メッセンジャーが歪ませる対話力

こんにちは、検索迷子です。


あるとき同僚が、「急ぎの用件は電話だろ。なんでメールで済ませるんだ」と、
他の部署の人に怒っていた。
顧客対応で、今すぐサイト内に反映しなければならないことをメールで送ってきたらしい。

打ち合わせ続きで離席していて、メールを読めたのはそれから半日後だった。
このタイムラグは、お客様の信頼を損なう行為だ。


怒っていた同僚をみて、ちょっと驚いた。
過去に在籍していた二社では、電話はまるで使っていなかった。
メールと電話の重みは逆だったからだ。


今の会社は、とても電話が鳴る。直接席まで行って話をする。
同じチームであれば、首を伸ばして、大声で話す。
そして、メールが無駄に流れていない。
直接会話をすることを大事にしているのもそうだが、
メールを書いている時間がとれないのだ。


スピード感がある仕事をしているため、即時の判断が求められる。
朝、決めたことが数時間で変更になるなど、メールを書いているうちに、
状況がどんどん変わってしまう。


打ち合わせ、来客などで一日の大半が、
誰かと会話をしているか電話をしている。
メールを書いたり読む時間が、ほとんどとれないほど多忙なのだ。


私もまるでメールを書かなくなった。
メールで書くよりも、話し掛けてくださいと言われるからだ。
メールではニュアンスが伝わらないため、
私が納得したかが見えないから困ると言われた。
なるほどーと思った。


他の人は、あれやったの?と聞かれて、
メールで送りましたと言ったら、
メールで送りつけただけで、説明はしてないの?
そんなの無意味だよと注意されていた。


このとき一番重視しているのは、メールがなくてもいいから、
全員への説明する時間をとって、相手に理解が行き届いていることを、
一番確認するようにという感じだった。


送りつけることが大事なのではなく、
私がわかっていることを、話し手がわかることが一番重要なのだ。
相手がわかるまで、話したい、話すようにという企業体質なのだ。
これは、チームのメンバーも皆そうなのだ。


私が、あいまいにうなずく姿を見逃さず、わかるまで何回でも説明してくれる。
そして、一度話したことでも、絶対に責めない。
メールで送られたものを見落としていても責めない。


今、目の前にいる人が理解していないとわかったら、
過去どうだったかより、今説明することに全力投球してくれる。


電話が鳴らない会社は、水面下で会話


実は、過去にいた二社で、私は電話に数回しか出たことがない。
電話機の使い方を覚えられないくらい、電話がまるでフロアで鳴らないのだ。
誰も電話を使ってなかったといってもいいくらいだ。


全ての連絡は、メールかインスタントメッセンジャーで文字にして、
一方的に送りつけて、相手が読んでいる前提で話をしていた。
読んでいないと、読んでいないことを責め合う風潮だった。


言質をとるためにも、履歴のためにも有効だという建前だったが、
今思うと、その二社ともコミュニケーションがとても悪かった。
全員が静かにしていると思ったら、
隣の席同士でメールやインスタントメッセンジャーをやりとりしている。


声を出していないだけで、モニターにはメッセンジャーが丸見えである。
ある意味、会話よりも饒舌に、メッセンジャーの連続応答をしているのもだ。


ちょっと一言話し掛ければいいことも、全部メッセンジャーだ。
業務連絡も、言い争いも、ランチの相談も、
機密事項や、顧客情報のやりとりも、
もしかしたらデートの約束も、全部全部メッセンジャーだ。
隣の席だろうが、フロアが違おうが関係なく、
対話は全部、それなのだ。


メッセンジャーを、本当に活用している人もいると思うが、
一対一でやりとりするログには、
情報漏えいが垂れ流しになり、遊びが蔓延していて、
正当な業務利用はいったいどれだけのものかと思う。


企業でやりとりしているメッセンジャーのログを、
ぜひ、マネジメントする人は熟読して欲しいと思う。
従業員にログをとっていると抑止力のため、建前では言っていっても、
ログを読まれていないと思っている従業員は多い。


メッセンジャーが本当に必要な組織体制もある。
フロアの広さもある。
でも、本当に必要かは考えたほうがいいと思う。


私が今いる会社では、近隣のビルを複数借りるほど組織が大きく、
部署ごとに職場が分散しているが、
それでも、メッセンジャーを使わないで打ち合わせに集う。
電話をかけて肉声で確認することを重視している。


メッセンジャーを使う会社では、言い争いをしているケースはたくさんあった。
対話でないゆえに、言葉尻をとり、個人攻撃もあり陰湿になっていた。


卑怯な人は、その一対一のやりとりを、
いきなり広範囲の宛先のメールでさらしたりして逆襲していた。
あるいは、一対一だからこそ、陰湿になりそうだからと防御にメールを使っていた。


メッセンジャーを多用する企業は、それでコミュニケーションが正しいのか、
相手のことを思いやっているのか、
業務がきちんと進んでいるのかチェックしたほうがいいでしょうね。


メッセンジャーのログ、すごいことになってますよ。きっと。
フロアが静かな会社なんて、やっぱり少し異常だと思います。


過去の会社で、私は誰かに謝られるときも、メッセンジャー以外で、
目を見て謝罪された記憶がほとんどない。
隣の席の人の顔さえ、正面から見ることがなく、まともに覚えていない。
そんなコミュニケーションしかとれない組織員は、誠意が育たない。


メッセンジャーは陰湿で、情報漏えい満載で、
従業員同士の絆を弱めて、
報告、連絡、相談の大切さを理解しない人が増殖するツールに思えます。


もちろん、正しい使い方をしている多くの方もいるでしょうが、
在宅勤務でもないのに、一日一言も誰とも肉声で会話をしない会社なんて、
やっぱりおかしいと思いました。
私はそういう場所にいて、今日も誰とも喋らなかったなーと思う日々でした。


メッセンジャーのログを抜き打ちで検査されると、
水面下での会話の泥臭さや、企業体質がわかるでしょうね。


私が知っているセキュリティ企業では、個人情報が書かれたメールを、
ばんばんメッセンジャーで流し、上司への文句や、私用会話や、
業務上の大事なことも全部メッセンジャーのようだ。


従業員の噂話や、恋愛の相談、社内恋愛のツールとして活用なんて当然で、
セキュリティ対策ツールを提供しているその会社の製品が嘘っぽいほどで、
もう完全に破綻しているようだ。


これが、セキュリティ会社のやることなのかと思うようなひどさだ。
コンプライアンス違反の温床となり、従業員意識は低下し、
セキュリティ意識はまるでなく、何でも情報が漏れ放題だ。
ひどい従業員は、こうしたツールの使い方ひとつで出来上がっていく。
企業の監査は、メッセンジャーのログも見たほうがいいと思うほどだ。


フロアが静かだからって、集中しているわけではなく、
何をタイピングしているの?と背中越しに聞いてみるといいでしょうね。
慌てて、ウィンドウを閉じるようなやりとりをしている従業員は多いでしょう。


急ぎは電話かメールかは企業の業務次第でしょうが、
メッセンジャーは本当にいるのでしょうか。


いずれにしても、勝手に送りつける機能のツールに慣れてしまうと、
相手に対する心配りのできない人になるような気がします。
説明をきちんとできないような、目と目をあわせて会話をしないような、
そんな人は信用できませんね。


では、また。