こんにちは。検索迷子です。
今日のお話は、
サービスを立ち上げた人だけがわかる、
『「へんな会社」のつくり方』で泣いてしまった話、
です。
■競合、でも戦わずに共存共栄したかった、はてな
数年前、新サービスを始めるにあたって、
はてなを競合調査として閲覧していました。
そのとき私は、
はてなには勝てない、だから戦わない、
と決めていました。
はてなの利用者や、作り手の能力の高さ、
コミュニティーが生み出す空気感は、
他の追随を許さないものがありました。
当時、今よりずっと小規模だったはてなは、
既に十分に独自性を持ち、同じ場所では戦えないと思いました。
競合調査をしたなかで、素直に負けを認めたのは、はてなだけでした。
なぜそう思ったかは、今ではわかりません。
ただ、はてなの世界観を、日本のインターネット上から消してはいけないと思いました。
はてなと同じ方向性のサービスを作るほうが、
社内の受けもよく、既知のサービスゆえに納得もされやすかったのですが、
私はあえて、同じ道に進むことを断ちました。
はてなが進もうとする道は、はてなに切り開いてもらいたかったのです。
だから、はてなが決していかないだろう方向のサービスを立ち上げようと思いました。
そして、それは結果的に成功しました。
始める前から、成功する自信はありました。
なぜなら、はてなを使いこなせない人たち、検索迷子を狙って、
ターゲットを絞ったからです。
はてなに勝てないとすぐに気付いたから、
はてなとともに、インターネットの世界で並んで歩こうと思ったのです。
数年後、はてなと自分が作るサービスが、
共存共栄しているといいなという思いとともに。
そして、数年経過した今、
たぶん誰から見ても、同じ場所では戦わず、
インターネットの世界で共に成長しあっている距離感にいます。
■はてなブックマークが、するりと生活に入ってきた
数年前に負けを認めて以来、
私の生活のなかに、はてなは存在しませんでした。
時々、知人のはてなダイアリーを見せてもらう程度でした。
ところが、あるときから、
あれ、私、毎日はてなを見てるなと実感するようになりました。
それは、はてなブックマークの存在でした。
仕事で、同僚と情報を共有するとき、はてなブックマークを参照しあうことが、
圧倒的に増えました。
はてなだと意識をせずに、毎日毎日はてなを使っていました。
ああ、はてなってこうやって新しいものを根付かせる力があるんだなと、
改めてはてなを見直したのでした。
■『「へんな会社」のつくり方』を再読。共感して泣いてしまった。
「へんな会社」のつくり方 (NT2X) 近藤 淳也 (単行本 - 2006/2/13)
はてなが気になりだして、
『「へんな会社」のつくり方』を、発売当時に読んだ以来、
久しぶりに手にとってみました。
以前読んだときは、
ITベンチャーって、こうなんだという位の感想でした。
ところが今回再読して、
最初から最後まで、ああ、それわかる、わかる、そうだよねという共感の連続でした。
近藤淳也さんのような著名な方と、一般社員に過ぎない自分とは、
責任の重さも、経験も何もかもが違うのですが、
失礼を承知で、
同じ時代を生きた同士という気持ちになりました。
特に、
PART 03 ユーザーとともに
9 ユーザーとともにサービスを開発する
不具合と信頼性
この章の最後、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、さまざまなシステムの抜本的な変更を行い、
既知の脆弱性をすべて修正した頃には、「はてなは安全だ」といった書き込みすら
登場していました。不安や怒りの一部は、信頼に変わったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この一行を読んだ瞬間、
感情移入しすぎて、泣いてしまいました。
トラブル対応の豪雨のあとの光、みたいな一行だったのです。
がんばってきたかいがあった、よかった、よかったという気持ちでした。
この章のあと、
10 50%の完成度でサービスをリリースする
という部分にも共感するポイントがありました。
私が手掛けたサービスも、ベータ版としてのリリースだったため、
未完成品を世の中に送り込むメリットも、デメリットも経験しました。
この章は、まるで自分の経験を書いてくれているかのような錯覚さえ覚えました。
社内にほとんど前例がない、ベータ版リリースだったため、
他のサービスでは想像もつかないような、トラブルの連続、
お客様からのクレームメールの嵐、お叱りを受ける日々でした。
そんななか、
サービス内の書き込み機能を利用して、
「●●(サービス名)、直してくれてありがとう!」
というお客様からの、サービス担当宛のコメントを偶然見つけました。
私が在籍していた会社は、
はてなのように利用者との距離は近くない会社でした。
そのため、直接的にお客様の声を聞くことはしていませんでした。
それだけに、このたった一言のコメントが、どれだけ励みとなったか。
コミュニティーサービスって、凄いサプライズをくれると思いました。
そのときのことを思い出したのです。
はてなは、お客様とそれだけ近くにいるんだ、
だから、直接批判もされ、真摯な対応が求められるんだと思いました。
自分の経験と、近藤さんの言葉が重なり、
同じ時代、違う場所で、同じような苦労をして、サービスを作り上げた人がいる、
そう思えたことがとても嬉しくなりました。
この感覚は、社内の人間に対する仲間意識とは少し違います。
遠いのに近い、面識もないのに一緒に仕事をしていたような気がしました。
また、完成度が低い状態で、コミュニティ系のサービスを作った人ならではの戸惑い、
割り切り、向上心、未来を信じる気持ちが重なり合ったような感覚なのだと思います。
違うサービスを立ち上げても、迷いの質はまるで同じで、
一冊まるごとまるで自分のことのように読み返しました。
近藤さんは、インターネットの世界でたいへん著名な方です。
雲の上の人ですが一度はお会いしてみたい人の一人です。
日本経済新聞でとりあげるような、経営モデルとしての秀逸さの視点ではなく、
サービスの作り手として、一人の人間としてお話を聞いてみたいです。
私自身は、近藤さんとは一面識もありません。
知人のつてをたどればお会いできるかもしれませんが、そういうズルはしません。
いつか、きっと、近藤さんにお仕事を通して会えるようになりたいと思っています。
それが、私の当面の目標です。
インターネットの世界で、サービスを作っている方は、
『「へんな会社」のつくり方』を読むことをお勧めします。
この本は、いわゆる社長の本ではなく、
インターネットサービスの作り手の一人としての目線で書かれた本です。
サービスの内情を、ここまで詳しく書いてくれていることが、
本当にありがたいと思えます。
近藤さんが、コミュニティーサービスの道を開き、
その後に続く、インターネットサービスの作り手が同じ道に迷わないように、
伝えてくれているような気がしました。
いい作り手の一人になれるよう、誓いを新たにしました。
近藤さんに感謝したい気持ちでいっぱいです。
では、明日。またここで。
検索迷子