みんなちがって、みんないい

こんにちは、検索迷子です。


震災後、ACジャパンのCMで、
金子みすゞ(かねこ・みすず)さんの詩『こだまでしょうか』を繰り返し見て、
この詩が気になった人も多いだろう。
UAさんによる朗読の独特のトーンも手伝い、
言葉がひとつひとつ耳に残る印象的なCMとなっている。


ACジャパンのホームページでは、このCMのページが動画でも閲覧できる。
全国放映だと思っていたら、東京地域限定のキャンペーンのようだ。
ACジャパン - 東京地域限定のキャンペーン『こだまでしょうか』



このCMをきっかけに、
金子みすゞさんの詩集や、電子書籍に注目が集まっているようだ。


私もあらためて金子みすゞ詩集を手にしてみた。
金子みすゞさんは童謡詩人として活躍されていたが、
若くして自ら命を絶っている。
Wikipedia - 金子みすゞ


松たか子さん主演により、その生涯がドラマ化されたTV番組『明るいほうへ明るいほうへ - 童謡詩人金子みすゞ』もある。


金子みすゞさんの生涯については、『金子みすゞ ふたたび』の本が詳しい。

金子みすゞ ふたたび

金子みすゞ ふたたび


著者である今野勉(こんの・つとむ)さんは、テレビディレクターとして、
1996年にNHKスペシャル『こころの王国〜童謡詩人金子みすゞの世界』で、
芸術選奨文部大臣賞を受賞されている。



金子みすゞさんの詩をあらためて読む


金子みすゞさんの詩は、吐息のような、ため息のような、
なにかせつなくなるようなものが多いような気がしている。
生きることに対して、積極的にというのとは真逆で、
静かに今をみすえて、たんたんとしているという感じだろうか。


強い言葉ではなく、静かな柔らかい言葉で表される感情は、
常温の水のように体内に入ってくるようだ。


私が気に入っている一遍、『私と小鳥と鈴と』をご紹介したい。
詩集は、次のものを参考にした。
金子みすゞ こころの宇宙』矢崎節夫(やざき・せつお)著

私と小鳥と鈴と
         金子みすゞ


私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面(じべた)を速くは走れない。


私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴のように、
たくさんな唄は知らないよ。


鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。



金子みすゞ こころの宇宙』矢崎節夫(やざき・せつお)著


私と比べる対象が、生き物同士である小鳥だけでなく、
鈴、というモノが入っているところや、自分との違いを比べているところが、
なにかはっとさせられる。


命あるものだけでなく、命がないものと私との違い。
それを考えたことなんてあるだろうか。


生き物であろうと、道具や物であろうと、
この世に形のあるものは何か長所があり、
他のものにはない独自性がある。


自分は自分だから、ありのままでいい、
それでいいんだという、強い自己肯定ではなく、
もっと静かに、ほかのものと自分の違いを認めている感じの詩だ。


あれとも、これとも私は違う。
そして、それでいいんだと思わせてくれる。


みんなちがって、みんないい。


がつがつと突き抜けていくというより、
現状を受け止めて生きていくという気持ちになる。
あなたはあなた、私は私と。


鈴の音や、小鳥のはばたきといった、
人間としてできないこととあえて比較しながら、
私は私なんだと認めながら生きていく。


そして、人だからすごいんだという、
何かを見下すような優位性はこの詩からは強く感じない。
人だけができることも書かれているけれど、
鳥や鈴のすばらしさのほうが引き立つように思う。


自分が叶わないものと比較しながら、
それでも私は私なのだと知っていく、
そこでこの詩は閉じている。
押し付けがましく、表にでるような言葉ではないゆえに、
私は私なんだと心のなかで対話するような詩だ。


静かに、心に問いかけたい。


みんなちがって、みんないい。


では、また。