どんな本が、本なのか

こんにちは、検索迷子です。


かつての上司から、仕事の話をしているとき唐突に、
本を読んでいるかと聞かれた。
当時、週に5冊くらいは読んでいたため、結構読んでますよと答えた。


すると、何を読んでいるかと聞かれた。
文芸作品を中心に、当時はベストセラーはほとんど読んでいたため、
話題の作品名をいくつもあげた。


とっさに、そういう本じゃなくて、社会人が読む本といえば、
ビジネス書のことだよと言われた。


当時、私は全くビジネス書を読まず、自分とは無縁だと思っていた。
手にしたことすらなく、何が書いてあるのかも知らなかった。
ただ漠然とそういうのは、中間管理職が読むようなものだと思っていた。
読む自分の姿すら想像ができなかった。


それから幾年も過ぎ、今の私はビジネス書しか読まなくなっている。
必要に迫られて読み始め、意外にも読みやすい新書があることを知り、
今ではごく普通にハードカバーの本も読む。



気が付けば、文芸関係の本や流行に疎くなり、
書店で売り場に足を向けることもなくなった。
いつのまにか、実務的な、即効性のある、あるいはつまみぐいの価値のある、
そういうビジネス書が読書の中心となっていた。



ふと、こんな本の読み方をしていて、ビジネス書ばかり読むようになって、
私は人として豊かな感性をどこに置いてきたのだろうかと思うことがあった。
ビジネス書を読んで、文芸作品を読むこと以上の何かを見つけたのだろうか。


心で共鳴する読書ではなく、マニュアルのようにペンとノートを使った読書は、
私に何をくれただろう。



そんな折、『そんなに読んで、どうするの? −縦横無尽のブックガイド−』
豊崎由美(とよざき・ゆみ)著を読んだ。
200冊あまりの本のブックレビューの本だが、この本自体に読み応えがある。

そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド

そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド

すぐれたレビュアーは、読んだことのない本でも、読んだ気分にさせてくれる。
そして、それだけでなく、実際に手にとって読むために背中を押してくれる。
つまみぐいのためのレビューではなく、
最初の一歩のためにガイダンスになってくれている。
書評として、本の良さを引き立たせてくれる。



あなたにとって、何が、本ですか?



私は今でも、本というなら文芸書で、
ビジネス書は本だけど、本ではないような気がしています。


本をもう少し読みたいと思う。
ブックガイドを見ながら、
ああ、この本もあの本も楽しみながら読んだと、記憶がよみがえり、
その時の気持ちや感じたことを、どこに捨ててしまったのだろうと思った。


ビジネス書は、今に役立つものをくれるけど、
人として豊かに年齢を重ねるのは、文芸書がくれる時間だと思う。
人らしい気持ちになれる、そういう本を読もう。


ビジネス書は、ある一定ラインに追いつけるツールにはなるけど、
人と自分の違いを際立たせ、追い越せるツールになるには独自性がたりない。
たぶん、そこが人としての厚みなのだろうと思う。


普通の言葉のなかから、自分のオリジナルの言葉を磨く。
忘れてはいけない。
自分は誰のコピーでもないのだということを。



では、また。