大人のための絵本の本

こんにちは、検索迷子です。


大人になってこそ、良さがわかる絵本がある。
大人だからこそ、子どものころと違った気持ちで読める絵本がある。


もう一度、あの頃に読んだ絵本をと思っても書名を忘れていたり、
なかなか、大人の現実の時間では、絵本のことを普段は思い出さなかったりする。


絵本がくれる、ゆったりとしたおおらかな時間を持ちたい人に、この一冊を。
『大人のための絵本の本』田川ミユ企画・編集の本だ。

大人のための絵本の本 (エンターブレインムック)

大人のための絵本の本 (エンターブレインムック)


100冊の絵本が、表紙と本文箇所の2つの写真と、
150文字程度のあらすじ紹介でコンパクトに紹介されている。



3つのCapterに分かれており、
晴れた日に、つまずいた日に、泣きたい日に、となっている。

泣きたい日に読む絵本


とくに、泣きたい日に、のなかには、
実際の絵本を見たことがあっても、
紹介文を読むだけで思い出して泣けそうになる絵本が詰まっている。
ペットを飼っているせいか、人間以外の生き物に感情がある、
というのがダイレクトに伝わる本はせつなくなってくる。



たとえば、
亡くなった飼い主を探し求め、「目を閉じれば会える」と悲しみを乗り越える、
『いつでも会える』菊田まりこ作・絵。

いつでも会える (ハートフル菊田まりこの絵本)

いつでも会える (ハートフル菊田まりこの絵本)


車から捨てられた犬の心の動きを表した、
『アンジュール ある犬の物語』ガブリエル・バンサン著。

アンジュール―ある犬の物語

アンジュール―ある犬の物語


一緒に遊んでいた子どもと犬の歳をとる速さの違いがせつない、
『ずーっとずっとだいすきだよ』ハンス・ウィルヘルム文・絵、久山太市訳。

ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)

ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)


こういう絵本を見ていると、
言葉の洪水、感情の起伏、伝わる伝わらないというジレンマ、
そんな瑣末なことに心を奪われていることがおかしなことだと思える。
何か、心の芯でとらえるものを見失ってないかなと思う。


気持ちを温めてくれる絵本が、ここに100冊ある。
それを受け止められる大人でありたいと思う本だ。


100冊の絵本を贈るのもいいけれど、この本一冊で伝わる良さもある。
子どもをもつ親御さん向けの本ではなく、
たぶん、大人が自分のために読むための本としてつくられているため、
全体的なデザインもすっきりとしていて好感が持てた。


少ない文字、少ないページ、いくつかの絵。
それだけで、伝わる思いがある。


絵本には、余計なものがない。それがいい。
いつまでも、絵本を読んで時間を忘れる大人でいたいと思う。
絵本を読める自分でいられるのかどうかは、
心の状態を映す鏡のようなものかもしれない。


たった一言に、
心を揺らすことができる感受性を持っているのかどうかということ、
そして、一枚の絵に、どれだけ想像力をふくらませられるか、
手に取るように自分の心が見えてしまう。


では、また。