならないポイントだ。同僚やバディを組む相方との絆、登場人物の家族愛、人のかわいらしさやコミカルさにほっこりする。また、刑事が多数でてくるが、主人公は破天荒だし、きりっとした二枚目刑事は主人公に翻弄されるし、登場人物のサイドストーリーも多様だし、勤務部署がヒーロー集団ではなくむしろお荷物扱いの人々の集まりという設定だ。事件を解決するのにちっとも仕事をしていないと言われる始末だ。


こうした、不完全な部分を持つむき出しの人間くさい者同士の、不思議な人としての連帯感がある。そうした人として血が通った場面が随所にあることで、刑事ドラマの緊迫感からしばし心が和むシーンも多数ある。反発したり、何を考えているかわからないと口に出しつつも、徐々に氷解するかのように、受容しあうかのように、わかりあっていく過程もまた楽しみの一つとなっている。人と人ってこうしてお互いの長所に気づいて、自分のスペースに受け入れるんだなと思ったりする。


反面、私たちが想像しにくい世界で生きている人物の考え方に、はっとさせられる。たとえば、犯罪者心理そのものだ。主人公が類似事件のヒントとして、唐突に披露する犯罪者のデータは再現ビデオのようにコミカルタッチに描かれているが、この心理そのものは同僚も視聴者もきょとんとするような未知な内容ばかりだ。そのほかにも、冤罪で服役していた主人公の心理、主人公が犯罪者データを頭に蓄積しつつも犯罪者側に手を染めずにギリギリのところで生きている姿、主人公が犯罪者と心を通わす不思議な瞬間、そして、主人公自体が犯罪者を惹きつけてしまうものを持っている、刑事のうちの二人は被害者遺族であることなど、市井でごく普通に生活している人間からは想像することができない。


視聴者は、安心と未知なる心理状態への戸惑いを行き来し、自分の引き出しにあるものとないものを、ドラマ中ずっと見つめることになる。この人は今、どういうことを考えているのかと推測しながらドラマを観ていく楽しさ、そして軽く裏切られるシーンの爽快さもまた、いいさじ加減で含まれていると思う。きちんと自分のなかで咀嚼させてくれる余地や、視聴後も反芻させてくれる余韻がある、そういうふと考えさせてくれるような間合いの取り方をしているようにも思う。それは、会話のシーンが丁寧に描いてあるため印象にしっかり残り、あれはこういう意味だったのかとおさらいができるような、キーワードの伏線の回収できる作りになっているのも大きいと思う。

一話ごとの謎解きは二転三転し、長期的キーワードもちりばめられ

スペシャリスト」は、一話完結する物語で、初心者がいつから見始めても退屈することはないドラマだと思う。それは、毎回ごとに変わる状況もそうだし、ドラマの展開自体が、毎回二転三転、いや四転するくらいに犯人の絞り込みへの核心が変わることに引き込まれるからだ。犯人だと思っていた人物が違うとわかるたびに、え、この人じゃないの? と自分の観た光景と答え合わせのように確認しながら、では誰が犯人なんだと仕切り直す楽しさもある。


このとき、その回ごとにメインキーワードとなるものが随所にちりばめられ、それが丁寧にくつがえされていく鮮やかさに驚きながら、では真犯人は? とまた新たなキーワード的なものを脳内再生させながら、視聴者は過去の時間へ部分的には戻りながら、今目の前に起きている出来事に必死についていこうとして、結構、頭のなかが忙しい状態になる。そのあわただしさすら視聴の醍醐味の一つだ。一時的に、展開の速さに周回遅れをするような場面も私などは出て来てしまうが、それでも、最終的には番組終盤にはきちんと種明かしの映像も流れて、番組終了とともに、話の流れにストンと追いつけていて後味はすっきりとする。


内容的には、映画一本分、二時間ドラマ分くらいを毎週一時間のドラマで観ているような気になるくらい、展開が速いと思うが、それほど焦らされる感じは思ったほどない。それはひとえに、ドラマのなかにコミカルさといった遊びの要素や、会話のテンポがゆったりとする場面で、ほどよく息継ぎができているからだと思う。


また、リピーターからすると、長期的キーワードが小出しに解き明かされていくのも、未知の部分を今なお残すのも面白い点だろう。「我々の存在」とは何か、「主人公と家族の関係」はどうなるのか、「主人公とコイン」はこれからどんな意味を持つか、上司や同僚が敵なのか味方なのかという謎、そもそも主人公の今の住まいは? と大きなことから小さなことまで、いつどこで何が回収されていくのか、小出しにされていくのか、そこを知る楽しさもあるだろう。


そして何より主人公は、犯罪解決には多弁となるが、自分のことや心情はほとんど語っていないのだ。語らない分、表情でそこを伝え続け、視聴者はそこに想像する余地を与えてもらっている。この想像させる余地、言葉では語らないで目線や表情だけで何に思いを馳せているのかを、視聴者に委ねている部分こそが、このドラマをずっと見続けたいと思う部分なのかもしれない。毎回の事件は解決されていく爽快さとともに、主人公の心理の核心には全然近寄れていないものどかしさが、いつか解き明かしたいキーワードとして、心のなかに未解決事件のようにずっと宿っていき、だから翌週もまた次なるヒントを求めて番組を観ようと思うのかもしれない。


