自宅に仕事を持ち込む人々

こんにちは、検索迷子です。


企業内で、パソコンを使った仕事が当たり前になってきたためか、
自宅に仕事を持ち帰ってする人が、意外にも多くなっている気がする。
フリーランスの人ではなく、会社勤めをする、
ごく一般の社員レベルでのことである。営業ではなく内勤の人が、だ。


正直、私自身はパソコンを持ち帰ってまでの仕事は抵抗がある。
理由はいくつかあるが、
最大の理由は、予期せぬ形で情報漏えいをしたり、何か不具合が起きたり、
パソコンを紛失したりという事態に、企業の一員としての責任は負えないという点だ。


持ち帰る仕事がたとえ個人情報や機密事項はない、としても、
さて、企画書レベルやエクセル作業だとして、
それは本当に社外に持ち出していいものなのだろうか。


ちなみに、こういう仕事を持ち帰るということが簡易にできるところは、
上司の承認などなく、自己判断で、ほぼ毎日持ち帰ることが許されているほど、
パソコンの持ち出し規制も緩く、持ち出すデータの中身さえも見られていない。
そんなに急ぎでもなければ、その人しかできないことでもなかったりする。



では、なぜ家に持ち帰るかというと、
残業代がどうせでないなら家でやっても同じとか、
あるいは残業代がでても長時間労働だと産業医面談になってしまうから、
とりあえず会社をでて時間数を見かけは減らさなければとか、
自宅のほうが打ち合わせがなくて集中できるからとか、
理由はまちまちだ。いずれにしても、サービス残業の一環だ。


家でなければならない理由などほとんどなく、
会社の延長上に場所を移動させて自宅があるだけだ。


パソコンを持って帰って仕事をする人は、
ただ持って帰って起動しないというのではなく、自宅まで気持ちを持続できて、
自宅で仕事ができる集中力が途切れない自制心があり、
生産性は高い人が多い。
事実、仕事を処理するのに、会社も自宅もないのだろうと見ていて思う。


でも、社用のパソコンを毎日毎日自宅に持ち帰る人を見ると、
仕事はできるだろうけど、
機密情報を平気で持ち帰る無神経さは、
何かずれているように思えてしかたない。
納期に対しては几帳面かもしれないが、
情報の取り扱いに関しては、さてどうなのだろう。


理由のもう一つは、
そういう人と一緒に仕事をすると、一週間が7日間カウントになる弊害があることだ。
当人が7日働くのは構わない。


が、大半の週休2日の人は、土日は休みなのだ。
金曜の帰宅間際の仕事依頼を月曜の朝にあげることを、
自宅仕事組はあっさりとやってのける。
でも、それを人に求めてはいけない。
家族や自分の時間でリフレッシュしたり、他のことに時間を使う用事があるひともいる。
自分のために24時間投資できる贅沢な人は、そんなに多くない。


昔、パソコンが一人一台でなかった時代、
上司から、電車のなかで仕事の段取りを考えないのかと聞かれたことがある。
当時は社会人になりたてで、寮生活で職場から寮が遠く、
長時間労働の連続で、その頃の電車の時間は貴重な睡眠時間だった。
そんな、個人の時間を引き合いに出されたことがまず、びっくりした。


寮生活で洗濯機が共用で、自炊設備もないところだったため、
洗濯したいときに洗濯ができず、コンビニすら遠くて食事もとれず、
日常生活を捻出するのも大変な状況で働く自分と、
自宅通勤で毎日手作り弁当を持参し、シワのないきれいなワイシャツを着て、
身の回りの世話をしてくれる人がいて働く人と、
自分の24時間は違うのだと思った。


お昼休みにチャイムと同時にお弁当を広げるその人と、
弁当屋さんの行列に何分も並ぶ自分の、一日の持ち時間は違う。
違うということがわかってからは、
電車のなかこそ思考する時間だ、うんぬんと言ったその人の言葉は、
まるで響かなかった。


自宅で仕事をするのも、プライベートを投入するのも、
できる人、したい人はいくらでもやればいいと思う。
でも、業務時間外にそれを強要したり、命令してはならない。


自宅で会社の仕事をするなら、黙って、こっそりやってほしい。
口に出して、そのくらい仕事に熱中しているとアピールしたり、
純粋に集中を持続している夢中の行為だとしても、
それは他人に言わずに自分だけで処理してほしい。


こうしたパソコンを気軽に自宅に持ち帰る人は、
そもそも、インターネット上でニュースとして流れる、
ファイル交換ソフトによる被害だとか、
セキュリティに関する情報だとか、
ウイルス対策だとか、
そもそもそうしたニュースに疎く、情報収集していない人も多い。


知っている人ももちろんいるだろうが、
こうしたセキュリティ情報を丹念に見ていると、
どんなセキュリティ対策も万全ではなく、
最大の防御は、余計な自己判断による行動を慎み、
社内のネットワーク環境で業務を行うことが最善だとわかってくるはずだ。


つまり、業務時間中に終わらせるのを、第一の制約条件として考えるということだ。
24時間、自宅で、という選択肢を捨てた上で業務設計をするのが一番いいのだ。
会社の仕事は会社で、というのは理にかなっていると思う。


気軽に社用パソコンを持ち帰って、もしかしたら、
ライフスタイル上とてもいい仕事ができるメリットもあるだろうが、
その気軽さゆえに、ひそむ危険性や最悪の事態に会社が負うべき社会的責任を、
どれくらいわかっているのかは不明である。
また、他人から、若干皮肉めいた口調で、
よく働きますねと言われているトーンがわかっているだろうか。


自宅で仕事をして、無給で働いて、
そこまでして急いで急いで資料を作って、毎日それが常態化して、
そこまで働き続ける魔物のような魅力、好奇心を満たすほどのプレッシャーを楽しむこと、
しかられないための先手必勝、
もう何かわからないけれど、一体そこまでするのは何なのだろう。


会社が黙認していたとしても、私は個人的にとても痛々しく、
その姿を見ている。


土日にまで集中して働けないものの、ひがみなのだろうか。
それにしても、本当に、自宅で仕事をする人が増えたとしみじみ思う。
それで、幸せなのだろうか。
自分も、自分の周囲との時間の過ごし方も。
私には、あまりよく理解できないけど、そういう過ごし方もあるのでしょうね。


パソコンのある暮らしは生活を便利に豊かにしてくれるはずが、
拘束道具を増やし、長時間労働を促進するなんて、なんだかおかしいなと思います。
時間を生み出すはずが、時間に追われている。


ちなみに、
企業のリクルートページの採用情報で、
従業員インタビューや先輩社員の一日というコーナーなどがあり、
その会社が推薦する優秀な社員を登場させているのをよく見かけます。


このとき、コメントで、
自宅に仕事を持ち帰ることもある、みたいなことを書いてある会社は、
残業大好き、たくさん働きたいという人以外は私はおすすめしません。


応募しようとする人は、このコメントには注意したほうがいいですね。
私はこうしたページを見るたびに、
ああ、社員が仕事を家に持ち帰れるほど、情報の取り扱いがずさんな会社で、
自宅での仕事を美談のように書いているところが、
長時間労働を良しとしているのだと、社内情報体制と労働条件が悪い会社と見ます。


言っちゃダメでしょ、書いちゃダメでしょと思います。
集中するなら、業務時間内か、こっそり自宅で処理するか。
どちらがいいかはその人次第でしょう。


では、また。