サポートセンターは企業の顔

こんにちは、検索迷子です。


少し前、自宅のパソコン機器が不調だったため、
そのメーカーのサポートセンターに電話をした。


実はこれまで、サポートセンターに電話をしたことがなかった。
それは、電話をして問合せをするにも、あれこれ専門用語を言われそうで、
なんだか怖がってしまい、電話をすることもなく自己判断していた。


マニュアルをひっぱりだして専門用語と格闘して、
それでもだめだったら、
耐用年数を考えて、これは何年使ったからもういいか、
きっと壊れたんだと納得して買い替えていた。


今回は思った以上に早く壊れてしまったため、
にわかに信じがたく、とりあえず電話をしてみることにした。
それに、以前よりインターネットやパソコンに対する専門用語に慣れてきて、
たぶん、何を聞かれてもおろおろしなくなってきたことも大きい。


以前の自分だったら、ケーブルがと言われただけで、
え?どれ?この白いコードのことかな、ん、この黒いやつ?
リセットボタンってどれ?
みたいな慌て方だったような気がする。



電話をしてみて、結果的に買い替えるしかないという結論になったのだが、
なぜか、気分はすっきりした。


電話をして、問われることに答えて、
修理か買い替えかということになり、修理代金の見積もりと、
最新モデルへの買い替えでどの機種がいいかの相談に乗ってもらった。
メーカー直販サイトでの販売料金も教えてもらい、
電話のあとすぐに、自分でその直販サイトよりも安く買える、
商用サイトを見つけて購入手配ができた。


思えば、こういうパソコン周辺機器がこれまで壊れたときは、
数日様子を見て、電源を入れなおしたりして、
本当に壊れたのかなぁと思いながら、未練がましく放置していた。
気がつけば数か月、次に急いで使う時まで、忘れたことにしていた。
時間をおけば直るみたいに楽観していたのかもしれない。
でも、直ったためしなどなく、ただ不便なだけだった。


今回は、壊れたと思ってから、
自分で対応を一通り試して、コールセンターに電話して、
新しい機種を注文するまでわずか数時間だった。
知ってる人に聞けば早いものだなとつくづく思った。


特に自分で調べても調べようがない、
サポートガイドの冊子や、サポートサイトなどに事例がないものは、
聞いて解決するほうが早いと思った。


サポートセンターを大切にする企業


私は、かねてから、ものづくりの仕事をするうえで中核となる仕事は、
お客様の声を直接聞く部門だと思っている。


たとえば、サポートセンターやコールセンター、
カスタマーセンター、お客様相談係、お問合せ窓口、
名称はいろいろあるが、こうした部門で働いている人をとても尊敬している。


なぜかというと、
お客様のクレームに直接向き合う窓口として、
ストレス耐性が必要な面もあるが、
何よりもお客様の問題解決のナビゲーターになってあげられる、
心強い味方となるからだ。


また、日々の事例を通して、肉声を通して、
お客様の態度や声音、怒り具合、困り度合いを通して、
自社製品に何が求められて、何に問題があるのかという実態を吸い上げてくれるからだ。
それを現場にきちんと還元してくれるのが、本当に参考になる。


私自身、ものづくりの仕事をしてきて、
サポートセンターのスタッフにとてもお世話になっている。


企業の体制にもよるが、
サポートセンターならではの意見の吸い上げる相手は、おもに一般のお客様の声だ。
コンシューマー、消費者のみなさんの声、そのものだ。


法人などの組織は主に営業を中心として対応することが多いため、
こちらは、営業担当との関係性に依存することも多い。
そうした営業を直接的にしていない、個人のお客様の声は、
いろんな気づきをくれる。
利害関係がないゆえに、クレームもダイレクトで、
言葉も選ばなかったりするきついお叱りもある。
こうした、声をじかに受けるサポートセンターで働く方たちは本当にたいへんだと思う。


私が最もサポートセンターを大切にしているのは、
お叱りも一定数集まれば、リクエストになる力があることを教えてくれるからだ。
クレームも、わざわざ改善要望を伝えてくれている、
自社製品を育てようとしてくれている声と受け止められるし、
肉声のなかにいろんな次なる施策へのヒントがあるということだ。


以前、新しいWebサイトを立ち上げたとき、
この機能は絶対にいらないと、当初からやらないと決めていたことがあった。
これはやらないと合意を得ていた。


ところが、公開したあとで、
この機能がほしい、これを使いたいと毎日膨大な量のリクエストがきた。
ただそれは、主機能ではなく補助機能だったため、
開発優先順位は低かったし、いくら声が集まってもやる見込みはゼロだった。


