さよならより、ありがとうを

こんにちは、検索迷子です。


3月も半ばを過ぎた。
数年前の4月に、あるいは違う季節に出会った人たちと、
お別れすることが多いシーズンだ。
別々の道を歩く人同士、お別れの言葉をかけあう機会も多いだろう。


一年前に、お別れの言葉や、お別れの挨拶にまつわる話を書いた。
何気なく書いたその二つのエントリーは、
個人的なことを書いたにも関わらず、一年中、多くの方に読まれてきた。
もしかしたら、この二つが最も通年で読まれたものかもしれない。
お別れの挨拶に聞きたい言葉
お別れの挨拶を言えますか。


たぶん、私が書いたエントリーでは、
検索してくれた人が探していたような、定型文ではなく、
本当に役に立ったのだろうかと懸念していた。
それでも、その言葉からヒントを得て、
きっと一人ひとりが自分なりの挨拶ができたのだと、
楽観的に考えるしかなく、その効果を知る由はない。


このエントリーを多くの方に読んでいただいたことで、
人と別れるときに、どういう言葉をかければいいのか、
これを書いたとき以上に考えることが増えた。

さよならなんて言えない


一年経過してみて、私自身さらに一年分の人との別れを経験して、
さらに思いを深めていることがある。
それは、お別れの挨拶には、
さよならって実はなかなか言えない言葉なのだという思いだ。
お別れの挨拶=さよなら、で済むわけではないからこそ、
多くの方が、いいお別れの言葉を探しているのかなと思った。


見送る側も、送られる側も、どっちの立場としても、
その言葉を口に出そうとすると言葉がこもってしまうくらい、
さよならを発する状況は想像するだけで、つらく、せつない。
事前にさよならを言う心の準備ができていたとしても、
さよならなんて、なかなか言葉に出せない。


さよならの言葉は思った以上に強い言葉だ。
さらりと言ったとしても、
さよならに含まれる、もう当面会わない、あるいはずっと会わない、
もしかしたら一生会わない、そういうニュアンスは、
本当に深くつきあってきたような人間関係だと、重たすぎる。
そして、そんなにかしこまって、さよならとはなかなか言えない。


むしろ、一対一でつきあうことがルールの恋愛関係でのさよならは、
ずばりとはっきりと言えるような気がする。
誰かと別れない限り、他の人とはつきあえないのだから。


でも、それ以外の複数の人とのつながりの場面では、
訣別に近いような強い別れ方ではないはずだから、
さよならという言葉が含む、はっきりとした別れという、
ニュアンスはあえて出したくないときもある。


私は最近、仕事やコミュニティなどで一緒だった人たちと別れるときは、
さよならをあえて言わない。
それよりも、もっと伝えたいことがあるとわかったからだ。
さよならの代わりになる言葉はもっとあるように思ったからだ。


そして、自分が見送られるときにかけられた言葉や、
自分が無意識にかけてきた言葉から、
相手はこの別れのシーンをどう受け止めているのかとか、
相手と自分の距離や関係はどうだったのかと見えてくることがあった。


たとえば、
おつかれさまでした。また会いましょうね。
と、無難な言葉をかける人は、本当に関係も無難なものだったなとか。


お世話になりました。お元気で。
と、さらりと言えてしまう人は表面的なつきあいだったのかなとか。


どちらも、大切な挨拶ではあるけど少し足りない。


ありがとうと言える関係


自分が心を込めてきたときや、
言ってもらって、心がこもっていると感じた言葉は何だったか、
そう考えてみると、
ありがとうございました。
そのひと言だった。


さよならを言えたか言えなかったか、
言われたか言われなかったかよりも、
ありがとうと言えたか、言われたかのほうが、
ずっと心に残っているような気がした。


そして、ありがとうを言えなかったときの悔いは、
ずっと残るのだということも。
ありがとうと言ってもらえなかったときの淋しさは、
ああ、自分ってそういう存在だったのかなということも。
ありがとう。そのひと言で関係性が見えてくることも。


さよならなんて言わなくてもいい。
それは言わなくても、物理的に別れていくのは、
今この瞬間はわかってるのだから。


だけど、ありがとうこそ、今このときしか言えない。
あとからメールだってできるかもしれないけど、
その人の顔を見る瞬間は、もう二度と来ないかもしれない。
ならば、今言わないと後悔するのは、
ありがとう、なんだと思うようになった。


さよならと言うより、
別れの挨拶にこそ、ありがとうを言いたい。


社交辞令のお世話になりましたや、おつかれさまではなく、
人とのつながりを大切にした日々を過ごして、
その最後の一日に、ありがとうございましたと言いたい人を
たくさん作れるような生き方をしたい。
そして、ありがとうと言われるような存在になりたいと思った。


もちろん心がこもった、お世話になりましたや、
おつかれさまだってあると思う。
ありがとうでなくても伝わる思いもある。


だけど、一番シンプルで、なのに一番テレてしまうような、
一番、自分の素の状態から湧き上がるような、
ありがとうを心の底から言いたいと思えるような、
そんな出会いと別れが経験できる人でありたいと思う。


大切な日の言葉を探しに来てくれた方へ


この私のエントリーを読んでくれた人に、
ありがとうの気持ちを込めて今日は書きました。
あなたが大切な人と、
温かな気持ちでお別れの日を迎えられることを祈っています。


誰かとのお別れの前に、この検索迷子のエントリーを見つけて、
読んでくださってありがとうございます。


お別れの挨拶を検索して探す今の心境は、
淋しさもたくさんあるでしょうが、
誰かに自分の思いを伝えるために、少しでも伝わるようにと、
最もいい言葉を探しているあなたはとても心がやさしく、
素敵なかただと思います。


どうぞ、大切な方たちと、最後の一瞬まで、
ありがとうを伝え合ってくださいね。
ありがとうと言える人たちと出会えたことを喜んでくださいね。


お別れの言葉や、ありがとうを言うのはたった一日かもしれないけど、
お別れの時間に立ち会ってくれて、
ありがとうを言える関係を築いてきた過去の時間の深さこそ、
一番の宝物なのだと思います。


それができたのは、あなたが人を大切にしてきた毎日があったからなのです。
声をかけあえる人と出会えたことが一番かけがえのないものなのです。
お別れを言えず、言われず別れる人だっているなかで、
お別れを言える空間があることが素晴らしいのです。


思い出とともに、また新しい場所に向けて歩き出しましょう。
素敵なお別れの一日を、瞬間を。笑顔を。


さよならより、ありがとうで。
あなたの心が伝わりますように。


では、また。