クリティカルシンキング<実践篇>

こんにちは、検索迷子です。


先日、クリティカルシンキング<入門篇>について記述した。
今日はその続編である、クリティカルシンキング<実践篇>を取り上げる。


クリティカルシンキングとは何かを調べていて、
このエントリーにたどり着いて読み始めた方は、
先に、上出のエントリーから読むほうが「クリティカルシンキング」の理解の助けとなるため、
まずは、そちらからお読みいただくことをおすすめします。
もちろん、このエントリーのみでもエッセンスは伝わるようにします。


本書は、クリティカルシンキング<入門篇>の続編、クリティカルシンキング<実践篇>、
E.B.ゼックミスタ、J.E.ジョンソン著についてのご紹介です。

今日取り上げるのは、上の本です。

クリティカルシンキング 実践篇: あなたの思考をガイドするプラス50の原則

クリティカルシンキング 実践篇: あなたの思考をガイドするプラス50の原則

クリティカルシンキング 入門篇: あなたの思考をガイドする40の原則

クリティカルシンキング 入門篇: あなたの思考をガイドする40の原則


この本は、先日わかりやすい文章のためにのエントリーで書いた、
克元亮(かつもと・りょう)さんの著書『SEの文章術(第ニ版)』で紹介されていたことをきっかけに読みました。
同書内では入門篇を中心とした記載でしたが、実践編についても触れられていたため、
入門篇に引き続き読み始めました。


クリティカルシンキング<実践篇>は、入門篇よりも楽しんで読めました。
より演習度が高く、心理テストやもっと気軽に遊べるような要素があります。
上下巻で章立てがされているため、通読するほうがいいのですが、
実践編だけで読んでもいいと思います。


新しい思考法を一つ知ると、一つ何かいいことに向かっていけそうな気持ちになります。
即効性がある実践内容もありますが、自分の厚みを増すために読みたい本の一冊です。
常に一方向から考えるのではなく、多角的に考える力をつけたいとき読むといいでしょうね。


同書は、「ものの考え方」を系統的に学習することを目的としていますが、
堅苦しいものではなく、
どんな小さなエッセンスでも、どんな一行でも心に留まったことを一つ始めるだけで、
何か自分の底辺が少しあがったような気持ちになれる一冊だと思います。


本書のエッセンスについて、
<実践篇>の訳者まえがきに記載されているので引用します。

 本書《実践篇》の6〜9章は、学習、問題解決、意思決定、議論と、章ごとにテーマこそ違いますが、それらの章を貫く太い支柱があります。その柱とは、6章のキーワードである、メタ認知と、それを可能にするマインドフルな態度の重視です。これらも読者の多くは、初めて耳にする言葉だと思いますが、メタ認知(注:本書内は太字)とは自分自身の知識や思考、記憶、判断といった「認知」についての知識と、自分の「認知プロセス」、つまり自分のものの考え方や判断の仕方についての内省的な吟味をさす言葉です。そして、マインドフル(注:本書内は太字)な態度とは意識的、積極的に、そうした内省的な吟味を行おうとする心のあり方をさします。言い換えれば、自分を取り巻く状況はどのようなものであるか、また、自分は何を知り、どのような考え方をしているのかについて、主体的に内省しようとすることです。これこそがクリティカルな思考を可能にする鍵なのです。


ここで、記述があるように、
メタ認知、マインドフルな態度というものを意識して読み進めるといいようである。
この二つの用語の説明を本書内から引用する。


メタ認知について

第6章 自分は何を知っているかを知る
2 メタ認知

 われわれは自分がどんな知識をもっているかについて、どれだけのことがわかっているだろうか。あるいは、あることを学ぶにはどの方法が一番よりか、どうやって決めているのだろうか。これらは、心理学者がメタ認知(注:本書内は太字)と呼んでいる問題である。「メタ」という接頭辞は、「より上位の」とか「〜を越えた」という意味である。つまり、われわれの認知活動そのものを認知する働き、それがメタ認知である。(中略)
 ところで、メタ認知が認知の上位に位置するのはよいとしても、そもそも「認知」とは何なのだろうか。簡単にいうと、認知(注:本書内は太字)とは、自分をとりまくさまざまな環境を認識し、そこから知識を得て蓄え、その知識を利用するような知的な活動全般を指している。何かを覚えたり思い出したり(記憶)、ものを考えたり(思考)、価値を判断したり(評価)することは、すべて認知活動であるといえる。


