起業術のはじめの一歩

こんにちは、検索迷子です。


起業に関するビジネス書の名著、と言われる一冊を読んだ。
それが、マイケル・E・ガーバー著、
『はじめの一歩を踏み出そう −成功する人たちの起業術』だ。

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術

はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術


この時期、全てを失い、再生を目指す方も多いだろうが、
起業なんてずっと先のことと思うかもしれない。
生きるだけで精一杯のときにビジネスなんて、
まして儲ける仕組みなんてと思うかもしれない。


でも、本書は何も営利組織に限らず、
たとえば今、支援に向けて活動されている人たちや、
活動しようとする人たちにとっても行動指針となる考えもある。


失ったものから立ち上がり、壊れかけた日常を取り返すために、
この先何をすればいいのかというステップを考える時間は、
起業視点だけでなく、心のありようとして未来志向の気持ちをくれる。


何でもいい、絶望的なこの状況から立ち上がる方法を見つけたり、
行動の背中を押してくれるような言葉を探したいと思った。


起業をするということは、ゼロから何かを生み出すことだ。
行動しようとまずは意志を持っていくことだ。
じっとしていては、何も変わらない。
ゼロから何かを生み出せる人になるために、何が必要なのか、
そういった見方をしながら読むことができる一冊だと思う。


スモールビジネス版「金のなる木」のつくり方


本書がどれくらい支持された本かというのは、カバー裏の解説に記載がある。

25,000社以上のコンサルティング経験に基づく長年のノウハウを初公開した本書は、発売以来、米国の起業家たちから熱狂的に支持されている。世界20か国で翻訳され、100万部を超える隠れたベストセラーである。米・ビジネス誌「Inc.」が行った成長企業500社のCEOへのアンケートでは、ビジネス書NO.1に選ばれた。アメリカの起業家たちに最も影響を与え続けているバイブル的な一冊。

いささか大げさなという感じもするだろうが、
この本は、コンサルタントとパイ専門店の経営者の会話調の親しみやすい文体のなかに、
経営に必要なエッセンスや事例を余すところなく盛り込んでいる。
そのため、難しい話もすんなりと受け止めることができる内容となっている。


なお、「スモールビジネス」とは、大辞泉によると次のような意味だ。

スモール‐ビジネス
《(和)small+business》ニューサービス(人材派遣など)、ベンチャービジネスソフトハウス・新テク商品など)の登場で、これまでの大企業・中堅企業・中小(零細)企業といった規模分類だけでは優劣判定ができなくなったのに対応して、優良中小、ベンチャーを合わせて呼んだもの。


また、「金のなる木」とは、
ボストンコンサルティンググループが提唱した、
PPM(プロダクト・ポートフォリオマネジメント)のなかの1つであり、
シェアは高いが成長率は低い安定利益を確保する事業のことである。
つまり本書は、スモールビジネスの核となる安定的な事業を作るヒントが、
満載ということが紹介分の意図だろう。

@IT情報マネジメント - プロダクト・ポートフォリオマネジメント

本書の内容からいささか脱線したが、次からは内容で気になったことを取り上げる。

起業に成功する条件


起業に成功する条件ポイントは4つあるという。本書では、この4つのポイントを、
各章に分けて説明している。
1.大半の起業家が失敗に終わる理由を知る
2.成功率の高いフランチャイズビジネスから学ぶ
3.一流企業のように経営する
4.毎日の仕事で実践する


著者は、起業のサクセスストーリーが美化される様子を、
Entrepreneur(アントレプレナー:起業家)のMyth(神話)と呼んでいる。
本書の原題『E-Myth』はそこからきているらしい。
そして、この神話の誤解は、事業の中心となる専門的能力があれば、
事業を経営する能力が備わっているというところからきているという。
つまり、専門性と経営能力は分けて考えるべきだということだ。


そして、「起業家」「マネジャー」「職人」という三つの異なる人格を、
経営者が合わせもつことの矛盾とその対処の仕方を、
会社の成長する時期に合わせて使い分け、人をまきこみながら発展をさせていく方法を
書いている。

成功へのカギ


フランチャイズビジネスから学ぶといっても、フランチャイズを推奨しているのではない。
自分がいなくても儲かる仕組みを作る、ということのようだ。


その例として、
マクドナルド兄弟が経営するハンバーガーショップの効率的な店舗経営に目をつけた、
マクドナルドの育ての親となったレイ・クロックの視点が描かれている。
レイ・クロックは、マクドナルド兄弟に独占的フランチャイズ展開の権利の説得に、
12年を要したらしい。


