FISHBOYさんとShow-heyさんのショーケースでの輝き

こんにちは、検索迷子です。


気づけば、今年一度もブログを書いていなかったが、いろんなメディアに触れるたびに、感想をメモしたり、脳内で文章を組み立てたりしていた。


SMAPやRADIOFISHのことなら、どこまでも書けるくらい感想のストックはあるが、オンタイムで文字化しなかったものもいずれ、違う形で披露できるときがくるような気がしているので、過ぎた時間は気にせずに行こうと思う。


今日は、RADIOFISH(レディオフィッシュ)のスキルマスター(RADIOFISHでのダンサーさんの呼称)として活躍されている、FISHBOY(フィッシュボーイ)さんとShow-hey(ショーヘイ)さんが、1/14(土)に出演されたショーケースの話題に触れたい。


あらかじめお断りしておくが、この文章は14,000字ほどある。
クラブイベントの記事を初めて書くゆえの補足事項も多く、記事を分割したくないため一気に書いた。でもそれは私の都合なので、どうぞ負担のないよう飛ばし飛ばし読んでください。


記事の構成は、イベント概要、当記事を書くにあたっての背景や、行くまでのいきさつを先に書いている。FISHBOYさんとShow-heyさんのパフォーマンスやエピソードをとにかく読みたいかたは、見出し3.までスクロールして、興味のあるところだけでも読んでいただければと思う(見出しは8.まである)。


続けて、クラブイベントに行くことに躊躇するかたに向けて、ちょっとした補足事項や感想、最後に、FISHBOYさんとShow-heyさんへのお礼を書いている。

1.eggmanでのクラブイベントの概要

私が行ったイベントは、2017年1月14日(土)深夜にeggmanで行われた、「GKKJ PRESENTS「EXPRESS vol.8」」だ。


このイベントは、Show-heyさんが所属しているGKKJ(下剋上)が主催する、若手ダンサーの登竜門となるコンテストで、10チーム強のなかから優勝チームが、川崎クラブチッタへの出場権を勝ち取るというものだった。入場時に投票用紙をもらい、観覧しつつ審査するというスタイルで、プロダンサーさんのイベントとはまた異なるものだったようだ。


なお、Show-heyさんは、昨年末にGKKJを卒業という形はとられたようだが、当日MCを務めたYASさんが、「高校を卒業して、大学に行ったようなもの」と表現されていたので、パフォーマーではない形で今後も関わっていかれるのだと理解して、「所属している」という書き方をした。


FISHBOYさんとShow-heyさんは、そのイベントのなかで、[MONSTERZ]というポジションで、ベテランダンサーさんとしてダンスパフォーマンスをするという位置づけだった。当初、[MONSTERZ]というのがお二人のユニット名かと思ったら、このイベントの各回ごとに、[MONSTERZ]のダンサーさんがいるようで、スペシャルゲストダンサー的な言いかたなのだとわかった。


ここではRADIOFISHファンのかたに向けて主に書いているため、ダンスに不案内な私は、イベントそのもののことは触れないが、夢も希望もある若手ダンサーさんのパフォーマンスも、ダンスがわからないのに審査をしていいのだろうかと思いつつも、どのチームも楽しんで見せていただいた。


技術面はわからなくとも、心に響くものがあるかどうかという基準だけでも、十分違いが伝わってきたような気がする。また、コンテストならではのプロダンサーさんからの講評タイムも、大きなステージに立つ覚悟、チームとしてのダンスのありよう、細部へのこだわりなど、熱い思いが伝わって来た。


自分はプロとしてダンスをすることなどないだろうが、何か、人生の先輩から、プロとしての普遍的なものを教わるような気持ちになった。プロとしてお金がもらえるレベルのダンサーになることやダンスの世界の厳しさに、わずかでも触れられたような思いがした。


そして、完全一致の環境ではないかもしれないが、これがFISHBOYさんやShow-heyさんが生きる、ダンサーとしてのファーストステージにあたる場所なんだなと思った。

2.公式映像がないからこそ、現地に行った感想を書き残す

これから書く感想をブログに書くかどうか、しばらく迷っていた。
というのは、RADIOFISHファンのかたも現場にそれほどいなかった、深夜のクラブイベントでもあり、読んでくださるかたに共感されにくいだろうかと思ったからだ。


また、公式映像がないものは、文章とともに反芻がしにくいこともあり、もともとあまりブログでは触れないようにしている。私自身、知的財産管理技能士という国家資格を持っているため、著作権、肖像権には慎重でありたいと思っていて、自分では写真も映像も所有していないし、仮に持っていてもブログには使わない理由はそこにある。


映像がない分、書く力も問われる。それでも、書こうと思うきっかけがあった。
ひとつは、RADIOFISHの新規ファンのかたたちの存在だった。どこからが新規というのかは難しいが、秋口のジョジョのコスプレをテレビで観てRADIOFISHが気になったかた、と言えばいいだろうか。


