草なぎ剛さんの静と動の役割

こんにちは、検索迷子です。


先日、二週間ぶりに、
草なぎさんの単独の話題で、
草なぎ剛さんの「いい違和感」を伝える言葉
書いた。


何かまた草なぎさんの話題を書こうかと
思っていた矢先、スペシャリスト4を観たので、
その感想を書くことにする。
視聴直後のものを書くのは、私のいつもの
「しばらく寝かせてから」というスタイル
ではないので、どれくらい表現できるか、
若干不安ではあるが書いてみたい。


感想はあくまで、役を演じている草なぎさん、
という軸で書こうと思う。


脚本とかストーリー性については、
ブログや、ツイで感想をとてもわかりやすく
書かれているかたも多い。
また、私がもし作品レビューをするなら、
ノベライズを読んでからという気持ちもある。
下調べが可能なものは、できるだけしてから
書きたいので、今日はそこは行わない。


一言で、スペシャリスト4の草なぎさんの
演技の感想を言うなら、役割にあわせた、
静と動の温度差がとても明確だと思った。


それは、役割のキャラクターの違いだったり、
話し方の声のトーンだったり、
動作そのものだったりするが、
トータルで観たときに、この作品に何人の
草なぎさんが存在しているのだろうと思った。


もう少し具体的に書いていこうと思う。
役割による声と動作の両方について、
取り上げていく。
役割というのは、対仕事、対家族、一個人、
という切り口になるだろうか。


まず、同僚と仕事をしているシーンだが、
頭脳明晰ゆえに理路整然と話すところは、
小生意気とぎりぎり紙一重の小気味の良さで、
早口でテンポよく喋っている。


あれ、草なぎさんってこんなに滑舌が
いいんだと思うほどテンポよく喋るのだ。


説明をするセリフでありながら、
これはつまりね、なんとか、ってこと、
というような抑揚を明確にして、
タタタタタタタ、タタタタ、ターンタ、
みたいなリズムで、コミカルさも含み、
一気にたたみかけて、最後につるん、
と終わるセリフをうまく話していた。


以前からスペシャリストを観てて思って
いたのだが、この役での草なぎさんの声は、
明るめの甲高いトーンが中心になっている。
衣装とかキャラクター設定の作用もあるが、
とても少年っぽいハイトーンの声で、
若々しさと快活さが出ている。


また、高い声を多用しているからか、
会話中に低い声になった時に、
だぁかぁらぁ、といった会話のリズムや、
メリハリが生まれて、感受性の豊かな、
愛すべきキャラという声になっている。
ちょっとシャクにさわるほど頭がいいけど、
憎めないのは、この話し方の抑揚が、
人間らしい躍動感を出しているのだと思う。


次に、動作だが、常に何かを食べていたり、
ソファーに寝そべったり、
小さく動き回っていたりするが、
歩き姿や立ち姿も含めて、場になじみ、
チームの一員として存在している。


ほかのひとのような、いわゆる刑事
らしさはないかもしれないが、同じ
目的に向かって協力しあうという
空気がしっかり出ている。
異質なんだけれども同調している。


そのキャラ立ちしつつ、環境に適応
しているような草なぎさんの役割が、
研ぎ澄まされた感性で変化するのが、
右人差し指をこめかみにあてて、
じっと考え込み「わかった」と声を
発する瞬間だ。


この「わかった」の声は、それまでの
ハイトーンの声とは全く違い、
母音の「あ」の音が鼻濁音化して、
とても深みのある声なのだ。


極端な言いかたをすれば、弾丸トーク
ように言葉を羅列していたようなひとが、
ピタッと静止して、我に返り、心の声が
そのまま出てきたような響きをする音で、
草なぎさんの声の持ち味が良く出ている。


2つめの役割は、家族といるときの声だ。
元妻と子と一緒にいるときは、仕事を
しているときとはがらりと変わって、
穏やかな声と、文字通り肩の力が抜けた
ような姿勢でたたずんでいる。


近い存在ではあるけれども、日常生活を
ともにしなくなったゆえの微妙な距離感
とか、気遣いもあり、声も少し息が細く、
芯は強いけど、おとなしい印象を与える。


自分が弱い所を見せられる存在であり
ながらも、完全に寄りかかれはしない。
愛情をストレートに伝えたくても、
全面的に伝えることができない、
空白だった時間の壁が、草なぎさんの
役割に微妙なベールをまとわせている。


草なぎさんはこの、内面に静かな感情の
揺らぎを抱えながら、相手に多くの言葉で
伝えられないときのわずかな空気の揺れや、
間合いがほんとうに自然な形で出てくる
かただなと思う。
演技と思えないほど、静かなたたずまいで
そっとそこに存在しているのだ。


