インターネットの情報の回転率

こんにちは。検索迷子です。


今日のお話は、
インターネットの情報の回転率は、
速いほうがいいのかと思った話、
です。



■バナー広告を運命と思い込む



私が、インターネット業界に足を踏み入れたきっかけは、
バナーの求人広告でした。


調べものをしていた仕事中に、
何気なく目にした、IT企業への求人情報をクリックしました。
応募してみようかと一読し、とりあえず仕事中だし、
後でもう一度見てみようと、そのままサイトを閉じてしまいました。


そして、また同じサイトを見ると、
さっき見たバナーの場所にはまるで違う広告が出ていました。
えー、さっきのはどこにいったの?と、
そっか、もう募集を締め切ったんだとがっかりしていました。


二日後、
今度は同じサイトの違う場所に、同じ求人広告が出ているのを見つけました。
うわー、これは運命だ!!と、
今度はサイトを開いた後、URLをコピーして保存しました。
少しだけ知恵がつきましたが、
当時は、お気に入りという機能を知りませんでした。


この運命的な出会いを逃すまいと、
帰宅してから早速履歴書を書き、応募をしました。
そのサイトを見つけたことが、
まるで選ばれし者だけの特権だと勘違いし、
このチャンスを逃すまいと必死でした。



このとき、私はバナー広告というものを知りませんでした。
再読み込みをすれば、違うものが出るということも知りませんでした。
また、リンク先には、
常駐している企業の採用情報のページがあることも知りませんでした。


そのバナーは、企業の求人情報ページを、
期間限定で露出していたに過ぎないものでした。
それなのに、この広告を見た自分は、
宝くじに当たったみたいにすごいぞと浮かれていました。
一度ならずも二度も見たと、盛り上がっていました。


バナーという言葉や仕組みを知ったのは、入社してからでした。
そこで、聞いてみました。


どうして、いつも同じ場所に同じものが出ない部分があるんですか?
と聞いて、まわりを唖然とさせました。
広告だから、いろんなパターンがあるんだよと説明されましたが、
それでもまだしっくりきませんでした。



■回転し続ける情報


それまで、自分が知っている情報や広告といえば、
印刷媒体の再読が可能なものだったり、
テレビのいつも見る番組のおなじみの提供スポンサー、
といったイメージでした。


実際は、たとえばテレビなどの広告は変動していたと思いますが、
同じ番組の大手スポンサーはいつも同じという感覚でした。
つまり、情報がくるくる変わるという印象はありませんでした。


ところが、
インターネットでは、バナー広告はどんどん変わります。
さっき見たのをもう一回となると、どこにその情報があるか探せず、
二度と出会えないような気がします。
それくらい、当時は面食らいました。


今でも、その情報をあとで見ようと見逃して、
再度同じサイトに訪問したとき、
あれ?と思っている人はいるような気がします。


今は、それがバナーということはわかりますが、
見逃した情報を再度見つける方法はわかりません。
広告ってそういうもの、なのでしょうか。



■何でもプリントアウトしておきたかった時期


インターネットが普及しだしたころ、
それまで印刷媒体に親しんだ人たちや、
画面で何かを閲覧することになじまない人たちは、
なんでもプリントアウトをして、平面的に読むことを好んでいました。


手元に情報を置いておきたい、
紙で読まないと読んだ気がしない、
理由は人それぞれでした。


私が身近な人によく聞いたのは、
インターネットの情報はすぐ変わってしまうから、
プリントアウトしておかないと不安という、
情報の回転率の速さについていけないということでした。


さっき見たものがすぐなくなるから、手元にキープしないと、
それはニュースサイトであったり、バナーであったり、
とにかくインターネットは情報が早すぎるということでした。


今では、利用者がその回転率、
サイトごとの更新スピードに慣れていったり、
逆にスピードや大量の情報を求めるようになったり、
インターネットってそういうものと思っている人も増えてきました。
プリントアウトをしないでも、見られる人も随分と増えました。



それでも、まだ、
あれ?さっきのはどこ?
と回転する情報に翻弄されて、
疑問に思っている人はいるかもしれません。



■自分がお店にいった時の気持ちで考える


インターネット上のナビゲーションを考えるとき、
いつもそこにないと違和感があるものは何かと、
私は慎重に検討してきました。


たとえばリアル店舗の場合、
いつも、この棚にお気に入りの飲み物があると、
場所を覚えていて購入していたものが、
たまたま違う棚に移動したらどうでしょうか。
あるいは、なくなっていたとしたらどうでしょう。


知人が、毎朝自動販売機で買う飲み物を、
いつも通りいつものボタンを押したら、違うものが出てきた!と、
憤慨していたことがあります。
どうやらその日から、その場所は新しい飲み物になったようです。


当面は注意しながら、その自動販売機を使っていましたが、
あるときまた、違うものが出てきた!と怒っていました。
そして、知人はとうとう、
あの自動販売機は、新作がどんどん入るからダメだと、
そこで買うのをやめてしまいました。


その人にとって貴重な朝の時間は、
無意識にいつも同じ場所で同じものが買える、
その安心感がもっとも大事なことだったのです。


ささいなことかもしれませんが、
この、いつも同じ、いつでもそこにある、
そのこと自体が、新しいものを上回ることがあります。
変化が望まれていないこともあるのです。


リアルな場所での買い物に限らず、
インターネットのサービスでも、
それは言えることがあるかもしれません。


情報の回転率、鮮度にこだわる方法もありますが、
あえて、ゆっくり、いつもと同じに、
当面そこにある情報を提供するという方法もいいのかもしれません。



元のサイトがあるなら、その保存場所もわかるようにしておくなど、
回転しすぎない情報を提供することも、
利用者のスキルに寄り添うためには、必要な気がします。


多様なインターネットの情報の回転率が出て、
利用者が好きな場所を選べるといいなと思います。


求人広告を見て、選ばれし者だ!という勘違いをしたことを、
今では笑い飛ばせる自分がいますが、
その当時は、
金魚すくいの網が破れないうちに、急げーっといわんばかりに、
情報が消えてしまうと焦り、情報の入れ替わりの速さに翻弄されました。


情報の回転するスピードって、どれくらいが最適なんでしょう。
誰に使ってほしいかにもよるでしょうが、
サービスの作り手としては、意識したいところですね。



では、明日。またここで。


検索迷子