坂の上の雲を見つめて登り続ける

こんにちは、検索迷子です。


時間が取れたら読みたいと思っている本に、
司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』がある。


明治時代の日露戦争前後を描いた、全8巻の歴史小説である。
日本が世界に名を馳せるに至った経緯を丹念に書いた物語で、
この本を紹介したメディアやビジネス雑誌、書籍は多い。


歴史小説にあまりなじみがないため、いつか読みたいと思うだけで、
結構敷居が高い本だと思っている。
一巻と最終章の八巻だけリンクを貼っておきます。


新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫)


読みたいけど、読めないというジレンマがあったため、
小説のエッセンスだけを読めないかと、少しズルをする気分で、
『図解「坂の上の雲」のすべてがわかる本−日本が最も輝いた明治時代と秋山兄弟の生涯』
後藤寿一(ごとうじゅいち)さん監修の本を読んでみた。

[図解]『坂の上の雲』のすべてがわかる本

[図解]『坂の上の雲』のすべてがわかる本


読後感としては、
原作の『坂の上の雲』の読者を対象としているため、
これ単体では、理解できないことが多かった。
やはり8冊をきちんと読むに越したことはない。


ところが、そんななかでも発見があった。

たとえば、「坂の上の雲」が話題になっているのはわかるけど、
坂の上の雲って何?という意味がわからなかったのが、少し理解できた。


日露戦争に対して、日本人はどのように臨んだか?
という項が簡略にエッセンスを説明してあり、わかりやすかった。

強国相手に日露戦争の開戦をめぐり、
国民が一丸となった様子を描いたのが司馬遼太郎の『坂の上の雲』だ

と原書をコンパクトに説明し、さらに、その意味については以下のように紹介している。

目の前には登るには苦しく厳しい坂がある。
しかし、ふと見上げると、その坂の上には青い空にぽっかりと白い雲が浮かんでいる。
そうだ、あの雲に向かってみんなで歩を進めていこう……といった思いで書かれた書だ。
その白い雲を見つめながら、明治人はひたすらに坂を登った。


軍人の秋山好古(よしふる)、秋山真之(さねゆき)兄弟、元老伊藤博文
そして、真之と小学校時代からの親友であった俳人正岡子規
正岡子規の友人でもあり、子規が能力を見出した夏目漱石なども紹介されている。


閑話休題のコーナーでは、
正岡子規の生涯と明治文壇史を取り上げている。
明治に萌芽した近代文学にスポットを当て、と書いてある通り、
明治文学史年表とともに解説がされている。


戦争を取り巻く時代背景が理解できなくても、
この文学史年表を読むことで、明治という時代を知ることができる。


また、明治時代に日本人はどう生きたかをもっと知るために、
現代人が学びたい明治人の気概の項が参考になる。

本書では、
著名な人物を列挙するも、あくまでその人たちは明治人のひとりに過ぎないとし、
彼らの存在は明治という時代の土壌と、
この時代に生きた人々の上に醸成されたものであるとしている。


また、
明治の国民なくして日露戦争の勝利は存在しなかったことになる、と言う。


なぜ、ここまで明治の日本人は熱かったのかという疑問が起きる。
それを説明したのが、次の言葉だ。

明治を彩る精神のひとつに、「立身出世」がある。

明治のこのことばは利己的なイメージと大いに異なるとし、
自分が国家を代表しているのだという気概、
「自分が一日休めば、日本が一日遅れる」という気概で日本の進歩を考えていた
としている。


そして、

国民すべてが、坂の上の雲を見ていた時代であった

と、している。


今、私を含め、多くの日本人は坂の上の雲を見て、
気概を持って、国家を代表する一人であるという自覚があるだろうか。
世界に向かって、自国の一人としてどんなことができるだろうか。


歴史的な読み方はまるでできなかったですが、
本書は、歴史をひもとき過去から学ぶことで、現代に活かせる知恵や精神、
日本人としての誇り、あるいは一丸となって何かを成し遂げる求心力などの大切さを、
象徴的に教えてくれるような気がします。


坂の上の雲』そのもののショートカット読書は叶いませんでしたが、
坂の上の雲がビジネスマンを始め、多くの読者を獲得する理由がわかったような気がします。


坂の上の雲を見ながら、前へ前へと進める自分でありたいと思います。
たとえ、金銭的な「にんじん」をぶら下げられなくても、
それがただの雲であっても、
利己的であることを捨てて、誰かのために坂を登り続けることの大切さを見失わず、
どんな状況でも無心に、夢中であろうと思いました。


目の前の出来事をおろそかにしないで進み続ける。
結果は、あとからついてくる。


そんな教訓めいた言葉で、『坂の上の雲』は語られていないでしょうが、
そういう本なのだろうかと、ますますいつか読む日が楽しみになりました。


では、また。