スピーチの天才100人

こんにちは、検索迷子です。


人を引きつける話し手とはどんなテクニックを使っているのだろう、
そんなことを考えながら、
『スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方』、
サイモン・マイヤー、ジェレミー・コウルディ著を読んだ。

スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方

スピーチの天才100人 達人に学ぶ人を動かす話し方


サイモン・マイヤーは、スピーチライターとして、
スピーチコミュニケーションのエキスパートのようだ。
ジェレミー・コウルディは、世界の大手企業の幹部の指導を行っている。
つまり、それなりに権力のある人が、
より大きな影響力を持った話ができるようにサポートしている、
話し手の指導者である二人による本だ。


登場する100名は、現役の政治家など、よく知っている人もいれば、
歴史上の人物として名前をかろうじて目にしたことがある人など、
時代もスピーチの背景もさまざまだ。

日本人で唯一選ばれたのは、小泉純一郎元首相


日本人では唯一、小泉純一郎元首相のスピーチが取り上げられていた。
日本の書籍ではないことを考えると、
100人の中に選ばれていること自体が凄いことである。


小泉元首相のスピーチは、2005年9月15日の国連でのものである。
本書は、印象的だったスピーチを数行紹介し、
登場人物の経歴や活動に触れるところから始まっている。


そして、そのスピーチをベースとして、
当人のスピーチの特色を数点挙げている。
特色として挙げている点は、スピーカー個人の個性の部分でもあるし、
他の人たちがスピーチの参考とできるポイントとしても読める。


たとえば、小泉元首相については次のような項目があった。
・自分らしいスタイルを築く
・装飾抜きに、単刀直入に話す
・共有できるゴールを示す
といった内容で、該当スピーチを解説したり、
スピーチ内容をさらに補ったりしながら、
その人の行動スタイルや思想などを紹介している。


小泉元首相の部分についても、納得できる部分が大きく、
聴衆としてただなんとなく演説を耳にしていたときよりも、
もっと、理解が深まるような解説になっていた。

スピーチの効用


本書のはじめにの部分では、スピーチの効用や、
素晴らしいスピーチを行うことには意味があることが書かれている。


良いスピーチは、人を行動に駆り立て、心を温め、
前向きな気持ちにさせてくれると言う。


スピーチを通して社会に影響力を持ち、
一人ひとりや社会の記憶に永遠に残っていくのが、
優れたスピーチなのだとしている。


ただし、本書では善人ばかりが登場するわけではなく、
あえて、アドルフ・ヒトラーのような、
高度な演説力によりドイツを戦争に向かわせたスピーチもある。
それは、よくも悪くも、
スピーチが持つ影響力の大きさを知らしめるためであるようだ。


登場人物が著名人ばかりのためか、
一市民の自分たちには無縁のようなスピーチと思うかもしれないが、
たった一人のスピーチが、他の人の心を揺さぶり、
行動を変え、時に世界を変えていくのだというのを知ると、
どんな改革も、言葉を発する人の存在から始まるのだという基本的なことに気づく。


大それた行動でなかったとしても、
人の言葉は人を動かす力を持つのだと知ると、
人に思いを伝えることが本当にたいせつなことだとわかる。


スピーチのコツやポイントとして読むには、壮大な内容ばかりだが、
なぜ、人がこの人に賛同して支持していたのかと足跡をたどるだけでも、
本書は十分に面白い。


熱い思いも、怒りも、願いも、
何か心を震わすような感情は、
たった一人の言葉から始まるのだと思った。


スピーチの天才100人から、
たった一つでも自分のなかに取り入れられれば、
それは素晴らしい伝える力になるような気がする。


この時代に生きて、この人のスピーチを聞けたことが、
かけがえのない思い出や転機になるものも、
この一冊には凝縮されているのだろう。


大勢の人を動かす影響力を持つ話し方なんて、
そうそう出来そうにないけれど、
ごく少数だって、自分が伝えていけることはあるのだと思う。


いいスピーチだったと言われるような、
深みと厚みのある人間になりたいものだ。


では、また。