『藁の楯(わらのたて)』試写会

こんにちは、検索迷子です。


藁の楯(わらのたて)』の試写会を鑑賞してきた。
そのレビューを書こうとして、
心のなかにあるざらりとした感覚をもてあましている。
藁の楯公式ホームページ


藁の楯(わらのたて)』は、
木内一裕(きうちかずひろ)さん原作の同著によるもので、
原作を読んでいなかったため、
ストーリーがどう展開するのか本当に読めなかった。

藁の楯 (講談社文庫)

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ビー・バップ・ハイスクール』の作者である、
漫画家きうちかずひろさんが、
小説家として初めて書いた作品ということで、
なんとなく荒々しいけれども、性善説に流れるのかと思っていた。

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監督が三池崇史(みいけたかし)さんのため、
どれだけ激しい映画かは想像できたが、
アクションシーンも、その規模も、
そして人がどんどん死んでいくシーンも、
目をそむけたくなるような場面も思ったとおり、たくさんあった。


だけど、視覚的なものだけではなく、
人の心の内面について考えさせられた。


でも、映画を鑑賞し終わったあと、
こんな形で終わるなんてと、
人を信じる気持ち、
人が正しいものや美しいものに、
心が常に軌道修正されるわけではないのか、
という気持ちに呆然とし、
でも、それゆえに、この作品は何を伝えようとしているのか、
と後々ずっと考えさせられた。


このレビューは試写会を見終わって、
一週間も経ってから書いている。
ざらざらしたものをどう消化したらいいのか、
まだわからない。

藁の楯のストーリー


孫娘を連続少女殺人犯に殺された元経団連会長の、
殺人教唆広告によって、
その懸賞金10億円に人は踊らされ、狂っていく。


一般市民が殺人を企て自暴自棄になり破滅し、
人を守ることが仕事の、武器を持って訓練された、
警察内部の人間までもが職務を忘れる。


そんななか、福岡で自首した犯人を東京まで移送するための、
警察のチームのなかですら疑心暗鬼な空気が流れる。
もれるはずのな位置情報がもれ、
互いの身体検査をし、
互いの正義を疑い、誰もが犯人を殺したい動機があるのではと、
探りを入れあう。


それでも、SPとして
人間のくずと言われる犯罪者を移送対象者として割り切り、
藁の楯(わらのたて)」として、
職務を全うしようとする、
大沢たかお(おおさわたかお)さん演じる主人公と、
松嶋菜々子(まつしまななこ)さんの役柄はプロ中のプロと言える。


でも、そんな二人にさえ、心の葛藤はあり、
まさかと思うような事態に巻き込まれる。


藤原竜也(ふじわらたつや)さんが演じる犯人役に、
人としての救いはあるのかとずっと思いながら映画を観ていた。
この狂気の引き金を引いた存在に、
人間らしい血は通っているのかと気になった。


後半、そして、ラストにその思いは砕かれた気がする。


誰もがその行動の背景には意味があり、
誰もが一人ひとりが抱えている事情によって、
その行動を選択している。
それが、正義なのか、でっちあげの理由なのかは、
もう後半わけがわからなくなってくる。


こんなことが自分の身に降りかかるとは思えないが、
自分だったらどうするのか、
この映画の誰に共感するのか、
そんなことを考えさせられた。


唯一救いだったのが、
タクシー運転手役の余貴美子(よきみこ)さんだった。
なんとなく、ほっとした笑いの一瞬があり、
緊張が一瞬だけ解けた雰囲気になった。


永山絢斗(ながやまけんと)さん、
岸谷五朗(きしたにごろう)さん、
伊武雅刀(いぶまさとう)さんも熱さと心の葛藤が見事で、
山粼努(やまざきつとむ)さんは怒りと諦念と、
憎しみによる人生の幕引きとも言わんばかりの凄みがあった。


鑑賞後、何に希望を見出したり、
何を信じればいいのか、混乱する気持ちは残った。
が、自分では想像ができなかったラストに、
人はそれぞれ違う考え方をして、
そのなかで真実を見つけて、
やっぱり生きていくしかないのだという気持ちにもなった。


人が簡単に死にすぎるという気持ちは残るが、
自分の想像しえない人の考え方がある、
ということを突きつけられる映画となった。


藁の楯にならざるを得ない職務を持つ人がいて、
いろんな矛盾をはらんでいても、
それを遂行するために犠牲は払われるのだと、
なんだか不思議な気持ちにもなった。


教訓めいたものなど何もない。
自分が、どうこの映画から感じるか、
それだけなのだと思った。


では、また。