草なぎ剛さん主演「スペシャリスト」での全身の演技

こんにちは、検索迷子です。


今日、草なぎ剛さん主演の連続ドラマ「スペシャリスト」が最終回を迎える。そこで最終回前に、この連続ドラマを通してずっと感じていた、草なぎさんのドラマでの全身での演技をテーマに感想を書きたい。

シルエットを変化させる演技

このドラマの草なぎさんの評価、目での演技が印象深いというTwitterでのつぶやきをよく拝見する。確かにそれも大きいと思うし、目での演技をテーマに語るのも面白そうだ。でも、私がスペシャリストの連続ドラマを通してずっと気になっていたのは、草なぎさんの全身のシルエットだった。


草なぎさんは、それほど大柄なかたではないが、全身を使った演技が秀逸だと思う。特に、肩の入り方、あごや頭や首の角度、立ち姿、脚の開き方によって、同じ人物でありながら、身体でそのときの心理状態を表現するのがうまい。全身の立ち姿、そのシルエットで、その役柄がいまどんな状態にあるのかすらわかるのだ。


目を強調する演技、とくに室内の場面は上半身をメインに映されているが、この目の力を補っている要素には、首の前のめりの入り具合、あごや頭、肩の角度がある。


怒りの場面などでは、前のめりとなり上半身全体で気迫を表現しているが、きっと映っていない下半身も同じように力を込めているのだろうと想像できる。その全身の力の加減の要素が積み重なって、目の力がより強調されていく。


ひょうひょうとした演技のときは、全身脱力気味にふわりと立ち、線が細く、肩幅さえも狭く感じるような、柔らかさがある。今回の衣裳はジャケットを着ているが、ジャケットを感じさせないような、パーカーの素材感のようなリラックスした感じが出ている。肩の力が程よく抜けている、いい意味での浮遊感がある。


そして、気持ち猫背気味に見えるような、頼りなさげで突っ込みやすい、小柄な少年のような雰囲気を出している。また、あごも首も上向き加減でゆらゆら揺らして、身体も落ち着きなく小刻みに揺らしたりして、お調子者風な愛らしい表情を見せることもあった。


と、細かな演技のバリエーションに、草なぎさんは全身のパーツを有効に使っているのがわかるが、特に、草なぎさんの全身を使った演技が強調されるのが、屋外の場面だ。ひと言でいうと、外という奥行きのある場所、大舞台で映える全身での演技なのだ。ライブなどで全身を使ったパフォーマンスによって身に着けたであろう、身体をどう使えばどのように映えるのかを、意識的にも無意識にも知り尽くしたような身体の動きやキレが見られるのだ。空間が広ければ広いほど、草なぎさんが映えるようにすら思う。


犯人役と対峙するときは、肩を思いっきり開き、あごをぐいっと引き、気持ちで負けない部分、立ち向かうその気持ちを表現している。実際の細身の体格が、がっしりと大きく見えるような存在感すらある。同じ衣装を着ているのに、パーカーを感じさせないジャケット感がでるような骨太さが、対峙する場面では強調されるような立ち姿になる。


さらに、犯人を追い詰めて急ぐ場面での疾走感は、宅間はこんなに運動神経がよく足が速い設定でいいのかと心配になるほど勢いがある。草なぎさんの走る姿はそれだけでとても絵になる。いろんなドラマや映画のなかでも、ここまで走り姿にインパクトを残せるほど、走り姿が美しいかたはそうそういないようにも思う。まさに、全力で走り、全身のバネをフルに活用している姿に胸が打たれる。


また、ピンポイントではあるが、9話で犯人に追い詰められて、建物の踊り場銃で撃たれた場面の動揺も忘れられない。座り込んで背中全体が丸くなり、さらに狙撃されるのかと不安もあるような、あごが亀のように首に入り込んだ姿は撃たれた動転した表情とともに、肩を小さく内側に入れることでシルエットが小さくなって、不安げな表情がとても印象的だった。


そして、室内ではあるが第8話で、元妻が倒れていた場面での動揺する気持ちの全身での表現もそうだ。哀しみ、怒り、混乱の状態のなか、前のめりとなり暴れるところを静止される場面の全身の使い方は本当に見事だったと思う。妻の名を叫ぶ以外はほぼ無音状態のなかで、これだけ身体のみで伝えてくれるのかと驚いた場面だ。



個別にもっと、このシルエットがと挙げれていくときりがないが、怒りも動揺も愛くるしさも、草なぎさんが全身で表現していると、見れば見るほどにわかる。シルエットが場面ごとに変わる、そういう点でもスペシャリストの宅間という人間の多様性がわかって面白いと思っている。


草なぎさんの演技は、どんな面からも見ごたえがある。でも、スペシャリストという連続ドラマという場で、一人の人間のなかにひそむ複数の側面を使い分けるとき、この全身での演技の使い分けがとても有効に作用しているとつくづく思った。