ライブイベントやフェスなどはもう終了していて参加できなかった、または、地方在住で行けなかったというかたと、今月に入って何人かとお話しする機会があった。


それはTwitterや、FISHBOYさんのラジオの観覧後に、初対面ながらお食事をしたかたとの時間だったりした。RADIOFISHの情報をもっと知りたいというお気持ちを聞きながら、公式映像が残らないクラブイベントだからこそ、自分の内面だけに感想を留めてしまうのはもったいないかもと思ったのだ。


また、最近のブログのアクセス状況を見ていると、RADIOFISHの過去記事をまとめ読みしてくださるかたが増えて、新しいファンのかたが増えていることを体感している。記事数は多くなくとも、長期的に読まれていくものを残しておいて良かったと、書いて数か月経った今、実感させてもらえることが増えた。


イベント直後にコンパクトな感想は、既にTwitterでいくつかつぶやいたため、もう書かなくてもいいかと思っていたが、ブログだからこそ、こんなにこってり書くのかという路線で、周辺のことも可能な限り書こうと思っている。

3.FISHBOYさんとShow-heyさんに、背中を押してもらえた

もう一つの書こうと思った理由は、単純に、FISHBOYさんとShow-heyさんのパフォーマンスが素晴らしくて、書き残したいと思ったからだ。


お二人のダンスを見た直後、その余韻でしばらく放心状態になり、何日も高揚感が収まらなかった。実は、お二人とはダンス直後のDJタイムの際に、フロアでお話をさせていただいたが、その際はぼんやりしすぎて、感想をお伝えすることができなかった。


帰路、脳内反芻をしていたら感動が蘇ってきて、深夜というか早朝にも関わらず、Twitterでお二人にお礼を言いたいと思って感想を送ったくらい、インパクトが強かった。感動が止まらないという状況が、後から後から湧いてきた。


もともとこのイベントに行くかどうか、もの凄く迷っていた。告知直後からずっと気になっていながら、クラブイベントの敷居の高さがどうしてもあった。


何人かのかたにお声がけしたが、みなさんと都合が合わず、さて、どうしようと思っていた。一人でも行きたいの、自分?と悩んでいた。


と、そんなタイミングで、1月10日(火)のFISHBOYさんのネットラジオ番組の観覧に行った際、Show-heyさんが放送終了1分前に突然、来られた。


ダンスイベントから話が脱線するが、FISHBOYさんのラジオにご興味があるかたもいると思うので、少しその場の話も書いておきたい。


気づいたら隣に、ドアに顔をくっつけて中を見ている、熱狂的な人がいるなぁと思って見たらShow-heyさんだった。しばらく、FISHBOYさんに気づいてアピールをするかのように、かわいらしく首をかしげながら中を覗き込んでいて、観覧のかたたちと大盛り上がりしてその姿を見ていた。


すると、FISHBOYさんがガラスのドア越しにいるShow-heyさんに気づき、中に招き入れた。このスタジオは、コンビニのドアによくあるようなガラスの引き戸で、ドアを開けて50センチくらいですぐDJ用のソファーというコンパクトなサイズで、出入りする姿が丸見えだ。観覧は、外に立ってガラス越しに見ていて、少し声を張れば外の声がFISHBOYさんにも聞こえる。


ちなみにこの時、「へい様ー」と叫んだ観覧の声(一番大きいのは確実に私の声、、と再放送を恐る恐る聴いてわかった。ボイトレで鍛えた声量で思いっきり叫んでいた)がもの凄く響いたのは、ちょうどShow-heyさんが、引き戸を引いて中に入ろうとドアを全開にしたタイミングで、ダイレクトに声が電波に乗ってしまった。普段はあそこまで声は入らない、はず。。と言い訳)。


その日最後の放送時間帯だったこともあり、番組ディレクターさんが番組放送時間を少し延長してくださった。それでShow-heyさんが急遽出演となったのだが、FISHBOYさんとGKKJのイベントの打ち合わせのためにここに来た旨と、イベントの告知をされていた。
(ラジオ番組:ソラトニワ原宿『DANCE DANCE PLANET 〜"Hi" Of THE FISH〜』)(Twitterハッシュタグ #soraxniwa 通称:ダンプラ)


番組終了後、FISHBOYさんのご配慮でShow-heyさんとも少しお話しできたが、このとき、Show-heyさんが告知に来られて、少しお話しをしたことで、たとえ同行者が見つからなくても、GKKJのイベントに行こうという気持ちが固まった。今目の前にいる、このお二人のダンスが見たいとシンプルな結論が出た。


この日、Show-heyさんが来なかったら、たぶん私は一人で行く勇気はなかっただろう(後述するが、私は結局一人でイベントに行き、現地で知っているかたたちに会えた)。


