工藤直子『こころ』

こんにちは、検索迷子です。


工藤直子(くどうなおこ)さん詩、
佐野洋子(さのようこ)さん絵、
『新編 あいたくて』新潮文庫刊より、
「こころ」を紹介したい。

新編 あいたくて (新潮文庫)

新編 あいたくて (新潮文庫)

こころ
          工藤直子


「こころが くだける」というのは
たとえばなしだと思っていた ゆうべまで
今朝 こころはくだけていた ほんとうに


ひとつひとつ かけらをひろう
涙がでるのは
かけらに日が射して まぶしいから
くだけても これはわたしの こころ
ていねいに ひろう


こころがくだける、という思いを、
ここ数か月のうちにした。


あまり、くだけるというほど、
打ちのめされる感じというのはないのだが、
そのときは違った。


この詩を読んで、
ひとつひとつかけらをひろう、
というほど、積み重ねた時間や思いがあったからこそ、
くだけるとかけらになるんだ、ということがわかった。


何も思ってもいないし、考えてもいないものは、
くだけるものなんてないし、
くだけて、ひろうものだってないんだなと。


こころがくだけてみて、
くだけるだけのいっぱいのものがあったんだと、
初めてわかってしまい、
余計にぐっときた。


かけらをひろうことさえつらいけれど、
それも私のこころだから、
ていねいにひろわなければ、
そう思った。


なんとなく、
くだけたままにして、
ちょっと傷口が痛くてという気持ちを、
ずるずると抱えていたが、
ていねいにひろってこなかったから、
それが自分と認めてこなかったから、
十分にくだけたものを見つめてなかったのかもと思った。
だから、癒えていなかったのだと。


こころがくだけたなら、
ひろうところまで、
ちゃんと癒しきろうと思った。
そのかけらも自分なのだから。


工藤直子さんの著書のレビュー


工藤直子さんの「夕焼け」を過去にレビューしています。
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工藤直子さんの「夕焼け」 - 検索迷子
工藤直子「あいたくて」 - 検索迷子


では、また。