さらにキーワードと言えば、決め台詞である、「わかるんですよ、俺、10年10か月入ってましたから」と「わかった」という言葉を、各回で主人公がいつ発するかというのもまた、楽しみの一つとなっている。同じセリフでありながら、口調や発する場面が固定化されていないというのも、毎回観る楽しさを増長してくれていると思う。決め台詞でありながら、決まっていない場面で使われるというのもまた、面白い台詞の使われ方だなと思う。

ドラマの映像としての効果

スペシャリスト」のいい部分の、細かい点をもう少し挙げたいと思う。それは、ギャップ、という点だ。


そのひとつは、主人公が一人で考えごとをするときなどの「ブルーグレー」の静的な映像美のような場面と、小道具がある室内での「おもちゃの動きや、原色系ポップカラー」の対比だ。小道具に遊びの余地がたくさんあり、主人公は、おもちゃやお菓子好きの設定のため、警察署内でありながら他の刑事ドラマとは異なり、原色の子ども部屋のようなポップな色彩が織り込まれる。おもちゃ、お菓子というアイテムもそうだが、彩りとか形いう点でもそれらのアイテムは、およそ職場にあまり似つかわしくないものだ。でもそのアイテムがあることで、人の相好が崩れたり、重たい話題が重たくなりすぎない効果がある。光の当て方、色合いの使い方が本当に状況によって効果的で、映像の美しさも楽しみの一つとなっている。


少し脱線してしまうが、主人公が持つアイテムは、ファンのかたから注目が集まるようで、お菓子やメロンパン、ジュース、知恵の輪、おもちゃ、マグカップなど、主人公が持つアイテムがどこのメーカーかを調べたり、買い求めるファンのかたをTwitterで拝見する。私は普段、あまりテレビの小道具が気にならないほうだが、このドラマはなぜこんなに小道具が目に入るのかと思ったら、一つは色彩の対比で、主人公が手で持っているものが際立って目立つのだと気づいた(草なぎさんの手がきれいなので、もともと手元をファンのかたが注目しているのかもしれず、ほかにも要因はあるだろうが、私は色彩対比が大きいと思った)。この色彩対比による宣伝効果は、驚くほど大きくてびっくりしている。


また、衣装にしても、主人公だけはジャケットにパーカーという柔らかい素材と色合いがあるものを着ているが、他の刑事は皆一様にスーツに白シャツだ。ここもまた、主人公を際立たせるギャップの効果がある。ちょっとしたことだが、スーツが制服化している職場のなかでこのスタイルを通すこと自体が一つの主人公の自己主張だし、それを許容させてしまうのもすごいことだと思う。また、旧態依然とした体質のなかに、現代的な感性を持ち込むという象徴としてもこの衣装は、主人公のプロフィールと相まっていい効果を出していると思う。


さらに、ドラマの展開のスピード感のギャップだ。ゆっくりとしたテンポ、疾走するテンポを場面ごとに使い分けていて、それは会話の口調や視線もそうだが、映像自体の切り替わりの速さにも感じる。主人公が、すべての疑問のピースがはまる直前、多数の映像がハイライト的に流れ、決め台詞「わかった」とこめかみに手を当てるシーンがあるが、これもその一つだと思う。ドラマ全体で、そのときの話の流れにあったスピード感を、会話ごとシーンごとに俳優さんがいかに息を合わせているのかが伝わり、その場面が最善の長さとテンポでいかに効果的に撮影されているのかが伝わってくる。一人語り、議論の応酬、ジョークの掛け合い、静かに心情を語る場面、緊迫した場面など、そのシーンに一番あったテンポが計算されつくされ、黙り込む時間も意味のある有効な間となっていると思うのだ。



と、思いつくままに羅列したが、書き始めのころに思ったほどには初心者目線にはなれなかったが、ドラマはまだまだ続くのと、いま書ける範囲のベストは尽くしたので、ドラマ開始直前のいま、いったん話を終えようと思う。不完全燃焼ながら、ドラマ開始時間前までにアップをすると決めて書き始めたのでこのまま公開をする。


私はこのブログを、SMAP応援の一環として書いている。ドラマの視聴率に左右されるなんてナンセンスと思いながら、彼らは視聴率で評価される世界に生きている。だから、私がちょっとした感想を書くだけでも、一人でも多くのかたが読んでくれて、番組視聴につながる日もあると信じている。もし共感してくださる部分があれば、いいねボタンのみでお一人のお心に留めるだけでなく、リツイートなどで拡散をしていただければと思います。これまでリツイートしてほしいと書いたことは一度もないですが、「スペシャリスト」は本当にもっと多くのかたに観られていいドラマだと思っている。だから、今日は草なぎさんという名前を極力抑えて、あくまでドラマのレビューに徹して書いた。


数字という目に見える形を引き上げるには、私のブログはあまりに微力すぎるが、それでもいいドラマはいい、今、リアルタイムでこのドラマを観ることによって、私たちが人として受け取れる感情がこのドラマにはあるのだと知ってほしくて、この思いをしっかり伝えていきたいと思った。小さな声でもいいものはいいと、私は立ち止まらずに書き続ける。


では、また。