SMAPさんの『雪が降ってきた』の息遣い

こんにちは、検索迷子です。


先日、FNS歌謡祭を視聴して、
SMAPさんの『Otherside』の重なる声の記事を書いた。
この『Otherside』のパフォーマンスも
素敵だったが、観おわって真っ先に、
ここで書きたいと思ったのは、
『雪が降ってきた』についてだった。


と言うのは、
SMAPさんの5人の息遣いの違いが、
このスローバラードではものすごく顕著で、
息の違いによって、全体に緩急が生まれ、
歌詞がまっすぐに心に入ってきたからだ。


失礼ながら、SMAPさんの歌で、
生放送の番組で聴いたバラードのなかで、
最もじーんと染み入るものだった。


こんなにじっくりと、
しっかり心に染み込んでくる歌を歌う、
SMAPさんの声っていったい何があるんだろうと、
ものすごく気になって、歌詞を見ながら、
そのときの声を振り返ってみたいと思った。


ちなみに、この曲のバラードバジョンは、
2001年8月8日に発売された『pamS』(ウラスマ)に
収録されていて、その曲を聴いたことはあるが、
手元にその音源はない。
そのためオリジナルとの比較ではなく、あくまで、
FNSでのパフォーマンスに限定した感想を書く。


私は生粋のSMAPさんファンではないため、
手元に資料となるものはいっさいなく、
過去との比較は記憶でしかできない。
毎回、話題を拡散させないためにも、
瞬間のピンポイントのことだけを書いている。
誤解などがあれば失礼します。


ということで、『雪が降ってきた』の
感想を書きたい。
まず、全体を通して思ったのが、
SMAPさんの息遣いの違いや、個性が、
スローバラードだとこんなにはっきりと
わかるのか、というのが新鮮さだった。


もともと個性のある歌い方をそれぞれ
されているとは思ったが、この曲では、
歌割りされた歌詞と、息遣いと、
歌詞のストーリー性と声が、一人ひとりに
フィットしていると思ったのだ。


私は歌の専門家ではないので、歌割りを
どうしているかとか、声の分析は完全に
独断の素人目線だ。
でも、自分なりに書いてみたいと思う。
ちなみに音程の視点はまったく入れない。
そこは語れるものを持っていないからだ。


まず、歌いだしの草なぎさん部分について。
「今年最初の雪が」から始まって、
初雪によって、いきなり彼女との別れを
少し薄れかけた記憶のなかから、
呼び覚まされてしまった戸惑いの感情を
表現している。


草なぎさんの声の特長でもある、
鼻濁音が随所に、淡々としたせつなさを
表現しているのだ。


以下、音を表すために、
歌詞を耳で聴こえたままの平仮名と、
強弱を小文字表記で書きますが、
部分的に読みにくかったらすみません。


「こぉとしぃ、さぁいしぃよのゆきが」
の冒頭、草なぎさんの声は、
「こぉ」で、か行の「破裂音」で口に
こもるような温かい感情をまず乗せて、
さ行の「摩擦音」で擦るような声で、
淋しさを効果的に表現しているのだ。
摩擦音とは、「し」を「しぃ」と滑ら
せるような音だ。


そして、「ぼぉくのとなりぃ、
いぃなぁいぃよぉ」と、
「な」の音で深みある温かさを乗せて、
「母音」である、「い」の音の滑らせ
かたが、また、せつなさに拍車をかける。


草なぎさんのパートは、淋しさを表現
する、さ行の音が多いのだ。
この歌詞全体の導入として、効果的に
さ行が生み出す淋しさを、草なぎさんの
声がさらに際立たせているのだ。
また、語尾をそれほど伸ばさず消え入る
感じが淡々とした思いの導入に合っている。


そして、稲垣さんのパート。
稲垣さんの声は、エンジェルボイスと
言われることが多いと思うが、
本当にそれが実感できる語尾遣いなのだ。


特に、語尾の随所に小さい「ん」が入って、
甘さが表現されるのが特徴的だった。
なかでも、「柱の陰」を、
「はぁしぃらぁのかげぇん」と歌うのは、
これは稲垣さんの声でしか出せない、
せつなさ+甘さの表現だと思った。


そして、草なぎさんから続く、去年に思いを
馳せる気持ちを、より映像が浮かぶ具体的な
状況に落とし込んだ歌詞によって、
ぐっと過去の甘い記憶に感情を引き戻す。
稲垣さんの声は、その過去の記憶の美しさを
とても効果的に表現していると思った。


そして、稲垣さんの歌詞のパートにも、
草なぎさんと同じく、淋しさを表現する、
さ行の摩擦音が多いのだ。
この2人のパートだけが、さ行が多く、
過去方向のさみしさを表現する役割は、
2人の声によってできているのだと思った。


さ行の摩擦音は、しっかり擦って発音
することで、その淋しさの音感が、
より寂寞感を出すのだ。


3番目の香取さんは、もう声量をめいっぱい
感じるような、力強い歌い方だった。
「あのときの二人」を、
「ああ、のお、とおきのお、ふうたありい」と
子音と母音をはっきり発声している。


歌詞としても、前二人の過去回帰から、
現実にぐっと力強く戻ってきて、
こんな日が来るなんて思わなかった
けれど、今、自分はここにいるんだと、
しっかり確認している。


