花贈りの便利帖

こんにちは、検索迷子です。


送別会シーズンになると、
夜、一次会がお開きになる時間帯で、
街中で花束を持った人を取り巻く輪を見かける。


別れがたく、二次会にどこにいこうかと相談していたり、
そこで締めという雰囲気で、最後の挨拶、
みたいな雰囲気だったりいろいろだ。


どちらだとしても、
花束を持っている人も、
それを贈った人たちもいる光景はいいなと思う。


送別会にはお花を贈るのが普通、
だと思っていたら、
全然そうではないことが次第にわかってきた。


贈れないシチュエーションでの退職というのもそうだし、
贈る文化がない、
音頭を取る人がいない、
費用を出し惜しむ、
人を見て判断するなど、
淋しい状況も少なからずあるとわかった。


ものすごく殺伐とした会社にいたころは、
当日、会社で言い争って、
いきなり荷物をまとめて、
誰にも挨拶をせず辞めていくという人も少なからず見た。
そういう会社は、皆がそういう辞め方をして、
そういう辞め方が当たり前にすら思えて、
歓迎会も送別会もないような会社だった。


そんな会社も見てきたせいか、
お花を贈り合える関係に、
その場を去っていけることのかけがえのなさ、
そういう人間関係を築きあったことのかけがえのなさを感じる。


たとえ、義理でカンパしたとしても、
義理ですらカンパしない人がいるというのも見たから余計に、
人として、ぎりぎりの心が残っているような気がして、
お花代を出せる、
お花を渡してあげたい、
お花を手配して誰かが買いに行くということの、
一連の手順を踏んで、
その人がお花を持っているということが、
本当にたいせつなことだなと思う。


お花くらいけちけちせずに贈ろうよ、
というより、
お花だから贈りあいたいと思う。


大きな花束を、普通の人がそんなに人生でもらうことは多くない。
何度ももらえるひともいるだろうけど、
全然もらえないひともいる。


お花選びに最適な一冊を見つけた。
『花贈りの便利帖』本多るみ(ほんだるみ)さん著、
誠文堂新光社刊だ。



誰に向けて、どんなお花を選ぶかとても参考になる。
しきたり、マナー、年代別、季節ごとに、
どういうお花をどのくらいの予算で選べばいいのかがわかる。


普段、お花屋さんに行きなれていないと、
いざ、人のために花束を作ろうとすると結構迷うものだ。
その人らしいものや、状況にあったものをと思いつつ、
お任せにしてしまったり、
作ってある花束を選んでしまうのは、
ちょっともったいない。


どうせなら、お花を選ぶ状況そのものを大事にしたい。
弔事はなかなかそうはいかないが、
お祝いごとや、お見舞い、送別など、
状況に合って、相手の似合うお花を、
さくっと選べるセンスがほしいなと思う。


本書は贈り物のお花を選べるのはもちろん、
自分の目を癒すためにもいい一冊だ。


お花は贈るのも贈られるのも幸せな気持ちになる。
お花を贈り合える関係が何よりもうれしいのかもしれない。


お別れの言葉が上手くいえないときは、
お花に代弁してもらうように、
花言葉で選ぶのもいいのかも。


さよならを惜しむ気持ちは、
言葉や態度だけでなく、
お花の力という形で伝えても伝わるのだなと思う。


花束を抱えて電車に乗って一人で帰るのは、
少し恥ずかしいかもしれない。


だけど、花束をもらえないで帰る道のほうが、
淋しい日だってある。


さよならを伝えようと思っている人に、
感謝を伝えたい人に、
ぜひ、お花を贈ってみてほしい。


わずかな時間で枯れてしまうものだとしても、
お花には、他の金品を贈ることよりも、
ずーっとかけがえのない、
温かい気持ちが込められている。


それは、お花が枯れても消えない、
ほんとうにほんとうにたいせつな、
人の心の通い合いなのだと思う。


さよならを伝えようとしているあの人に、
その人のためだけの、お花を選んでほしいと思う。


お花を贈ったり、
お花をもらえたり、
お花が行き交うような、
そういうひとでありたいと思う。


花束がある風景で、
さよならを言いたい。


では、また。