マインドフルについて

第6章
4 なぜ「わかったつもり」になってしまうのか

 ところで、ハーバード大学のエレン・ランガーは、細かいところに注意を払うことなく、決まり切ったやり方で深く考えずに処理したり行動したりする傾向を、マインドレス(注:本書内は太字)と呼んでいる。(中略)デフォルト仮定も、マインドレスな思考のあり方のひとつである。マインドレスは、日本語に直訳すれば「心がない」となるが、ここでは自分の行動や思考について意識して考えたり気を配ったりしない、というような意味である。マインドレスと反対に、細かな情報まで吟味し、互いの関係を整理して、よく考えたり行動したりする傾向は、マインドフル(注:本書内は太字)と呼ばれる。


考えるということを、考えさせてくれますね。


では、以下に、同書内で巻末に取り上げられている、
クリティカルシンキングの50原則を引用します。
前回、入門篇の40原則を入力したときとても骨が折れたのですが、
この入力を通して、何か写経をするような穏やかな気持ちになったり、
内省したりする気持ちになったため、今回もこつこつ入力します。
誰かの心に何か響く一つのフレーズが見つかることを、願って。


なお、引用するのは以下の版です。
クリティカルシンキング<実践篇>初版第3刷(1998年5月)。
本書が6章から始まり、原則41から始まるのは、<入門篇>と通番になっているためです。


以下、巻末のクリティカルシンキングのための原則、の項に、
私が各章のタイトル名を記載しましたが(本書では「1章」とのみ表記)、
その他の原則については手を加えていません。


クリティカルシンキング<実践篇>初版第3刷(1998年5月)より

第6章 自分は何を知っているかを知る

原則41 人は、同じ情報を繰り返し示されると、真偽にかかわらず、それを正しいと信じるようになるので注意せよ。
原則42 学習においては、人、課題、方略についての、正確なメタ認知的知識が必要である。
原則43 学習においては、目標の設定、計画の立案、モニタリング、結果の評価というメタ認知活動が必要である。
原則44 学習を始める前に、内容に関連するスキーマを呼び起こすこと。
原則45 効果的な学習計画を立てるために、最初に全体を見通して、学習が容易な部分と困難な部分を見分けよ。
原則46 デフォルト仮定に注意せよ。理解したつもりでも実際には理解していないことはよくあるのだ。
原則47 絶対的思考よりも条件つき思考、二元論的思考よりも相対主義的思考をせよ。
原則48 学習事項をたんに暗記するのではなく、内容の意味づけや関連づけをせよ。
原則49 学習の最中や終了後に、本当に理解しているかどうか自分でテストせよ。
原則50 なじみ感にだまされてはならない。見覚えがあるということと。それをきちんと覚えているということは違うのだ。
原則51 記憶を過信してはならない。記憶はものごとの正確なコピーではなく、推論によって再構成されたものなのだ。
原則52 自分がどのような推論によって答えを出したのかをよく考えよ。記憶はどの程度確かなのか、推論に無理なところはないか、よく吟味せよ。
原則53 自分の答えを支持する根拠だけでなく、否定する根拠がないかどうかにも注意を払うこと。

第7章 問題を解決する

原則54 問題を目標、道具、操作、制約という4つの要素から分析せよ。
原則55 問題を正確に理解するために、既知事項(事実)と仮定(推論)を区別せよ。
原則56 問題に不必要な仮定を持ち込んでいないかどうか検討せよ。
原則57 紙と鉛筆で、問題を目に見える形に表現せよ。
原則58 問題を解き始める前に、プランを立てる時間をとること。
原則59 問題解決に使える知識が不活性のまま眠っていないか、チェックせよ。
原則60 アナロジーは、問題解決の強力な武器である。
原則61 複雑な問題に取り組む時には、下位目標を設定せよ。
原則62 解決の途中で、プランの再調整、遠回り、後戻りが必要なこともある。そのことを念頭に置いて、解決過程をモニタリングせよ。
原則63 決まりきった考え方や解決方略に固執しないよう、ものごとを別の角度からも眺めてみよ。