香取さんは、発声にとても向いている
口内の大きさをしていると思っている。
よく、コントなどでこぶしをまるごと
口内にいれたりしているのを以前みたが、
口の中が広いというのは、それだけ声が
響く場所が広いということだ。


だから、歌詞のなかに、明るさや力強さを
表現する、「あ」「お」の音が多いのが、
香取さんの声ととても合っている。
特に、「あ」の音は、口をはっきり開け
れば開けるほど、活力のある思いが伝わる
音のため、香取さんがこのパートを歌う
ことで、中間がぐっと盛り上がっている。


また、香取さんは助詞や語尾もはっきりと
発声するので、声の揺らぎがほとんどなく、
クリアな状態で、より強い気持ちを表現
しているのだ。


次に4番目の木村さんのパートだが、
「雪の降る街」を、
「ゆうぅきいぃのおぉふうぅるうぅ
まあぁちいぃ」と、
母音の強弱も使い分けている。


感情を思いっきり乗せて、楽譜が
ないためわからないが、たぶん、
オリジナルの歌い方だろうと思われた。
特に、子音全般が強くて、
「う」のこもる音の深さと、
「い」や「お」の力強さを感じた。


そして、歌いだしから、歌い終わり
までの抑揚の波のコントロール
はっきりしていると息だと思った。


最初は、どんっと強めに歌いだし、
途中で、「んんーん」とハミングして、
また「しいぃずうぅかあぁに」と
力強く入り直し、歌い終わりの、
「のせてぇ」には、柔らかい、
息をそっと出す流れになっていた。


過去を懐かしんでばかりではなく、
一人で思い出と歩きながら、
現実にしっかり向き合おうとして、
手のひらに降る雪を乗せて、心を
今へ切り替えようとする気持ちが伝わる。


最後の中居さんのパートは、
中居さんのバラードって、なぜこんなに
せつなさや思いの吐露が胸を打つのか、
ずっと不思議だったのだが、
「おぉ」の言葉に丸みがあるのだと
思った。


中居さんは、のどを少し締めるような
声の出し方をするが、その締めるような
出し方によって、声が少しかすれ、
微妙なニュアンスが生まれるのだ。


「僕の心に」を、
「ぼぉぉくのぉ、こぉぉこぉろぉにぃ」と、
途中で、「Woo」と入り、
「お」の音が多い歌詞パートだが、
中居さんの「お」は、
香取さんや木村さんの「お」の出し方と
まったく違って、「お」の声自体が、
強いというよりは、温かい丸みがある声
なのだ。


また、高音を出すとき、中居さんは、
首の角度を上げたり、裏声になる手前で
息をシフトチェンジするような出し方を
する。また、息継ぎがはっきり聞こえる
ほど、息をためて発声しているのが、
中居さんだったのも今回発見だった。


息のその切り替え加減が、
息を一瞬止めるような心の動きを表す
間になったり、
人間らしい温かみが生まれたりする、
戸惑いのようなものが見えていて、
とても声としての包容力があった。


僕の心に降る雪はいつか溶けるけれど、
君のことを忘れないと、過去は過去と
して大事にしながら、もう自分は先に
行くための心の整理もつけたよ、という
気持ちを歌っている。


特に、「Woo」という歌声だけで、
なぜこんなにいろんな思いを乗せて、
それが伝わるのかと考えてしまった。


今回5人の声を細かく書いてみて、
実は中居さんが一番、言葉にするのが
難しかった。
バラードとして心に響いたのが、
今回、中居さんのパートが一番大きい。


声の秘密をもっと知りたいと思ったが、
4人以上に、書き言葉で表現がしにくい、
微妙な声の出し方やかすれ具合、
息そのものの出し方などで、
不思議な気持ちになって、どう書けば
これは伝わるのだろうかと思った。


今日の私の表現力でできそうなのは、
ここまでなので、いったんこれで
まとめとします。


5人の歌声が一つのストーリー性を
持ち、その声の違いによって、
ストーリーの緩急を感じて、
『雪が降ってきた』の歌だけで、
こんなに長い感想を書いてしまった。


こんなに歌詞が際立ち、5人の声が
クリアに届き、その違いが心地いい
なんて、スローバラードっていいなと
思ったし、アルバムに入っていたとき
よりも、大人の声になったぶん、
感情と息の乗り方も変わって、歌に
深みが出ているのではないかと思った。


最後に念押しで書きますが、私は
専門家ではないので、各メンバーへの
誤解があったら失礼します。


どうしてもこれを書き残したいくらい、
『雪が降ってきた』の歌は素晴らしかった。
数分の歌の印象を記録しておきたく、
何度も記憶をたぐりよせ、やっと書けて、
自分としては少し満足している。


では、また。

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SMAPさんについて書いた記事は、過去にもあります。
よければ合わせてお読みください。

SMAPさんのパラ駅伝の閉会式コメント
SMAPさんの『夜空ノムコウ』を歌う
SMAPさんの呼称の揺らぎと関係性SMAPさんの距離感
SMAPさんとパラリンピックと壁画


また、草なぎさんを中心に書いていますが、
SMAPさんのことにも触れているものには、
以下のものがあります。
草なぎ剛さんの声の距離感
草なぎ剛さんの誰かを呼ぶ声
草なぎ剛さんの息が合う存在
草なぎ剛さんの鎮める声
草なぎ剛さんの語調
草なぎ剛さんの声と表情筋
草なぎ剛さんのサイン
草なぎ剛さんの筆跡