脳を活かす仕事術(4)

こんにちは、検索迷子です。


茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)さんの『脳を活かす仕事術−「わかる」を「できる」に変える』の感想の続きを書きます。
過去3回書いていますが、
取り上げたい内容のエッセンスが一つひとつ違うため、
思いのほか回数が増えてしまいました。
脳を活かす仕事術(1)
脳を活かす仕事術(2)
脳を活かす仕事術(3)

脳を活かす仕事術

脳を活かす仕事術


身体を動かして集中する


茂木さんは本書のなかで、ITの発達により、
メールや携帯電話で自分がやろうとする作業が中断される状況は、
もはや日常化しているため、集中できる環境は難しいと書いています。


そして、分断されたために集中力が途切れることに落ち込むより、
その対処の仕方として、少しでも空いた時間に集中する方法を挙げています。

前著『脳を活かす勉強法』でも紹介した「瞬間集中法」が有効です。「瞬間集中法」とは「10時ぴったりになったら集中して仕事に取り組もう」と待つのではなく、思い立ったその瞬間にいきなり集中して始めてしまうこと。
たとえばメールの返信をする時は「何と返事をしようかな……と」頭の中で考えるのではなく、いきなり書き始めてしまうのです。また、すきま時間には、ペンなどの道具を持ち、書類チェックなど、具体的に身体を動かす活動を行うのが効果的です。
身体を動かさずに「書類の内容をどう書こうか」といった思索を巡らしていると、感覚系が周囲の情報を入手しようと働き始めてしまい、集中力が散漫になってしまうのです。

脳を活かす勉強法 (PHP文庫)

脳を活かす勉強法 (PHP文庫)


私自身、これはものすごく思い当たります。
何かするまえに、ちょっと考えあぐねているうちに、
あれこれ脱線してしまう。
そうすると、余計に集中できなくなっていることに気づきます。

深く考えたい時は、いつもの道で

逆に、深く考え事をしたいときは、次の方法がいいようです。

深く思索したい時には、いつもの通勤路を歩きながら考えるのが効果的です。通い慣れた道なので、感覚系の情報がはいってくることが少なくなるからです。哲学者の西田幾多郎は、考え事をする時はきまって琵琶湖疏水(そすい)を歩いていたそうです。この道は、別名「哲学の道」としても有名です。

Wikipedia - 西田幾多郎

西田 幾多郎(にしだ きたろう、1870年6月17日(明治3年5月19日) - 1945年(昭和20年)6月7日)は日本を代表する哲学者であり京都大学教授、名誉教授。京都学派の創始者

西田幾多郎が散策した琵琶湖疏水沿いの道は「哲学の道」と呼ばれ、日本の道百選にも選ばれている。

集中力を鍛えるために

とにかく、やると決めたらすぐ始めるを繰り返すことがいいようです。

人間の集中力を司る回路は、ワーキングメモリと同じ前頭葉があります。この回路も、他の神経回路と同じように、使えば使うほど鍛えられていくという特性をもっています。ですから「とにかく集中してやってしまう」ことを何度も何度も繰り返せば、集中力を鍛えることができるのです。
仕事をやると決めたら一秒後には仕事に集中する、ということを繰り返し、繰り返しやってみてください。これを続ければ、脳の集中回路は確実に鍛えられていきます。
「タイムプレッシャー」を同時併用するのも効果的です。「30分以内にこれを終わらせる」と自分で無理めの契約を結んで、少しずつハードルを上げていけば、ほんのわずかな時間でも集中して仕事ができるようになるはずです。

脳の引き込み現象

自分だけでなく相手を集中させるための例も取り上げています。


他人の話のなかで、特に集中できないものの一つとして、
公的な場での定型文のスピーチの退屈さを挙げています。
なぜ、集中できないかというと、
定型文には、その人の思いや感情といった、
生命力が吹き込まれていない言葉だからとしています。


そして、逆に生きた言葉を話す人の例を挙げています。

ソニーの前会長だった出井伸之さんは、スピーチをする時に原稿を用意することはありません。その場で「思い」を吐き出すのです。それによって、出井さんのスピーチは、生命力に満ちあふれたものとして聞き手の心に響くわけです。
もちろん、「”面白くない”スピーチには心がこもっていない」といいたいわけではありません。しかし、人間の脳は飽きっぽい性格をしているというか、予定調和なものや簡単に予測できるものには、興味を示さなくなるという特性があるのです。

一方で、脳には「引き込み現象」というものもあります。
脳は、予測できる部分とできない部分のバランスが整った「偶有性」に満ちたものや、相手が本気で言っていることなどには、興味や関心、注意を向けます。そして、相手の話にいったん引き込まれると、その状態が続いている限り集中力が持続し、さらにグーッと引き込まれていくのです。
相手の注意を喚起するには、話の内容も大事ですが、実はそれ以上に「どれくらい本気か」「どれくだけ言葉に生命を込めているか」に依存するところが大きいのです。

Wikipedia - 出井伸之

出井 伸之(いでい のぶゆき、1937年11月22日 - )
クオンタムリープ株式会社代表取締役クオンタム・エンターテイメント株式会社社長、ソニー株式会社アドバイザリーボード議長。


集中するのも、集中してもらうのも、
どれだけ短時間で核心にいけるかというスイッチの切り替えみたいな、
そういうトレーニングの連続なのでしょうね。


身体を動かしながら集中する、
相手の脳の引き込み現象を利用して集中してもらう、
言葉で言えばそれだけなのですが、
それが、実はとても地道なトレーニングの積み重ねかもしれません。


集中力が切れてるな、と思う前にさっさと行動すべし、
というところですね。


そして、誰かに思いを伝えるときも、感情を込めて、
真剣勝負でということですね。


集中するって奥が深いです。


では、また。