レイ・クロックはハンバーガーを売る店を手に入れたのではなく、
事業をパッケージ化するという発想を、彼は買ったことになるのだ。

事業の試作モデルに必要な六つのルール


フランチャイズビジネスのように全国何千箇所で展開するためには、
という視点から六つのルールがあるようだ。
これは、何千という単位でなくとも参考になる。

1.顧客、従業員、取引先、金融機関に対して、いつも期待以上の価値を提供する。
2.必要最低限の能力でもうまく経営できる。
3.秩序だてて組織が運営される。
4.従業員の仕事内容はすべてマニュアルに記載されている。
5.顧客に対して安定した商品・サービスが提供される。
6.建物や設備、制服についてのルールが定められている。


さらに、自分がいなくても事業が動くしくみについて、次の記載がある。

他の人に任せてもうまくいくような事業をつくろう。
どこでも誰でも、同じ結果が出せるような事業の試作モデルをつくるところから始めよう。
事業とは、あなたとは別の独立した存在だ。それはあなたの努力の成果であり、特定の顧客のニーズを満たす機会であり、あなたの人生をより豊かにする手段である。
事業とは、多くの部品から構成されたシステムであり、ライバルとは明確に差別化されたものであり、顧客の問題を解決するものである。
そして、次の質問を自分自身に問いかけてほしい。


・どうすれば他の人に任せても、事業が成長するだろうか?
・どうすれば自分が現場にいなくても、従業員は働いてくれるだろうか?
・どうすれば事業をシステム化できるだろうか? システム化された事業では、五千ヵ所に店を出すとしても、一ヵ所目目と同じことを繰り返すだけで、スムーズに出店できるはずである。
・どうすれば自分の時間を確保しながら、事業を経営できるだろうか?
・どうすればやらなければならない仕事に追われることなく、やりたい仕事に時間をあてることができるだろうか?

成功するための7つのステップ


事業の試作モデルを完成させるための考え方が、事業発展プログラムとなる。
これには、3つのルールと、7つのステップがあるようだ。

ルール1.イノベーション(革新)
イノベーション」と「創造」を混同する人が多い。しかし、ハーバード大学のセオドア・レビット教授が指摘しているように、両者の差は実行するかどうかにある。彼は「創造とは新しいものを考え出すことである。イノベーションとは新しいものを実行することである」と言っている。

実践1 声のかけ方を工夫してみる
実践2 服装を変えてみる
実践3 ジェスチャーを変えてみる

ルール2.数値化
成果を上げるためには、イノベーションがどれほどの効果を上げるのかを、数値として把握することが必要である。

ルール3.マニュアル化


そして、事業発展プログラムの7つのステップは次のものだ。

ステップ1.事業の究極の目標を設定する
ステップ2.戦略的目標を設定する
ステップ3.組織戦略を考える
ステップ4.マネジメント戦略を考える
ステップ5.人材戦略を考える
ステップ6.マーケティング戦略を考える
ステップ7.システム戦略を考える

システム戦略のシステムとは

システムの定義は、次のようである。

システムとは、相互に作用するモノ、行動、アイデア、情報の集合体である。そして相互作用を繰り返す中で、他のシステムへの働きかけも行う。要するに世の中すべてがシステムである。
(中略)
それでは企業のなかにあるシステムを見てみよう。
企業には、ハードシステム、ソフトシステム、情報システムの三種類がある。
ハードシステムは、いわゆる「モノ」である。私の机やその上に置かれている電話機はハードシステムである。
ソフトシステムは、ひとことで言えば「考え方」である。これまでに紹介した業務マニュアルやホテルの管理システムもソフトシステムの一つである。
情報システムは、ハードやソフトのシステムについての情報をていきょうするもので、会計や在庫管理のシステム、営業担当者の活動記録などがその例であう。
事業発展プログラムでは、イノベーション→数値化→マニュアル化の作業を行うだけでなく、三種類のシステムを統合しなければならない。


さらに、販売システムについては次のようなことである。

販売システムとは、あなたと顧客の間のやりとりをマニュアル化し、次の六段階にまとめたものである。
1.販売プロセスの中で、顧客の意思決定に影響を与える重要なポイントを見つけ出す。
2.ポイントごとに、顧客の心をつかむための脚本を作成する。(演劇のような脚本をつくってみるのだ!)
3.脚本に必要な資料や道具を準備する。
4.脚本を暗記する。
5.営業担当者にも脚本が演じられるように教育する。
6.顧客に合わせて脚本が変えられるようになるまで教育する。