Show-heyさんが告知する姿を見ながら、クラブイベントにいく敷居の高さよりも、自分がお二人のパフォーマンスを見たいかどうかなんだなと単純に思った。何人かのかたに行きませんか?と聞いていた時点で、自分の行きたい気持ちはわりと固まっていたのだろう。


たぶん、FISHBOYさんがよく話をされている、「RADIOFISHとソロのダンスは、別の表現方法」といったニュアンスがどういうものか知りたいというのと、Show-heyさんやFISHBOYさんの、ダンサーさんとしての基盤を作ってきた、ホームともいえる場所でのソロのダンスを、一度は生で見たいという気持ちがずっとあったのだと思う。


Show-heyさんが観覧の場に来てくださったことで、ソロを見てみたいというスイッチが、瞬時にパチンと入った感じがした。Show-heyさんに、自分のやりたいことや見たいものに素直になっていいんだと、背中を押してもらえたようで、そんな簡単なことに気づけなかった自分の行動力のなさに気づかせてもらえた。


この日、「イベントのために打ち合わせをこれからする」というお話を聞いて、ああ、お二人は最高のパフォーマンスをするために、忙しいなかきちんと準備をされるんだなぁと思うと、イベントにとてもリアリティーが増した。


それでふと、当日のパフォーマンスは、後日、映像で販売される類のものではなく、その日しか見られないもので、自分の目で見るしかない「その日限りの数分のダンス」なのだと気づいた。


素晴らしいパフォーマンスを見る場に誘ってもらえて(個人的に誘われたわけではなく、告知をそばで聴いていただけだが)、行かずに後悔することにならなくて良かったと思った。


では、いろいろ周辺説明が長くなったが、やっと、イベント当日のお二人のダンスの感想に触れる。

4.お二人のダンスパフォーマンスと、コラボダンス

お二人の出番の前に、MCのYASさんからそれぞれのプロフィールの簡単な紹介があった。このとき、FISHBOYさんの紹介の最後の一言が「日本を代表するダンサー!」だったのを聞いて、改めてFISHBOYさんって本当に凄い人なんだなとしみじみとした。


普段、情報として凄さを知っていても、プロダンサーさんが紹介する「日本を代表する」という一言で、より凄さを実感したという感じだ。そして最後に「From RADIOFISH!」という掛け声がかかったとき、ああ、お二人は「RADIOFISH」というチームの一員なんだ、そのお二人が一緒に踊るんだとなぜかじーんときてしまった。


この日のダンスは、5分程度の長さだった。
最初にコラボ、次にFISHBOYさん、Show-heyさんの順でソロ、またコラボになり、Show-heyさん、FISHBOYさんの順で再びソロ、最後はコラボで終了という流れだった。


最初に登場してダンスを始まったとき、あれ、Show-heyさんってこういうダンスをするんだと意外な感じがして、それが何だったのかうまく説明できない感覚があった。


翌週、FISHBOYさんがご自身のラジオ番組で、「Show-heyさんが(FISHBOYさんが専門の)POP(ダンス)をやりたいといって、難関だったと思うけどがんばったと思う。でも、そのあとのソロで持ってってましたね(ご自身の専門ジャンルのダンスをして、その場の空気の流れを変えた、さすがShow-heyさん、というニュアンス)」というお話をされていて、しっくりきた。


その説明を聞いてしっくりきたのと、最初、このイベントでお二人がコラボすると知ったときに、お二人はダンスジャンルの違いを、どうパフォーマンスするのかと、ステージが想像しにくかったことを思い出した。Show-heyさんがまさかPOPをすると思っていなかったので、それが意外でもあり、でもそこが新鮮にも映った。


ダンスを見た瞬間にジャンルがわかるほどに詳しくはないが、こうやって、FISHBOYさんが後日説明してくれたことで、楽しみ方が一つわかった気がする。


コラボダンスは、お二人の元の振り付けが同じでも、味付けの微妙な違い、個性の出し方の違いが面白いと思った。


比較するのは違うのだが、お二人が登場するまで、アマチュアのかたのダンスを13組ほど見ていた後だっただけに、「チームとしてのダンス」「ソロとしてのダンス」という見方を意識させられることが多かった。でも本当にお二人は、いいバランス感覚で、コラボとソロを踊られているのがわかった。「RADIOFISH」というくくりで見ていなくても、それは伝わる人には伝わるものだと思った。


お互いの気配を感じながらコラボを踊り、ソロでは自分の世界観を全力で出し切っているのが見ていてよくわかった。


この日お二人が身に着けていたものでお揃いなのは、黒(紺?)に白の柄が入ったスカーフだけだった。それを、きゅっと首元に同じ形で結び(小さめのスカーフを、たぶんバイアス折りをして結んだシンプルな形。お二人とも、子犬感が出ていた)、トップスは白、ボトムスは黒と色合いはそろえていたが衣装は別々だった。