いらないと決めた機能だったものの、
サポートセンターの人は、粘り強く、このリクエストが今週何件来ていますと、
毎週、毎週、集計結果とコメントを教えてくれた。


そして一年以上、サポートセンターの人が、
それがいかにお客様に求められているかを伝えてくれたことにより、
その機能を搭載することにした。
粘り勝ちだった。サポートセンターに人は我を通したのではない。
ただ、毎週数字の事実を教えてくれていたのだ。それが力を発揮した。


要望の数の多さ、期間の長さという集計された事実を前に、
もうやらない理由が逆になくなってしまった。
それだけ望まれていた機能を搭載したことにより、結果的に満足度はあがっていった。
サポートの人がこれはやらない機能だと、
判断したり、あきらめたり、集計結果を見せないということをせず、
事実を見せてくれたゆえにプロジェクト全体が、やっぱりやろうかと動いた。


お客様の声に耳を傾ける、
それを代弁してくれているサポートセンターの方たちの声を聞く、
この大切さが本当にわかった一件となった。


それ以来、私はサポートセンターの人を、
どの部署の人よりも、大切にしようと思うようになった。
ミーティングなどの意見でも、
その人個人の主観ではなく、利用者の声を束ねて教えてくれる存在として、
きちんと話を聞こうと思うようになった。


サポートセンターの人の存在なしに、いいものはできないとさえ今では思う。


また、違った観点でいうと、
相手に怒られて、いらっとくることもあるでしょうに、
自制心や訓練された言葉遣いによって、
相手に不快感を与えない、安心感をもたらす話し方ができるという点でもすごいと思います。
私はむかっとするとすぐ声に出るため、
同じ社会人としてもこれはできそうにない職種だと思っている。


今回電話したサポートセンターも、
何か聞かれて答えるたびに、ありがとうございます、
お手間をおかけします、と声をかけてくれて、
こんなことにまで、ありがとうございますはいいのにと思うことでも、
そう言うのが習慣づいているのかと思うとすごいなと思った。


そういえば、サポートセンターに限らず、
最近、大組織に電話をすると、会話の録音をするところに出くわすようになった。


最初に社名や部署名の音声ガイダンスが流れ、
「お客様との弊社のスタッフの会話は全て、録音させていただきます」と、
始まるメッセージが流れて、担当につながるところが増えてきた。


これは、コンプライアンス面でのこともあるだろうし、
ナレッジデータベースをためる事例にもなるのだろう。
言った言わないのトラブル防止でもあるかもしれない。


企業側にとって、何でも記録に残すということが、
あとあとの訴訟などのリスク、電話対応の不手際の事後処理などの追跡など、
リスク管理などにも役立つだろう。


もしかしたら、コールセンターのオペレーターの方の、
スキルチェックにも使っているのかもしれないし、責任追及になるのかもしれない。
あるいは事例研究に、解析がされているのかもしれない。


本当の理由はわからないが、このメッセージが流れると、
実はクレームを言おうと思っている気持ちの抑制にもなるような気がした。
怒り心頭で電話をかけても、録音していますと言われると、
なんだか少し、よそいきな気分にクールダウンできるような気がして、
怒りをぶちまけるようなことは言いにくくなるのではと思った。
企業側のメリットだけでなく、
話す側もクールダウンさせてくれる効果があるかもと思った。


サポートセンターに電話をする側を、
ときどき経験するのも悪くないと思う。企業に電話する緊張感を味わうのもいいなと。
サービスを受ける消費者の気持ちをきちんと味わっておく。
企業の対応を、一個人として見ておくと、
自分ならどうするかという仕事のヒントになるような気がする。


サポートセンターでお勤めのみなさん、いつもありがとうございます。
会社によっては補助的な部門と思っている組織が多いでしょうが、
私には、一番大切な、強力なプロジェクトの推進力になるメンバーだと思っています。
たくさんの声を、プロジェクトにぜひ還元してくださいね。


聞く耳を持たないプロジェクトの人ほど、サポートを低く見ます。
残念ながら、そういうサービスはいつか枯れます。
あるいは、その担当者がいつか失墜します。
お客様を大切にしていない、お客様の声を真摯に受け止めていないサービスや担当者は、
愛され続けるわけがないと思っています。


いいサービスをささえる、
サポートスタッフのみなさんの力は、かけがえがないものだと思います。
いいものづくりには、いいサポート体制、いいサポートスタッフが必須だと思います。


明日も声の笑顔を、誰かにあげてくださいね。
その声に、救われているひとがきっと毎日たくさんいます。
Good Job!


では、また。