台本は以下のステップから構成される。
1.アポイントメントをとる。
電話をかける目的はもっと単純で、会う約束さえ取り付ければ十分なのである。アポイントを取り付けることで、次のステップである顧客ニーズ分析に進むことができる。
そのため、このステップでは、商品の説明をするよりも、商品のもたらす「価値」について説明し、顧客の無意識に働きかけねばならない。


2.顧客ニーズを分析する。
二つのことを話して、見込み客の心の中に信頼感を気づかねばならない。一つ目は、自社がこの分野に専門性をもっているということ。二つ目は、その力を喜んで提供したいという態度を見せることである。

そして、アンケートを一緒に答えてもらい、専門分野の最新動向を話し、アンケートを元とした報告書をもっていく日時の約束をすることで完了する。そのときに、価値のある無料の解決法をもっていくこと、解決法を理解するためのサポートを惜しまないことを付け加えるのがポイントである。


3.解決方法を提案する。
見込み客から不満を聞きだし、アンケートを分析することで、不満を解決する能力があることをアピールしている。ここでは、問題点の指摘、解決策の提示といった報告書の内容を詳しく説明して、「ここで私たちがご提案した選択肢の中で、どれが御社向きだとお感じですか?」そして答えを待つ。めでたく顧客になってくれるのなら、関心のある問題について質問が投げかけられることになる。あとは契約を交わすだけである。

販売なくして、事業の発展はないのだとつくづく考えさせられる部分である。


仕事の前に自分に問いかける


次の質問は、起業をする人だけでなく、働いてる人なら誰でも、
自分自身に問いかけをしてみるとよさそうな気がする。

普通の人と功績を残す人の違いは、人生を受身の姿勢で過ごすことと、自ら人生を切り開こうとすることの差だと私は信じている。
事業を立ち上げる前に、または明日の仕事を始める前に、次の質問を自分に問いかけてみてほしい。

・私はどんな人生を過ごしたいと思っているのか?
・私は毎日どんな生活を送りたいのか?
・人生の中で何を大切にしたいのか?
・自分以外の人たち−家族、友達、仕事仲間、従業員、地域社会−とどのように関わっていきたいのか?
・自分以外の人たちから、どう思われたいのか?
・二年後、十年後、二十年後、そして人生が終わりに近づいたときに何をしていたいのか?
・精神的な充実、金銭的な豊かさ、健康的な生活、知識の探求、技術の習得、人間関係の豊かさ、人生の中で何を追求したいのか?
・夢を実現するためにはどれくらいのお金が必要か? いつまでに必要か?

顧客との約束を実行する


マネジャーが管理する4つのチェックポイントがある。

一つ目は、それをどう実行するのか?
二つ目は、それを実行するために、どのようにして雇用して、教育するのか?
三つ目は、それをどう管理するのか?
四つ目は、それをどう変えるのか?

「それ」とは、顧客との約束のことだよ。


つまり、約束に向けて実行できているかがキーとなる。
どういう価値を提供するかという、企業理念とも言える約束が、
本当に果たせているかと言うことだ。
本書の例ではないが、「うまい、安い、早い」を売りにした事業なら、
それができているかということだろう。


安定とは程遠い、それを楽しめるか


起業に向けて夢が膨らんだ人は、著者が最後に書いている、
「あなたの選んだ起業家の道は、決して平坦なものではありません。また、安定とはほど遠いものでしょう。だからこそ面白いのです!」
という言葉をどう受け止めるだろうか。
いろんなポイントを見ながら具体的なイメージができたところに、
やっぱり現実はたいへんだと、焦点をそこに戻して冷静にさせてくれる言葉だと思った。


事業だけでなく、停滞した状況のなかで行動を起こすことは、
それが何であっても安定からはおよそかけ離れている。
それでも行動するか、楽しんでいけるか。


はじめの一歩を、今、踏み出すことができる自分かどうか。
本書を読みながら、あれこれを思いをめぐらせていた。


いろんな言葉や手法から刺激を受けて、
それを身近なところから試してみるのが今できることかもしれない。
大きく跳ぶより、小さな一歩だっていいのだと思う。
できることを一つずつ。それが自分にとっての一歩めになればいい。


では、また。