ハーバード流交渉術

こんにちは、検索迷子です。


交渉ごとをすることが増えて、
自分がいかに何も考えずに人に依頼したり、
対話をしてきたかと痛感している。


それは、結果が思わしくなかったり、
プロセスがいただけないものだったり、
導入がまずかったりと、さまざまだ。


少し体系的に学び、冷静に交渉というものを考えたくなり、
『新版ハーバード流交渉術』を読んだ。
ロジャー・フィッシャー、ウィリアム・ユーリー、
ブルース・パットン著によるものだ。

ハーバード流交渉術

ハーバード流交渉術

  • 作者: ロジャーフィッシャー,ブルースパットン,ウィリアムユーリー,Roger Fisher,Bruce Patton,William Ury,金山宣夫,浅井和子
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 単行本
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本書の原題は、
『GETTING TO YES - Negotiating Agreement Without Giving In』で、
日本語でもなじみ深くなった、ネゴシエーションに関する本である。


この本はもともと、
以前、気弱な人の交渉術でとりあげた、
谷原誠さんの『弁護士が教える気弱なあなたの交渉術』に出ていた本の新版である。
もともとは1982年発行で、その新版として1998年に発行されてものだ。



ネゴシエーションと言えば、政治的交渉などの、
一部の特殊な人が使う高等テクニックという印象だった。
でも、私たちは生活のいたるところで誰かと交渉をしているのだ。


順番を譲ってもらったり、何かを買ったり、
ちょっと何かを取ってもらったりと、
ごく普通に誰かに何かをお願いしている。
だけど、こういうことというのは利害関係とか金銭とか、
契約とか体面とか組織とか、大げさなものが絡まないゆえに、
そんなに恐れずに頼める。
問題は、もう少しやっかいな案件だったりしたときだ。


駆け引きというと言葉が汚いような気がして、
何かいやな感じがした。
まさに、大人の世界というか腹黒いというか。
でも、これは結果を導きだすための、ちょっとした工夫なのだと
思えば、言葉の言い回しや会話の順番のコツとして、
体得できればきちんと使えそうだと思うようになった。


正直に、ストレートに、直球で、
それだけでは物事は締結しないのだと思うことが増えた。
だからこそ、交渉の仕方をもっと身につけたいと思った。


あらためて、交渉って何だろうと考えてみると、
そのイメージが漠然としていることに気づいた。

ハーバード流交渉術とは


本書の最初には、交渉者が立場をめぐって駆け引きするとき、
いったん出した自分の出した立場に縛られ、かえって身動きが
とれなくなるとしている。
つまり、立場で論争すると解決を損なうということだ。


交渉というゲームは、
2つのレベルで行われる点も知っておいたほうがいいようだ。
1.実質事項の交渉(価格とか条件など)
2.実質事項を扱うべき手続き(交渉の仕方−ハード型か、ソフト型かそれ以外か)


単に内容だけを交渉するのではなく、特にこの二つめの、
交渉の仕方に着目して交渉というゲームをどう進めるかがポイントとなる。


立場の駆け引きでは、ハード型(強硬な)、ソフト型(穏やかな)の
いずれかである場合、そのどちらにも問題が伴うと指摘している。
そして、交渉の別のやり方を提案している。
ゲームのやり方を変えよということだ。

立場で駆け引きするな


ハーバード大学交渉プロジェクトにおいて、立場の駆け引きに代わるべきもの、すなわち、賢明な結果を効果的かつ友好裏にもたらすべく設計された交渉方法を開発してきた。
この方法は、原則立脚型交渉principled negotiation または、利益満足型交渉negotiation on meritsと呼び、次の四つの基本点に集約することができよう。

原則立脚型交渉principled negotiationの基本点


原則立脚型交渉について、4つの基本点を挙げている。

人……人と問題とを分離せよ

利害……立場でなく利害に焦点をあてよ

選択肢……行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ

基準……結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ


さらに列挙されている事項は次の内容だ。上記4つはそのうちの
最大ポイントである。

・参加者は問題の解決者である。
・目的は効果的かつ友好裏に賢明な結果をもたらすこと。
・人に対しては柔軟性をもち、問題に対しては強硬に
・信頼するしないとは無関係に進行する
・利害を探る
・最低線を出すやり方を避ける
・双方にとって有利な選択肢を考え出す
・意志とは無関係な客観的基準に基づいて結果を出す
・理に説き、理には耳を傾け、圧力でなく原則に合わせる

本書内では、この要素がハード型とソフト型交渉との対照表となっており、
その違いが一覧できる。
交渉の舞台にあがる双方にとって、原則立脚型交渉の手法は、
最善な結果を導き出すために協力しあう姿勢であることがうかがえる。


賢者の贈り物の悲劇


本書内でソフト型交渉による、おだやかさだけでは最善の結果が得られない、
という事例として、
O・ヘンリーの『賢者の贈り物』のエピソードが取り上げられていた。

賢者の贈り物 (オー・ヘンリーショートストーリーセレクション 4)

賢者の贈り物 (オー・ヘンリーショートストーリーセレクション 4)


貧しい夫婦がお互いのクリスマスの贈り物のために、
妻は自慢の髪を切って夫への懐中時計の鎖を買い、
夫は懐中時計を売って妻への櫛を買ったという話である。


これを交渉という視点で見るなんて新鮮なことだと思った。
エピソードが相手への思いやりにあふれる話かどうかは脇においておくと、
たしかに相手のために良かれと思ってやったことが、
結果的に双方にとって無意味な結果となっている。


双方が思い込みによってとった行動が、
もともと大切にしていた、髪や懐中時計を失わせてしまっている。
これが、もし事前に話し合われていたら違ったかもしれない。
賢者の贈り物のようなことは、日常でいくつも起きていそうな気がした。
お互いが最も望んでいない、ずれた結果を招いてしまうような行動で、
間違った結果に進んでしまうようなことが。


交渉上手となるには、まだまだ遠い。
だけど、交渉の仕方にも気をつけていく必要があるとわかるだけで、
何か、少しだけ変化が訪れそうな気がする。
交渉術については、もう少し他の本も読んでみたいと思う。


では、また。