Webサービスの暗黙のルール


こんにちは。検索迷子です。


今日のお話は、
『検索バカ』の本に触発されて考えた、
Web上の暗黙のルールを知っている人と、知らない人という話、
です。


暗黙のルールを知っているかどうか。


先日のエントリーで、
はてなブックマークの削除の仕組みを活用する「ブックマークした側」と、
削除に一方的に傷つくかもしれない「ブックマークされた側」の、
温度差の違いについて書きました。

http://d.hatena.ne.jp/kensakumaigo/20090807/1249657178
はてなブックマークは誰のものか


ここで書きたかったのは、
はてなブックマークのルールを理解して、「便利な機能」として運用する人と、
同じルールを、「楽しみや喜びの機能」と受けとめる人の間に生じそうな、誤解についてでした。


同じはてなブックマークを使って、見ているはずが、
たった一つの機能の解釈の違いによって、
光と影を同時に生み出すかもしれない怖さを感じた、ということでした。


今日は、ルールの認知度の違いによる温度差のズレについて、
他の事例を使って書こうと思います。


暗黙のルールを知らない人だっている。


『検索バカ』の著書で、
藤原智美さんは以下のようなエピソードを書かれています。

検索バカ (朝日新書)

検索バカ (朝日新書)


藤原さんはこの著書の、
1章 検索バカは、何を失くしたか
の冒頭で、エスカレータに乗るとき、片側をあけて人を通すことが、
暗黙のルールになってしまったということについて触れて、
以下のように続けています。

しかし、このルールを知らない人だっている。悪気はないのだ。こうした暗黙のルールはいたるところにある。たとえば車列に割り込んだときは、「ありがとう」という意味でハザードランプを点滅させることがある。丁寧な、すばらしいマナーのようだが、入れてあげたのに、その合図がないと逆に不快になったりもする。いつのまにかできあがったこれらたくさんのルール=モラルが私たちを縛っている。この現象が日常生活を複雑に、そして、新しいルールに慣れない老人を追いつめているのではないか。


私はこの部分を読むまで、
エスカエータのルールは実践しているから知っているけど、
車に乗らないため、ハザードランプのルールは知りませんでした。


もっと言えば、ハザードランプってどれのこと?というレベルです。
まさに、車に乗る人にとっての暗黙のルールを私は知らないのです。
きっと車を運転する側になれば、失礼なことをしてしまう典型的なタイプです。


こうした例からもわかるように、人と人が関わって生きていくうえで、
暗黙のルールは、本当にやっかいな存在だと思うことがたくさんあります。


インターネットが活用されだして、ルールの概念が変化している。


さらに、藤原さんは同章の、
検索は思考から嗜好まで、貪欲に代替していく
の項で、ネットやケータイが、人間関係や思考を変えていっていることについて触れています。

私がいまとても気になっていることは、人と人との関わり方、言葉と思考の変化です。その変化はネットやケータイの普及によって加速しているようにみえます。

Webの暗黙のルールは、サービス提供者が知らない場所で生まれる。


私は特に、インターネットの世界、もっと言えば、
双方向性のあるサービス、コミュニティーサービスのなかには、
こうした暗黙のルールがたくさんあるような気がします。


その暗黙のルールは、サービス提供者が意図していないことも多いように思います。
なぜなら、それが正式なルールなら、
サービス提供者が用意するヘルプページや、
お知らせページ、プロモーションページなどに書かれているはずだからです。


そもそも暗黙のルールは、サービス提供側が知らないところで発展します。
どこにも書かれていない利用者同士が作り出した暗黙のルール、
利用者が個人的に作り出した新ルール、
ルールの拡大解釈や、違う切り口での別解釈によるルールというのも存在すると思います。


サービス提供者が意図していない、あるいは知らない、だから暗黙のルールなのです。
そして、それはなぜか増殖してしまうのです。


はてなカラースターに、気持ちのグレードはあるのか。


これは、はてなを使うようになってずっと疑問だったのですが、
たとえば、はてなカラースターをつけるとき、
無料の黄色と、有料の星の色の使い分けやルールやマナーはあるのでしょうか。


トラックバックしてくれたら、黄色以外のカラースターをつけなければいけないとか、
赤はこのとき、緑はこのとき、青はこのときといった基準はあるのでしょうか。


また、カラースターだけでなく、
相手のブログをブックマークしなければいけないとか、
自分のブログ内で引用しなければならないとか。


もし、そういうルールがあっとしたら、
私はそれを知らないために、誰かに失礼なことをしていることになります。



私は、ブログを始めようとしたとき、他社での開設も検討していましたが、
暗黙のルールが比較的少なそうで、
利用者同士の関係が穏やかそうで、
運営側が公平に明快に運用しているイメージがあったことから、
はてなダイアリーを選びました。
そして、とても快適に毎日ここに訪れています。



でも、実際には、自分が他の利用者の方からブックマークやカラースター
トラックバックやコメントをしてもらうようになって、
双方向性を実感するようになってから、多少の戸惑いが始まりました。


お礼の気持ちを伝える操作に、
はてなダイアリー独自の、あるいはブログ全体の、
暗黙のルールはないのかと、不安になってきました。
失礼なことをしていないかと、未だに冷や冷やしています。
知らないことで、誰かを不快にさせていなければいいのですが。


暗黙のルールゆえに、手が出せないジレンマ。


新しくコミュニティーサービスを利用する人は、
暗黙のルールを知るプロセスを楽しみつつ、なじめる人もいるでしょうが、
暗黙のルールになじめなかったり、
そもそも暗黙のルールをまるで理解できなかったりと、
時に他の利用者から排除されて、攻撃を受けるケースも出てきます。


私が、サービスを提供する側だったときにつらかったのは、その点です。
公式ルールではないから、運営者として口を挟めない。
いさかいは続く。
でも、その暗黙のルールを楽しむ人もいる、
そして、暗黙のルールを節度を持って使う多くの利用者がいる、
という微妙なとき、運営者は何かをしにくい状況にあります。


コミュニティーサービスで生まれた空気感や暗黙のルールを、
皮肉なことにサービスの運営者が傍観するしかなく、
荒れているわけではないのに、
もはや制御不可能な状態になることもあります。



暗黙のルールは、本当にやっかいです。
できるだけ、文字にして、言葉にして、伝え合えればいいのですが、
行動すべてが明文化できるわけではないですからね。


ましてや、インターネットサービスのヘルプページでは、
「機能説明」はできても、
「利用シーン」「利用するときの気持ち」「利用してはいけない状況」までは、
なかなか指定できません。
暗黙のルールを教えてくださいと、人力検索はてなで聞くのも抽象的な質問ですね。


検索迷子は、当面、はてなダイアリーを使い続けて、
ここで出会う人たちから、
はてなダイアリーの暗黙のルールを学ばせていただきます。



では、明日。またここで。


検索迷子