草なぎさんのシルエット

ここから先は、草なぎさんファンのかたしかしっくりこないと思うが、私がスペシャリストの草なぎさんのシルエットに注目する背景を少し補足したい。


草なぎさんはもともと運動神経はいいが、たぶん、映画「ホテルビーナス」で筋トレをする以前は、その立ち姿は猫背気味の印象が強かったような気がしている。細身という骨格もそうだが、線が細いという印象がかなりあった。SMAPメンバーと一緒に横並びで椅子に座るときも、一人、背中を丸めて小さなシルエットに見えていた。


それが、いつからだろうか。草なぎさんの立ち姿、シルエットが明らかに変わったと思うようになった。最近、草なぎさんがスマスマで立つ姿は、常に足幅が広い。立つスタンスの取り方、体重のかけかたが明らかに変化している。具体的に言うと、肩幅より広く足を左右に開いているのだ。腰回りに体重をかけるようになってきたからだと思うが、昔はこういう大ぶりな力強い立ち方はしていなかった。


そして、草なぎさんはリラックスしているときは、まるで首を休めのポーズにしているかのように、あごを上向き加減に後ろ体重にしていることが多い印象がある。それがお芝居にはいると、一気に前傾姿勢となるギャップはとても興味深い。


また、草なぎさんの全身のバランスの使い方や、舞台映えするシルエットの美しさについては、年末に放送された「CDTV年末スペシャルライブ2015→2016」にとても印象深いシーンがあったので、紹介しておきたい。


SMAP DANCE SHOW TIME!」で、最後の全員のダンスにそのシーンはあった。一つは、踊りが始まる直前の草なぎさんのポーズだ。肩と胸をぐっと開き、手のひらを広げ両腕を翼のように開いていた。足はしっかりと開き、全身で場のエネルギーをチャージしているような、または身体の力を思いっきり脱力してリラックスさせ、全力で踊る体の準備をしていたのか、いずれにしても、これから全身を使うよといわんばかりに身体のポジションを整えているように見えたのだ。


そしてもう一つは、踊り始めてからの肩と首の位置だ。ものすごく前傾姿勢に入っていて、アップテンポの曲を正確に、身体の芯がぶれることなく華麗に踊り切っていた。草なぎさんがここまで前傾姿勢で前のめりでダンスをするのを観て、昔スマスマで観た「Five True Love」のダンス、特にソロダンスの部分を思い出した。


ノースリーブで踊るその全身を使った動きは、その当時は線が細いながらも、身体のバランスを肩でとっている印象があって、とても力強いダンスだと思って観ていた。そしていまもなお、この前傾気味の肩の入り具合で踊っているのを観て、草なぎさんが本気で踊るぞというモードの時はこういう姿が見られるのかと、その軸のぶれないダンス姿に感動すらしてしまった。



これまで、スペシャリストを話題にいくつか記事を書いて思ったが、連ドラが始まった当初、テーマを小分けにして、都度記事を書くことができるとは思っていなかった。どこかで話題が枯渇するかと思っていた。でも、草なぎさんはドラマが進むにつれ、新しい側面をいくつも見せてくれて、書いてもなお、また新しい気づきをくれるのだと書きながら驚いていた。


2か月まえの報道以降、気持ちを整えて、ドラマに集中するのは難しいのだろうかと思われたが、草なぎさんはこの連続ドラマのなかにおいても、宅間という人物を進化させてきた。まさに全身全霊で演技を続けてきたその姿には心を打たれるものがあった。


今日の最終回も、全身から繰り出される、そのエネルギーを受け取り、最後の一瞬までをしっかりと見届けたいと思う。身体全体に神経を研ぎ澄ませ、身体のあらゆるバランスをコントロールして役を演じ切る、その表現する全力のパワーを、全力で受け取ろうと思う。


立ち姿のシルエットだけで感情を伝えきる、その役柄を生きる草なぎさんの姿をしっかりと目にも、心にも焼きつけたい。


では、また。



以下は、過去記事のまとめです。

スペシャリスト」感想まとめ

これまでスペシャリストを視聴して、7回感想を書いている。上から順に新しい記事となっている。


草なぎ剛さん主演ドラマ「スペシャリスト」感想まとめスペシャリストの過去記事すべてをまとめて紹介)
草なぎ剛さんの「スペシャリスト」での少年性
スペシャリストの連続ドラマ第7回までの感想)
草なぎ剛さんが「スペシャリスト」で見せる軽やかさ
スペシャリストの連続ドラマ第6回までの感想)
草なぎ剛さん主演「スペシャリスト」の感想と見どころ
スペシャリストの連続ドラマ第5回までの感想)
草なぎ剛さんの「スペシャリスト」の卓越した演技
スペシャリストの連続ドラマ第4回の感想)
草なぎ剛さんの「スペシャリスト」の声
スペシャリストの連続ドラマ初回感想)
草なぎ剛さんの静と動の役割
スペシャリスト4の感想)


視聴回は便宜上補足しているが、主に草なぎさんを主軸にした記事のため、どこを読んでいただいても、前後しても問題ないと思っている。また、ドラマのストーリーレビュー色はあまりないため、その部分はご容赦いただきたい。