ワインバーグの本を読む(13)

こんにちは、検索迷子です。


今日は、『コンサルタントの道具箱−勇気と自信が持てる16の秘密』の道具箱とは何かという内容です。
これまで15章の内容紹介を通して、本書の理解の助けになればと法則を中心に書いてきましたが、
あれ、そもそもどうして道具箱がいるのだっけ、
道具箱の16個って何だっけと、入力に没頭するあまり見失いかけたため、
あらためて振り返りたいと思います。

コンサルタントの道具箱

コンサルタントの道具箱

第1章〜第3章
第4章〜第7章
第8章〜第10章
第11章〜第13章
第14章〜第15章

コンサルタントの道具箱とは、それで結局は何か


最後になりますが、本書の副題にある、
「勇気と自信が持てる16の秘密」は、この章のタイトルとリンクしていると思っていたら、
ちょっと違っていたことに途中で気づきました。


本書冒頭に16個あったのですが、
それは各章ごとに一つだったり、二つだったりするため、
あらためてその作ろうとした背景を踏まえて、内容をご紹介します。

どうして道具箱を作ろうと思ったか


まず、ワインバーグはどうして道具箱を作ろうと思ったかという、
本書の対象や目的は何かということからおさらいします。
本書の最後の段階で、この部分を軽く読んでいたことに気づいて、
順番がおかしくなってしまいましたが、あらためて書きます。

あらゆるコンサルタントが、そしてアドバイスをしたり求めたりするすべての人がいつも携えるべきいくつかの大事な道具のことだけを書くことにする。


そして、ピーター・ブロックの本から、
コンサルタントにとって一番大事な人生の教訓のヒントを得て、どんな道具箱を作ろうかと考えたようだ。

私もここでは、率直になり、バランスを保ち、自分を知り、ほかの人とのつながりを大事にするのに得に役に立つ道具だけを取り上げることとする。

オズの魔法使い』から、自信の道具箱の着想


さらに、道具箱の中身を具体的に選定するにあたっては、
家族療法士のバージニア・サティアから教わったものを選んだという。
もともと、バージニアは、フランク・ボームの『オズの魔法使い』から着想を得て、
「自信の道具箱」を作った。

オズの魔法使い (ハヤカワ文庫 NV (81))

オズの魔法使い (ハヤカワ文庫 NV (81))


誰でも持っているもので、弱気になったときは使うのを忘れてしまいがちな知恵を集めたものである。
それは、『オズの魔法使い』の次のようなところからきているようだ。

魔法使いがどうやって、かかしに脳みそを、ブリキのきこりに心臓を、臆病ライオンに勇気を、ドロシーに家に帰る力を与えたか思い出して欲しい。魔法使いの秘密は、みんなが自分にないと思っていたものを実は最初から持っていたことである。魔法使いは、それを思い出させるだけでよかった。

バージニアのこのアイデアを受けて、ワインバーグは自分の道具箱を作っていった。

勇気と自信がもてる16個の秘密


私たちが自信を失くしたとき、
勇気を持ちたいときに、次の16個が気づきを与えてくれるだろう。

知恵の箱
自分にとって何が正しくて何が正しくないかを見分ける能力。知恵の箱がなければ、いつまでも自分の主義に反する仕事や、やる気の起きない仕事をやっていただろう。


金の鍵
新たに学習し、実践する分野への扉を開き、それがいまの自分に合わなければ閉める能力。金の鍵があければ、私はごく限られた分野のコンサルティングをしていたか、関心のなくなった分野にいつまでもしがみついていたかのどちらかだろう。


勇気の棒
新しいことに挑戦し、失敗の危険を冒す勇気。勇気の棒がなければ、私のコンサルティングはブドウゼリーになる。


願いの杖
自分の欲しいものを求め、必要とあらば、それが手に入らなくてもどうにかする能力。欲しいものを求める能力がなければ、交渉をうまく進めることはできない。


探偵帽
「虫めがね」(データを調査し、そのデータについて推理する能力)とセットのときもある。私に分析能力がなければ、依頼主の本当のニーズに応える問題解決人ではなく、標準化された出来合いの答えを渡すだけの「解決問題人」になっていただろう。


エス・ノーのメダル
エスと言う能力、ノーと言う能力、本心を語る能力。心からイエスと言い、心からノーと言えなければ、依頼主の先入観に迎合し、役に立たないアドバイスをしていただろう。


以上の六つが、バージニアから教わった自信の道具箱の中身である。私はその後、いろいろな仲間の助けを借りて道具を加えていき、独自の道具箱を作った。



ハート
仕事に心をこめる能力と意思。私の道具箱にハートを入れるきっかけを作ったのは、仕事仲間のジーン・マクレンドンである。ジーンはバージニアがハートを入れなかったのは、誰でも自分の心にはいつでも手が届くと思ったからだと言う。だが、技術に囲まれて仕事をしてきた私は、時には希望とか、願望とか、恐怖とか、他人への思いやりとかいったものを思い出す必要があると考えるようになった。そんなときには、ハートが助けてくれる。



自分を見る能力。自分に対するフィードバックを求めて生かす能力。人の意見は人間として成長するために重要なものだとわかってはいたが、エディー・シーショア、チャーリー・シーショアとともに『なんて言った?』というフィードバックに関する本を書いて、さらに多くのことを学んだ。人の意見は自分を写す鏡であり、自分が周りの人たちにどんな影響を与えているかを教えてくれる。しかし、さしだされた鏡をのぞき込まなければ役に立たない。


