明日の広告

こんにちは、検索迷子です。


人に勧められて、読みごたえのあった本に、
クリエイティブ・ディレクター佐藤尚之さんの、
『明日の広告−変化した消費者とコミュニケーションする方法』がある。


新書でこの内容の濃さは、絶対損がないと言われて読み始めたのですが、
確かに、何度も内容を行きつ戻りつしながら、かみしめるように読みました。


あまりにトピック的な話題や、用語が多いため、
どれかを抜き出すのが難しいほどです。


でも、あえて一つというなら、
「この商品の情報を伝えてもらいたがっている人をリアルに想像する」という作業、
という考え方だ。


伝えたい相手、ではなく、
リアルに伝えてもらいたがっている人を考えること、
この作業は、佐藤さんご自身が発想するときのコツとしているという。


私自身も無意識にそれをやってきた。
Webという世界で働き、対面でお客様に触れない分、
想像力を最大限に駆使し、誰かが望むものはなにか、
どんなふうに使うかを考えることに時間を使う。
そして、その作業に終わりはない。


ターゲットとして限定した相手に向けてということではなく、
この人だったらどうか、違う人だったらどうかと、
まずは身近な人をプロファイルしながら、その対象を広げていく。


インターネットの世界は、入口が広い。
あえてターゲットを絞らなくていいこともある。
特定ターゲットだけに限定することが得策ではないこともあるからだ。


相手に何かを伝える仕事に関わる人なら、学ぶことの多い本だと思います。
広告という仕事でなくても、人と接するうえでのヒントにもなります。


なかでも、
星野仙一さんの「阪神優勝感謝広告」、
井上雄彦さんの「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」を手掛けた話は、
誰に何をどう伝えるのか、プロジェクトが悩みぬいて成果をあげていく、
その思考のプロセスがとても参考になります。


一方的に伝えるのではなく、心に届くもの、
誰かの心に入り込み、とらえて離さないもの、
そういうものを生み出すためには、どれだけ作り手が想像力を働かせて、
初動をあやまらずにスタートするか。


想像した人の数だけ、人の心に浸透するのだなと思いました。
そして、仲間とのディスカッションの大切さも、この一冊は伝えてくれます。
心が一つになって、同じ方向を向いていくことで、ぶれない軸ができるのだと。


一人では、多くの人に伝えるものを作れない、
一人ではないから、いいものが生み出せる。
物づくりとはそういうことだと、改めて教えてくれました。


では、また。