本についての詩集

こんにちは、検索迷子です。


先日、どんな本が、本なのかと疑問に思って、
読む本の質を見直したいと思う話を書いた。
さっそく、文芸寄りの本を読もうと思い、手にした一冊がある。


みすず書房<<大人の本棚>>『本についての詩集』長田弘(おさだ・ひろし)選だ。

本についての詩集 (大人の本棚)

本についての詩集 (大人の本棚)

本書は、「二十世紀以後の詩」の詞華集(しかしゅう)(アンソロジー)として、
92人、92編の詩から編まれている。


ちなみに、
詞華とは、しか、と読みます。
私は最初、詩歌(しいか)かと文字だけ見て思っていましたが、勘違いでした。


本の紹介のまえに、補足として用語の解説を引用します。

コトバンク − し‐か 〔‐クワ〕 【詞華/詞花】
詩歌や文章で、巧みに美しく表現したことば。すぐれた詩文。詞藻。


コトバンク − 詩歌【しいか】
詩歌には、主に和歌や俳句が挙げられます。


アンソロジー(英:anthology, 仏:anthologie)は、異なる作者による詩を集めたもの。詩撰、歌撰。
Wikipedia − アンソロジー

前置きが長くなりましたが、
この『本についての詩集』で、なんと昨日の私の問いに対する答えがあった。


選者である長田弘さんによる、序詩として一番最初に飛び込んできた。
全文掲載したいところですが、抜粋します。

世界は一冊の本
長田弘


本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。


書かれた文字だけが本ではない。
日の光り、星の瞬き、鳥の声、
川の音だって、本なのだ。


(中略)


本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。


(中略)


人生という本を、人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も、本だ。


(中略)


200億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは、
考えることができるということだ。


本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。


『世界は一冊の本』の書籍はこちらです。
初出誌は1994年刊行ですが、今年また出版されているようですね。

世界は一冊の本

世界は一冊の本

世界は一冊の本 [definitive edition]

世界は一冊の本 [definitive edition]


どんな本を読むかとか、どう読むかとか、
ジャンルはとかそんな小さな次元のことではない。
五感を研ぎ澄ませながら、考えながら生きていく、
そのなかに本がある。


その本も、書物だけでなく、
自分であり他者であり、世界であり日常であり、
目に飛び込んでくるもの、全てを本ととらえる。
何かを見て、何かを感じることができるもの、それが本なのだと。


この詩の心地よいところは、
ともすれば、本を読みなさい!と命令口調になりそうなことを、
軽やかにまさに歌うように、楽しい出来事として綴っていることだ。
ああ、本を読めば、何かいいことがありそうという気持ちになる、
押し付けがましさではなく、楽しいよという誘いのような詩だ。


本書の他の詩については、後日また書きますが、
長田さんのこの詩一遍だけ読んでも、詩の力強さを実感できた。


確かに、どんなことでも、何かをくれる。
もっと本を読もう。
うん。
もっともっと本を読もう。



長田弘さんについては、夏休みにゆっくりと読みたい絵本のエントリーで、
深呼吸の必要』の本をとりあげたことがあります。
こちらも名著なので、ご興味があればあわせてお読みください。


では、また。