工藤直子さんの「夕焼け」

こんにちは、検索迷子です。


先日紹介した、水内喜久雄さん編著の詩集より、
もう一編紹介したい。


工藤直子(くどうなおこ)さんの『夕焼け』だ。

夕焼け

     工藤直子


あしたは かならず
晴れるに ちがいないなあ


あしたも わたしは
たしかに 生きるだろうなあ


あしたこそ
なにかを みるかなあ


きっと そうであり
そうに ちがいなく
そうと 思いたい


……………
そんなふうに眺められる
夕焼けが あった



『一編の詩がぼくにくれたやさしい時間』
  水内喜久雄編著、PHP研究所刊より転載。
  著書内によると原典は、
  『てつがくのライオン』理論社刊とのこと。

一編の詩がぼくにくれたやさしい時間

一編の詩がぼくにくれたやさしい時間

てつがくのライオン (フォア文庫)

てつがくのライオン (フォア文庫)


ただなんとなく、夕焼けの美しさにぼーっとすることがある。
夕焼けを、全身で受け止めて見られるとき、
幸せを感じる。


会社で働いている時間には、
夕焼けを堪能することはできない。
ビルの中から感じることができない、
夕焼けを全身で受け止めることができる時間は、
本当に、神様がくれたサプライズだと思えてくる。


この詩は、
あ、夕焼けだと思うところから、
どんどん後半に向かって生きる力がみなぎっていく。
そこがとても共感できる。


なんとなく見ていた夕焼けが、
地に足をつけてしっかり生きるぞという気持ちにまで昇華する。


夕焼けにはそういう力がある。
一日の終りへの感傷とともに、
明日というものを強く意識する時間帯。
その今日と明日をつなぐ、
あいまいな時間帯のなかで、
こういう詩を書けることが素晴らしいと思う。


夕焼けというタイトルを聞くと、
吉野弘さんの『夕焼け』が有名で、
こちらについても過去にレビューしたことがあります。
美しい夕焼けも見ないで - 検索迷子


同じ夕焼けでも、
何を描くかはそのときどきで変わり、
題材としても、夕焼けは美しい。


が、きっと誰もが描く夕焼けは、
きっと違うのだろうというのが、
いかに個人の記憶の過去の引き出しから、
共感されるような夕焼けの風景をひきだすか、
力量が問われる題材なのだとも思う。


誰もが見たことがあるけど、
誰もが同じ夕焼けは見られない。
それを、ひとつのタイトルを通して感じた。


水内さんの著書を紹介した記事


水内さんの編む詩集が好きで、
過去に数回エントリーを書いています。


今日の紹介した本から先日、ひとつ紹介しています。
工藤直子著「元旦」


同じ著書から2冊、紹介したものもあります。
折原みと著「かわっていくこと」

すずきゆかり著「今、ここで」


また、水内さんの編んだほかの著書も紹介しています。
石垣りんの詩を編んだ「宇宙の片隅で」を紹介しました。


良ければ、そちらもあわせてお読みください。


では、また。