望遠鏡
他人を見る能力。肉眼で見たり頭で考えたりしてもわからない部分までじっくり理解する能力。私の望遠鏡は鏡と組になっていて、自分を見つめるよう促してくれる。


魚眼レンズ
状況判断の能力。自分や他人をとりまき、協力関係に影響を与える要素を見る能力。私が元から持っているさまざまな観察や分析の道具、たいていは本に書いたことがあるが、自分にとっていちばん必要なときに思い出せない道具を使うことを思い出させてくれる。鏡、望遠鏡、魚眼レンズを合わせると、バージニアの調和モデルにある自分、他人、状況を身につけることになる。調和のとれた人間になろうと思ったら、この三つのバランスがとれていなければいけない。


ジャイロスコープ
バランスをとり、持っている道具をすべて使い、調和と安定を保つ能力。私に最初のジャイロスコープをくれたのは父だが、いくら揺らしてもバランスを取り戻すその姿には、今でも引きつけられずにいられない。ジャイロスコープは道具箱に入れるには複雑すぎと思うこともあるが、そんなとこは、人生にバランスを取り戻すことも複雑なのだ、複雑だがいつも努力しなければいけないことなのだと思い直す。



自分の持っている必要なものをすべて使って、成長し、発展し、学習する能力。私は卵を集めていて、石でできたきれいなやつをたくさん持っているが、実は鶏の卵にはアレルギーがある。たぶんこのアレルギーのせいで、誰でも完璧な人間になるために必要な道具をすべて持って生まれているというバージニア・サティの「種」のモデルに、この「卵」を結びつけることがなかなかできなかったのだと思う。行きづまったときには、卵のおかげで、自分で持っていることに気づかなかったいろいろな道具や、自分の道具を選んだり作ったりする能力を思い出すことができる。


カラビナ
安全を確保して意、無用なリスクを避け、そのぶん必要なリスクをとれるようにする能力。登山に縁のない人のために説明しておくと、カラビナというのはザイル(ロープ)をハーケン(岩壁に埋め込むフック)につなぐ金属の輪である。登山者が転落する危険を防ぐためのものである。カラビナを私の自信の道具箱に加えたのは、大の登山好きのリンダ・スワーチェクである。カラビナのおかげで、自分の行動を再確認し、その状況に必要な自信をもって前に進むことができる。


羽根
自分や他人をくすぐって、ものごとや自分のことを思いつめすぎないようにする能力。くすぐることを教えてくれたのは、父のハリー・ワインバーグだが、くすぐるタイミングについていろいろと学んだのは、ずっと後のことである。羽根は「人生は真面目に考えるには深刻すぎる」というオスカー・ワイルドの言葉を思わせる。


砂時計
ためになることをする時間を作り、時間を有効に使う能力。私にとっては、砂時計は忘れがちなので、特に大事な道具である。


酸素マスク
バランスのとれた人生の象徴。自分の呼吸する能力を連想させる。他人を助けようとする前に自分のことをやれという意味である。酸素マスクを道具箱に入れたのは仕事仲間のアイリーン・ストライダーで、飛行機に備え付けの「安全のしおり」にはこう書いてあると教えてくれた。「ほかの人の酸素マスク装着を手伝う前に、ご自分のマスクがしっかり装着され、正常に作動していることを確認してください」。酸素マスクは、自分に万一のことがあって約束を守れなかったときにかえって迷惑となるような手助けを押しつけず、安全な場所、ほかの人たちを助けられる可能性が最も高い場所から手を貸すべきだと教えてくれる。酸素マスクは、ほかの道具を使って、自分を健全に保つためのものである。

補足ですが、ジャイロスコープになじみがない人もいるでしょうから、
以下で画像を見てみてください。
ジャイロスコープのGoogle画像検索の結果



こうした道具箱の一つひとつが、
ワインバーグの人間としての自分を支えてくれるものとなっているという。


コンサルタントの道具箱−勇気と自信が持てる16の秘密』のご紹介は、
ここまでです。



私たちが自信を失くしたとき、
勇気を持ちたいときに、
どうやったら、自分に持っているものを思い出せるか。


オズの魔法使いのような存在は、なかなか出会えないかもしれない。
だけど、自分で道具箱を作っておき、
自信を回復させ、勇気ある行動を起こすことは、少しの工夫でできる。
誰かに、良さを見出してもらうことを待つだけでは人生は始まらない。
誰かのアドバイスに気づける自分であること、その感性がいるのだ。
自分を行動させるものを普段から作っておくことが、
自信を失くしたときには力を発揮しそうだ。


自分が、今よりも先に進んでいくための仕掛けを、常に蓄えておく。
自信を失くしたら、ときどきそっと道具箱を開ける。
ワインバーグの道具箱をヒントに、ぜひ作っておきたいものだ。


何が自分の自信を取り戻し、勇気を与えてくれるのか。
どんな暗闇も、問題に向き合うことで、きっと抜け出せるもののはずだ。
そのために、何が自分にとって必要な道具になるのだろう。


でも、思いつめすぎず。時に、羽根でくすぐりながら。
ジャイロスコープでバランスを見ながら。
金の鍵で、ときどき自分に合わない扉を閉める勇気を持ちながら。


願いの杖をふりかざし、ハートを込めて。
知恵の箱を大きくしていこう。


では、また。