第8章 意思決定をする

原則64 人生の複雑な問題には、明確な正解など存在しない。
原則65 複雑な意思決定では情報を効率的、かつ、システマティックに処理する方略が必須である。
原則66 意思決定の出発点は、問題の存在を認めることである。
原則67 問題を、何が、いつ、どこで、どのように、なぜ、という観点で整理せよ。
原則68 自分の人生哲学や人生全般の目標をはっきりさせておくことが、個々の問題の目標を明確にする上でも役に立つ。
原則70 案をしぼりこんでいくときには、「不可欠」な特徴と「望ましい」特徴をきちんと区別せよ。
原則71 案を評価する際には、実利的な損得ばかりではなく、個人の価値観に基づく評価も考えよ。また、自分のことだけでなく、重要な他者からの評価も考えよ。
原則72 実行する際には下位目標を設定し、下位目標を達成するごとに、自分に報酬を与えよ。
原則73 ちょっとしたつまずきで、すべてが無に帰したかのように思うことはない。すぐに立ち上がって、また歩き出せばよいだけのことだ。
原則74 あと知恵バイアスに注意せよ。後になってから思うほど、人は事前に結果を予測できるものではない。
原則75 人は誰でも、意思決定を誤ることがあるのだ。誤ったときには誤ったことを認め、その誤りの原因を探ることだ。

第9章 良い議論と悪い議論

原則76 演繹的議論を評価するポイントは、形式的に妥当であること、かつ前提がすべて正しいこと、である。
原則77 結論の正しさは、議論の正しさを保証するものではない。誤った議論からたまたま正しい結論が得られることもあるからだ。
原則78 演繹的議論の形式が、前件の肯定や後件の否定であれば、その議論は少なくとも形式的には正しい。
原則79 演繹的議論の形式が、前件の否定や後件の肯定になっていたら、その議論は正しくない。
原則80 義務の主張(〜ねばならない)と許可の主張(〜でもよい)を区別せよ。許可の主張に過ぎないものを義務であるかのように偽装している主張が多い。
原則81 因果関係を考える際には、必要原因と十分原因、必要十分原因を区別せよ。必要条件は結果が起こることを保証するものではない。
原則82 帰納的議論を評価するポイントは、前提が容認可能であること、前提と結論の関連性が高いこと、結論のための根拠が十分であること、の3つである。
原則83 権威へのアピールに注意せよ。ある主張をする人が、その分野の専門家なのかという点に注意を向けよ。
原則84 サンプルからの一般化の議論に出会った際には、サンプルの中身、サンプルの数、サンプルの代表性について必ずチェックせよ。
原則85 議論の相手そのものを攻撃しても、議論の中身の正しさとは関係ない(人身攻撃論法)。
原則86 相手から二者択一の選択を迫られたときには、他の選択がないかどうかを考えよ(二者択一の強制論法)。
原則87 論理の飛躍を重ねると、とんでもない結論に到達してしまう(雪だるま式論法)。
原則88 相手の主張を実際以上に極端に言い換えていないか、あるいは瑣末な点だけをおおげさに取り上げていないか注意せよ(わら人形論法)。
原則89 反証できないことを、その主張が正しい証拠と見なしてはならない(立証責任の転嫁)。
原則90 論理の正しさと、感情的な要素はきちんと区別せよ(感情へのアピール)。


引用は以上です。


個人的に今の気分で、しっくりきたのはこれです。

原則73 ちょっとしたつまずきで、すべてが無に帰したかのように思うことはない。すぐに立ち上がって、また歩き出せばよいだけのことだ。


今はこれですが、随所に、
あのときのことはこういうことだった、
確かにこれは言える、
という発見があり、何度読み返しても参考になります。


今、この瞬間の自分にとって、
最善のクリティカルシンキングの原則を見つけてくださいね。


体系的なものの考え方を補助してくれる本、
それがこのクリティカルシンキングです。
決して、暗記するとか、読み流すだけでなく、
自分の事例にあてはめて、手元に引き寄せて考えれば考えるほど、
次に踏み出す一歩が軽やかになると思います。


自分の迷いや悩みなんて、誰かが先に通過して、
それに名称をつけていたりするんだと思うと、
なーんだ、既知の病かとか、他の人も同じことに悩んでるのかと、
からからっと笑って、なんとかなるさと思えてくるから不思議です。


世界のどこかで同じ苦しみを味わう人がいる。
自分の悩みは自分ひとりだけのものではない。
だから、思考を体系化できる新しい言葉を仕入れて、
新しい思考回路を身につけて、次にどんどん行きましょう。


悩みのない日々なんてない。
いつだって、大なり小なり、何かにつまづき、
その悩みの石をどけて、
時には石を砕いて、石を遠くに投げて、
時に石を迂回して、石を逆手にとって道や椅子を作ったりしながら、
ひたすら立ち上がることの繰り返し、
そしていつだって石は、無限に目の前にやってくるものだから。


石があるから、その石をどけて、
その石を飛び越えようと思うのだ。


では、また。