こんにちは、検索迷子です。
政治に明るいわけではないが、ずっと気になっていた一冊を手にした。
『リクルート事件・江副浩正の真実』江副浩正(えぞえ・ひろまさ)著だ。
- 作者: 江副浩正
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/10/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: Hiromasa Ezoe,江副浩正,Rei Muroji
- 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
- 発売日: 2010/10/01
- メディア: ハードカバー
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なぜ今、この本なのかというと、
この事件が報道された時、非常に鮮烈だったことを覚えていて、
いつか読み解きたいと思っていたからだ。
いったい、何が起きているのだろうと、その背景には何があるのだろうと、
ニュースで逐一追うだけではなく、
俯瞰できる状況が整ってから読みたいと思っていた。
その後、報道されている事件の中身を追いかけるというより、
リクルートが企業として持続して発展していくさまや、
創業者である江副氏の存在感が気になっていた。
この本のなかで、経営者の苦悩を垣間見る文章をいくつか見て、
どんな大企業でも創業者のこうした葛藤の連続から、
どこかから力が生まれて、持続的企業に発展を遂げていくのだろうかと思った。
そして、やがて創業者の手から離れて、一企業として独立していき、
私物ではなくなり、社会性を持った存在になるという様子が伝わる。
本書は、江副氏が理路整然と事実を書くくだりもあれば、
特捜の取調べのさかな、自殺願望が高まり墓を予約するといった記述もあり、
強さと脆さ、責任感、自分の意志への身の置き所など迷いも見られる。
なかでも、どんなに社会的に認知される業績をあげて、
知名度があがっても、一人の人間としての孤独感が伝わる次の一文は、
何度も読み返した箇所だ。
長いあとがき
なぜ、多額の政治献金をしたのか
私は先達から多くを学んでいた。それらの会のなかに政治家を囲む会があった。
そのような環境に身をおき、一方で後に続く優秀な社員に追われてもいた。私は常に自らもっと学ばなければならない、成長しなければならないという強迫観念に駆られていた。私は絶えず緊張していて孤独でもあった。多くの人と交わることで、学ぶと同時に、乞われるままに多額の政治献金を行い、心のバランスをとっていた。
私は「リクルート時代、精一杯の背伸びをして、道を踏み外してしまった」といまになって深く反省している。
リクルートは、広告の本を無償で配るというビジネスモデルの独自性で、
事業は飛躍的に発展した。
人のライフステージのどこかで、必要となる情報をピンポイントで提供し、
需要と供給を上手く仲介してきた。
こうした、天才的なひらめきをもって始まり、広く世の中に受け入れられ、
浸透をしたサービスを考え出した、創業者をしても孤独感や焦りのなかに、
身を委ねることになるのかと思った。
本書はいろんな読み方ができる。
捜査のあり方、政治家と企業の関係、一企業の体質、
ベンチャー企業の光と影、メディアのあり方など、
読み手によって関心の持つ場所が違うだろう。
私も読み始めるまでは、リクルートという会社に対する関心だった。
この事件の大きさを、もう一度捉えなおしてみたいという気持ちだった。
が、読み終えてみると、江副氏が経営者としてどう生きたか、
ということに興味がわいた。
読後にすぐに感じたことは、実は政治でも企業でもない。
経営者は孤独だ、という思いだった。
そして、谷川俊太郎氏の『二十億光年の孤独』の詩が浮かんだ。
(前略)
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
- 作者: 谷川俊太郎,川村和夫,W・I・エリオット
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/02/20
- メディア: 文庫
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余談ですが、谷川俊太郎氏の読みは、たにがわ、だとずっと思っていましたが、
たにかわ・しゅんたろう、が正しいのですね。
知っていると思うことでも、ときどき、調べてみるものですね。
どんな孤独であれ、思わずくしゃみをする。
消えない孤独だからこそ、そうやってつきあっていくしかないのかもしれない。
企業人として生きる前に、人は一人の人間なのだと思わされた。
では、また。