石垣りん「虹」

こんにちは、検索迷子です。


今月、いろんな人にお別れの挨拶を済ませ、
この週末で気持ちを切り替えて、
来月から新しい環境にいくひとも多いだろう。


検索迷子では、お別れの挨拶をいくつか書いてきた。
それらのエントリーは、年度末となり、
三日連続一日1000アクセスを越えた。
お別れの挨拶に聞きたい言葉 - 検索迷子
お別れの挨拶を言えますか。 - 検索迷子
さよならより、ありがとうを - 検索迷子
さよならなんてだいきらい - 検索迷子
お別れの挨拶ができる喜び - 検索迷子
丁寧にさよならを言いたい - 検索迷子


さよならの区切りをしっかりつけよう、
さよならの挨拶をして、気持ちの整理をしよう、
そうやって、
過去との折り合いのような時間を終え、
もう、未来へと気持ちを切り替えなければならない。
そんな週末を迎える人もいるだろう。


未来へと向かう気持ちを支えてくれるものは、希望だ。
光が差し込むような予感だ。
こういうことがあるといいなという願望だ。


未来が光のあたる場所であってほしい、
明るい場所であってほしい、
これからの時間が、希望にあふれることを願って、
石垣りんの「虹」を贈りたい。


           石垣りん


虹が出ると
みんなおしえたがるよ
とても大きくて
とても美しくて
すぐに消えてしまうから
ためておけないから
虹をとりこにして
ひとつ金もうけしようなんて
だれも考えないから
知らない人にまで
大急ぎで教えたがるよ
虹だ!
虹が出てるよ
にんげんて
そういうものなんだ
虹が出ないかな
まいにち
虹のようなものが
出ないかな
空に。



『レモンとねずみ』石垣りん、童話屋刊


レモンとねずみ (童話屋の詩文庫)

レモンとねずみ (童話屋の詩文庫)



虹が出てる、
と見知らぬ人に教えてもらったことがある。


え?と思って空を見ると、
そこにはほんとうにクリアな虹が出ていた。


そのとき、
ああ、自分はうつむいて歩いていたんだ。
空を見る心のゆとりもなかったんだと気づいた。


顔をあげて、虹を見て、
虹が空になじんで、消えていくまでずっと見ていて、
顔をあげて、背筋を伸ばすと、
それまでの思いがすっと晴れたような気がした。


いつでも空を見上げて、
虹がでることをいち早く気づいて、
虹だ!と人に教えられるような、
そういう人でありたいとそのとき思った。


虹が出ないかな
まいにち


そう願いながら、顔を上げて生きていたい。


そして、
虹にようなものが
出ないかな
空に。


と思いながら、
虹のようなものを探して、
気持ちをさっと切り替えてしばし眺めいるような、
希望の象徴であるような光のような、
そんな、虹のようなものを見つけたいと願う。


虹を教えるひとの心に利害関係はない。
人と人の距離のありかたについても、
それだけ無邪気に、
純粋に人と何かを共有したり、
かかわりあえるような、
そういう殺伐さとは対極にあるような、
虹のようなものを通した人間関係があればいいなと思う。


新しい環境を迎えるひとに、
虹が出ないかな
まいにち


虹のようなものが
出ないかな
空に。


それを願ってやまない。


3月はもう終わる。
そして、4月がやってくる。


虹だ!といわれたときに、
素直に顔をあげて、楽しめるような、
そういう環境が訪れますように。

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石垣りんさんの詩については、過去にもレビューしています。
よろしければあわせてお読みください。


石垣りんの「表札」の潔さ
石垣りんの『貧しい町』
石垣りんの先見性(私の前にある鍋とお釜と燃える火と)
石垣りんの「峠」
空をかついで
洗剤のある風景
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石垣りん「夏の本」
石垣りん「おやすみなさい」
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石垣りん「年を越える」


では、また。