道程 −未来にたどり着くまでの道

こんにちは、検索迷子です。


春先になると、高村光太郎さんの『道程』を思い出します。
ふとしたときに、そらんじている自分がいます。

僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る


この詩は、
中学校1年生の時の、国語の教科書の表紙裏に掲載されていました。
ご存知のかたもいらっしゃると思います。


あるとき、テレビで放映されていて、久しぶりに、
テロップと同時に暗唱をしてみました。
テレビの番組名は失念してしまいました。


暗唱をしていると、
あれ? なぜか私の記憶と違う!
どうして??
私の記憶が薄れている?
それにしても、長い!
教科書のは抜粋だったの? 
と驚きの連続でした。


疑問に思ってインターネットで検索してみたら、理由がわかりました。


この詩は現在は9行の短詩ですが、
もともとは102行もあったということを以下のサイトで知りました。
謎がとけて、私の記憶力の低下でないこともわかり、ほっとしました。

詩の出版社ミッドナイト・プレス
今週の詩アーカイブ 2008年06月02日 道程 高村光太郎

Wikipedia 高村光太郎

道程 (愛蔵版詩集シリーズ)

道程 (愛蔵版詩集シリーズ)



中学生になり、初めての制服に身を包み、晴れがましさと、
まだ大人になりきれていない居心地の悪さが同居していた時期でした。


そんななか、この『道程』をきっかけに、
学生時代を通して、言葉を過剰に使わなくても、
心からわかりあえる友人と出会うことになりました。


中学で新しく知り合いになった友だち同士は、
どこかまだ距離感があって、共通の話題もありませんでした。


国語の授業前の先生が来る待ち時間も、
おしゃべりができる子が近くの席にいなくて、
なんとなく、教科書のこの詩を見ていました。


ふと顔をあげると同じように、この詩を、
ぶつぶつと読んでいる子がいました。
まだ話をしたことがない、違う小学校から来た子でした。


「何しているの?」と話しかけると、
「暗唱したいから、何回も読んで覚えてるの」
「じゃ、私も覚える」


それから、私たちは何回もその詩をそらんじては、
お互いの暗記力を競うようになりました。


中学生になったばかりの子どもに、
この詩の意味を咀嚼する力はありませんでしたが、
高村光太郎が紡ぐリズムが心地よく、
二人で何度もこの詩を暗唱しました。


余談ですが、
道程の読み方の音感が、思春期の男子たちにとって別の単語を想起させて、
暗唱するたびに笑いの種になり、よくはやし立てられた記憶もあります。


それでも私たちは、暗唱をし続けました。
今となっては、楽しい記憶です。


そして、その暗唱を続けたおかげで、私は何十年も経った今でも、
『道程』をそらで暗唱できます。


その時、一緒に暗唱した彼女とは、
進路の違いで離れ離れになってしまい音信不通です。
今、どこで何をしているのでしょうね。
お互いの道程を知ることもなく、年月が過ぎてしまいました。


検索迷子がいつの日か、
匿名ではなく、実名で書けるようになったら、
インターネット上で私を見つけてほしいなとかすかに思っています。


『道程』は、いつの年齢で暗唱しても、
今の自分、これからの自分について、どう歩くことが自分にとって最善かを、
立ち止まって、遠くをみるように考えさせてくれます。


僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る


私は、インターネット上で新しいサービスを生み出すとき、
人と違った仕事のやり方を提案するとき、
多くの反発や失笑や、批判にぶちあたることがあります。


そんなときは、
まだこの世にないもの、
まだ誰もやっていないもの、
未知な新しいものを作るのだから、
賛成されにくくて、合意を得にくくて、当然のことだと、
何度も心が折れそうになる自分を励まします。


それでも、
検索迷子を救うために、この機能をやりたいと思ったとき、
前例にとらわれずに、なんとか理解者を求めようと努力します。


自分のめざす未来にたどり着く道まで、
『道程』のように、
自分の前には道はなくて当然だ、
自分の後ろに道を作るんだと、
折れかけた心や、転んでくじいた足をさすりながら、
まっすぐに立ち上がっていこうと思います。


インターネットで人を幸せにしたいと願う私にとって、
ささやかな日々は、そんな道程の連続です。



では、また。

2010.4.4追記

道程の読み方は、どうてい、です。
文字で書くのは抵抗があり、検索迷子で明記していませんでしたが、
検索して、検索迷子のブログに来ていただくアクセス数が多いとわかりました。
一般的に知られていないのですね。
せっかく、探している方を検索迷子にしたくないと、読み方を追記することにしました。


なお、
学研のキッズネット、学習百科事典に、
ルビが振ってある解説がありました。ご参考にしてください。

どうてい【道程】