お別れの準備

こんにちは、検索迷子です。


年度末のせいか、自社でも取引先でも、
打ち合わせの時には組織変更や、人事異動の話が話題に上る。


既に内示を受けた人からは、
引継ぎの準備をしていますとか、
自社に出向で来ていた人も戻ることが決まりましたとか、
後任者を紹介されたりとか、
にわかに周辺が慌しい。


なかには、本人だけが知らされていない人事異動の話や、
聞いたけど聞かなかったことにしておかなくては、
という話もある。


それがどんな話であれ、
人が入れ替わる時期がそろそろ本格化する。


一緒に仕事をしていて相性が良くない人ならば、
少しほっとすることもあるが、
毎日一緒に仕事をしていたり、
ときどきではあっても会うたびにいい刺激を受けていた人と、
物理的に離れるのはやはり残念な気持ちがする。


今日もたまたまエレベーターに乗り合わせた人から、
来月から別のところに移りますと聞かされた。
その人が、もともと期間限定で、
今月いっぱいで今のプロジェクト参加が終わるというのは、
半年以上前から知っていた。


でも、やはりその日が近づくと複雑だ。
特に、今最もいい影響を受けて、
感性が近く、共感することも、
真似をしたくなるようなふるまいも多く、
人格も素晴らしい人だった。


ああ、こういう人は、どこにいっても重宝がられて、
どんどん新しいプロジェクトを請け負って、
新しいステージに送り込みたいと上司は思うだろうなというほど、
仕事のできる人だった。


短期間ではあっても、
そういう人と仕事をできたのは喜ばしいことで、
どかんと影響を受けたというよりは、
最初はあまり気づかなかったけれど、
低姿勢ななかにも、日々の行動、言動、姿勢そのものに、
じわじわと教わることが多かった。


ビルも移り、プロジェクトも変わるから、
これからは接点もほとんどなくなるだろう。


どちらかが退職するという状況ではないだけに、
大げさな送別会とか、お別れの挨拶とかはないまま、
軽くおつかれさまという程度で今月が終わるのかもしれない。


個人的な話などはほとんどしたことがはないが、
取引先に一緒に打ち合わせに行くために、
並んで電車のシートに座り、
ずっと話していられるほどには話がしやすい人だった。


こういうビジネスライクのつきあいがうまくいっている人ほど、
実は、知らないうちに、なんとなく別れていて、
会わなくなっていることが多い。


意識して会わなくなるのではなく、
それぞれが、それぞれの一番新しい環境に適応しているあいだに、
過去のプロジェクトごと、
過去の仕事仲間は連絡がとるきっかけを失くして、
そのまま時間が過ぎてしまう。


今の仕事で、これはうまくやれないかなと思ったとき、
この人だったらこういう行動をとるのではないか、
と参考にしているくらい、
影響を受けた人だっただけに、
最後のときにはせめてお礼をしっかり伝えたいと思う。


残された時間を充実させて過ごし、
せめても自分も忘れられない一人になりたいと思う。


お別れの準備をしなくては、と自分に言い聞かせている。
そういう、別れが惜しくなる人と仕事ができて、
本当にラッキーだったと思う。


でも、本人から聞けてよかった。
それに、最終日いきなりとかではなくてよかった。


お別れの心の準備をしておこうと思う。


自分が出て行くことはたくさんあったが、
人を送り出すということは少なかったかもしれない。
意外と、心が乱れるものだと思った。
やっぱり、受けた影響は大きかったのだと、
あらためてその人の存在感を実感した。


誰にとっても、
そういう送り出すお別れのつらさはあるのだろうと、
3月という時期の残酷さをしみじみと感じた。


では、また。