技術者を生かすものづくりとは

こんにちは。検索迷子です。


今日のお話は、
技術者の視点で作ったサービスを、
企画者、運営者はどう生かせばいいかという話、
です。



■いつも隣に技術者がいる環境。


私は、情報を取り扱う仕事にずっと従事しています。
インターネットが普及する以前から、今、現在も、
いつも仕事のパートナーには技術者の方がいます。


これまでいろいろなタイプの方と、お仕事をさせていただきました。
無形のアイデアを形あるものにするために、
議論したり、助けていただいたりしながら、
協業による相乗効果を生み出してきたと思っています。


私にとって技術者の方は、情報やサービスをを形にするために、
よりよいものづくりをするために、とても大切な存在です。


といっても、どなたとも、いつでも上手くいくわけではありません。
時には深い溝があり、相容れず、サービスに影響を及ぼすこともあります。


やりたいと思うことを、譲歩ではなく諦念で実装できないこともあります。
どんなに歩み寄っても、同じ方向を向いていけない悔しさも何度も経験しました。



■違う役割のはずが、ネットで境界がなくなった。


検索迷子である私は、技術に明るくありません。
私自身の怠慢や能力もあるのでしょうが、
その理由の一つは、
比較的大手の企業に勤めていたことも無縁ではないと思っています。


私が在籍していた企業は完全分業制のため、
依頼者と技術者の役割が明確に分かれていました。
そのため、ハードの知識は自分には不要と思っていた部分があります。


たとえば、
エラーがあったら対応終了まで技術者に丸投げで、報告を待つだけでした。
また、画面設計や機能変更の依頼も、抽象的な言葉でイメージを伝えて、
仕上がりをチェックするという発注者・受注者のような関係でした。


この状態に変化が訪れたのは、インターネットの普及によってでした。
それまで、技術者のパソコン上でのみ展開されていたことが、
インターネットを使えば、企画や運営担当者でもできることが増えてきたからです。


このことによって、技術者の姿勢にも変化が見られるようになりました。
それまで、受注者的に仕事をしていた方たちが、
こういう機能を作ったらどうか、こういうサービスにしたらどうかと、
かつて口を閉ざしていた部分にも提案をする方が増えてきました。


技術者が発言力を増すにつれ、
考える人が増えた分、いいサービスになるメリットは十分ありました。
でも、逆に技術を持たない、企画担当、運営担当としてはジレンマもありました。


たとえば、実際はこういうサービスにしたいというイメージがあっても、
技術者の方から、この技術を使ってカスタマイズしていけば近いことができる、
と提案されたのを受け入れた結果、微妙にちょっと違うというものができるのです。


でも、技術がないばかりに、どう修正の提案をしていいかわからないのです。
そのため、まずはこれでいいかと、不満を残して見切り発車をすることもありました。


公開を早めて、まずはお客様に使ってもらう機会を早めることを考えると、
柔軟に変更ができるインターネットの世界では完璧でなくてもいい面もありますが、
信頼性に関わる部分にはこだわりがあり、折り合いがつかず困ったこともあります。



■いいチームが作り出す、いいサービス。


私は、いいチームがいいサービスを生み出し、
コミュニケーションが上手くいっていないチームが作るサービスは、
その品質がお客様に透けて見えると思っています。
人がサービスを作ると思っています。


そのため、サービスを実現するキーパーソンである、
技術者の方たちとの接し方はいつでも最大のテーマです。


技術者の方たちとどうやって接していけば、技術者の方たちの力を引き出せて、
いいサービスが作り出せて、お客様に満足していただけるか。
このことをいつも考えています。
そのサービスに関わる人たち、
使う人、作る人が満足できるものを作りたいと常に思っています。



■技術者の立場からの言葉に、胸が詰まる。


技術者との関係に悩んでいたころ、
はてな伊藤直也さん(id:naoya)のインタビュー記事を見つけました。


私とは逆の立場、技術者としての意見に、はっとさせられました。
私が経験した会社の環境とあまりにも類似していたのです。


4年ほど前のインタビューですが、引用させていただきます。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0508/18/news023_2.html
2005/08/18
連載:変な会社で働く変な人(2)
ココログ」開発者、はてなへ (2/3)


大企業はどこも同じ

「技術屋の視点で作ったサービスが日本には欠けている」――伊藤さんはそう考えていた。ECのように現実のサービスをWebに乗せるのではなく、Movable TypeGoogleのように、技術から出発し、ネット上で完結しながら「錬金術みたいに」お金を生んでいく、そんなサービスを日本でも作りたかった。
 「技術屋が考えたサービスは、始めのうちは技術屋にしか理解されない」。技術部と企画部が別部隊だったニフティで、開発側から新サービスを企画するのは不可能に近かった。できたとしても、時間がかかりすぎた。かといって個人で運営するには限界がある。転職を考え始めた。
 有名企業への転職を考え、大手ネット企業の社員に話を聞いた。飲みに行くと、みんな決まって同じグチを言った。「稟議が遅い」「組織が……」。ニフティと変わらなかった。

このインタビューを読んだとき、
技術者の方がここまで考えてくれるようになったとき、
熱い思いを表面に出すようになったとき、
企画者や運営者は何をすればいいのだろうか?と考えてしまいました。


そして、これまで技術者の方たちは、
サービスをどうしたいかという思いを言わなかったのではなく、
企画者や運用者として言わせなかったのかと思いました。
技術者の方たちの声を、押し込めていたのかと気付きました。


意見に耳を傾けることは、
シンプルで風通しのいい組織体制と思われる、はてなでは実現できる。
でも、私が今いる場所では、自分はどうすればいいのだろうと考えました。


技術者の方が、こういう視点を持っているということがとてもよくわかる、
いいインタビュー記事だと思いました。



表面的には物言わぬ技術者が多かった時代より、
伊藤さんのように、きちんと提案をしてくれる技術者の方がいてくださる、
それはとても心強いことだと思いました。
教えていただくことの多い記事で、伊藤さんには感謝したい思いです。


検索迷子としての答えはすぐでませんが、
技術者の方たちの力を最大限に生かせる、そんな存在に私はなりたいと思います。



では、明日。またここで。


検索迷子