3つめが、一個人としてのむきだしの感情が
表れる場面だ。
理知的でコミカル、穏やかな家族思いのひと、
そのどちらとも違う、人間としての熱さ、
根幹にある強い意志を表現する場面だ。


まずは走る姿だ。
以前、草なぎ剛さんの走る姿を書いたほど、
私は草なぎさんの走り姿が好きなのだが、
今回、このキャラクターはこんなに走れる
運動神経の設定なのかと心配してしまうほど、
めちゃめちゃ速いのだ。


設定はともかく、それほどに気持ちが駆り
立てられているのかと、ものすごい速さで
走るスピードを観るだけで伝わるのだ。


これまで観たドラマで走る草なぎさんは、
弾むような走りが多く、この全力疾走は、
役柄になりきった草なぎさんが、全身の
熱量を放出しきっているような凄さがある。


草なぎさんは、きれいな走るフォームを
していて、腕の振りも大きい。
そして、手をパーに開いて走るスタイルの
ようだが、陸上をやっていた経験からすると
この手の使い方は賛否両論ある。


指先にへんな力が入って肩が力むから、
かるく卵をにぎるようなグーがいいという
意見や、反対に、指先に力が入らないよう
リラックスできていれば、うまく風を切る
役割を果たすともいわれる。


と、脱線気味のことを書いているようだが、
草なぎさんの日常の走りかどうかはさておき、
これが、気が急くあまりに指先と肩に力が入り、
無我夢中に必死の形相で走る姿だと思うと、
キャラ設定とは関係なく、しっくりくるのだ。


そして、次のシーン。
上司が撃たれ、慟哭(どうこく)する場面に
ついてだが、「うわぁぁぁぁーーー」
「ねえ、ねえ」と、大切なひとの死に気が
動転しているのを表現していた。
特に「うわー」と叫ぶシーンでは、思いっきり
声を張り上げていた。


このシーンで、こういう草なぎさんって見た
ことがないかもしれないと思ったのが、
口の開き方だ。前歯がはっきり出て、口の中
までがはっきりと見えるほど口を開けている。


また、叫ぶ姿勢もそうだ。
草なぎさんが役者さんとして叫ぶシーンとか、
バラエティなどで叫ぶシーンはいくつか見たが、
たいていおなかを後ろ側にひき、肩を落とし、
下方向か、かがんだような姿勢の前方に声を
出していたような気がする。
腰が引けていたり、泣き崩れるような姿勢だ。


でも今回は、上を向いて、ライオンの雄叫びの
ように、口を大きく開けて叫んでいて、
その姿勢で叫ぶのは初めて見たような気がする。
口内が大きく開き、上を向いているので、
「うわー」の響きも大きく深い。
そして、うつむき加減の姿勢でないところが、
哀しみに戸惑い泣き崩れるのとは違う、
怒りをはらんだ慟哭のシーンを引き立てていた。


同じ音でもおなかをひいていると息の通路が
遮断されて、今回ほど響くことはないと思う。
そう考えると、もう体中のありったけの力を
振り絞り、宇宙に向かって哀しみを絶叫する
ほど、この喪失が大きなものだったとわかる。


草なぎさんは甲高い声がスコーンと抜ける
いい響きがでるので、絶叫シーンは印象深い
ものがもともと多いと思っていたが、
今回はさらに息の出す方向で、ボリュームが
まるで違う、腹の底から出てる声だと思った。


そして最後に別の動作についてだが、
ラストで、壁の張り紙をはがし、
一人で歩き出すシーンがあったが、
この間、たんたんと動いているが、決意が
みなぎる、静かないい場面だったと思う。


ほとんどの場面を同僚と過ごしていた
からなのか、激動する時間のなかから、
ふと一人の時間になったとき、
ひとりであることの孤独さ、強さ、
生きようとする決意のようなものが、
ただ立っているだけでみなぎっていた。


ふと、草なぎさんは大勢でいるより、
一人のほうが、瞬時に空気や光までを
自分のものにするほどのエネルギーが
伝わるひとだと思った。
歩いている後ろ姿だけで、強い意志を
感じるような気がするのだ。


生きていくうえで複雑なことは多いが、
それでも生きていくんだ、と伝えて
いるかのような強さを感じる。


と、いろいろここまで複数の切り口で
書いたが、書きたかったのは、
役割に応じて、声と動作の違いによって、
静と動のバランスを使い分け、2時間番組
とは思えないテンポの良さとストーリーの
起伏を生んでいたということだ。


あらためて、草なぎさんが持つ声と息遣い、
立ち姿やふるまいのバリエーションを感じ、
本当に食い入るように見入ってしまった。


それぞれの場面は私の記憶のみの記述で、
勘違いなどがあれば失礼します。
また、私は草なぎさんに敬意を持って、
この記事を書いていますが、ちょっとした
ニュアンスを伝えるために選んだ単語に、
ご不快になったら失礼します。


では、また。