それ以前のチームのかたたちが、ほぼお揃い衣装でありながら、流れている空気が違う感じがしていたが、お二人を見ながら、息を合わせるってこういうことかと納得させられる一体感があった。同じようなテンションになるように、踊りながらお互いの気配を無意識にくみ取って、バランスを調整しているようにも見えた。


その日、講評でも話題になったが、コンテスト中はいつもより歓声が少なかったらしい。それほど場が温まりきっていないなか、お二人が登場したとき、文字通りオーラが違いすぎて本当にびっくりした。照明がスペシャルになったわけではないが、光を全身まとっているかのように二人は登場した。


ステップを踏みながら、ステージ中央にくるわずかな時間でも、ステージに立てるこの瞬間が嬉しくてたまらないという雰囲気を出しながら登場してきて、見ている側も、これから楽しい時間が始まるんだとワクワクした。


何よりもいいと思ったのは、FISHBOYさんもShow-heyさんも、全身から踊るのが楽しいという熱を放ち、幸せそうに踊っているということが、ひしひしと伝わってきたことだ。


なんというのか、全力で踊りつつ、ステージに上がれているこの瞬間に感謝しているような、喜びがあふれるような踊り方なのだ。お二人のダンスは種類が違うが、この、踊る魂のような、陽炎のように全身から漂う幸福感の波長が、この日とても近いような気がした。


ダンスをしながら視線を合わせたり、お互いがお互いのソロを見ていたりする場面でも、それぞれがいちダンサーとしてリスペクトしあっている関係性が伝わってきて、本当にいい時間が流れていると思った。幸せそうに踊るお二人を見て、ずっとこの姿を見ていたいと思うほどに、今まで見たどの瞬間よりも輝いていると思ったのだ。


5.Show-heyさんは、心の内面を描き出す

Show-heyさんのダンスを見ていると、心のなかに注意深くしまいこんでいた、せつなさとか哀しみに寄り添ってもらっているような気持ちになる。


心の奥底に眠る、開けずにいた引き出しの中身が思い出されて、確かにずっとその感情はあったんだよ、そうだよ、それだよというものを、ダンスを見ている瞬間に、そっと開けられてしまったような感じにさせられた。でも、えぐられるというではなく、Show-heyさんのダンスに心が動くと、知らずに自分の心のドアをノックしていて、内面にある何かにそっと向き合わせてもらったような感覚になった。


それはきっと、Show-heyさんが内面をさらけ出しながら踊る姿を見て、そのポージングや指先一本一本に込められた思いを感じ取り、自分の何かが刺激されたのだと思う。


特に、体勢をかがめたり、全身のシルエットを小さくする細かい動きが、心の内面を描き出していた。そして、そのあとの身体や腕を開くような振りや、指先一本の動きが本当に効果的に映えて、そのダンスが表現している感情に、こんな感覚が以前もあったような既視感を覚えた。


といっても湿度が高いせつなさではなく、どこまでもクールで、軽やかさもある。せつなさをここまでクールにダンスで表現する踊り手に、Show-heyさん以上の人はいないのではないかとすら思う(比較する人を持っていないので、誇張しすぎと思われるかもしれないが、それほど表現力に圧倒されてしまった)。


Show-heyさんのダンスは、新体操のリボンのように、絶えず曲線を描き続ける。角というものをまるで感じさせず、くるくるとずっと曲線を描き、残り香が漂うな雰囲気や、軌道の残像すら感じる。


音のカウントのとりかたも、表裏といわれるワン、エン、ツー、エンというのではなく、カウントという概念すらないのではないかというくらい、カウントをいったい何分割しているのかと思うほど、絶え間なく細かい振りが入っているように見える。


この日、間近でShow-heyさんのダンスを見ながら、Show-heyさんの踊る周辺だけ、空気が甘く、軽く、柔らかくなっているような錯覚がした。


それまで私は動画でダンス見ていて、クラブイベントのダンスを見に行く敷居が高いと思ったポイントの一つに、「ダンスミュージック」の世界観が、歌詞が聴き取れる邦楽ほどに理解できないのではという懸念があった。ダンスが曲にフィットしているのかどうか、そもそも曲が何かわからないと楽しめないのではないかと思っていたのだ。


でも、Show-heyさんのダンスを見て、曲調とダンスの世界観にそのまま身を任せているだけで、十分に見ごたえがあると知り、そこに引き込ませてくれるShow-heyさんってすごいなぁと体の芯からわかった気がした。こうやって楽しもうという事前準備などはいらず、流れる時間に身を委ねるだけで、自然と夢中にさせてもらえて、これぞプロダンサーのなせる業なんだなと思った。心地良い時間が、そこには流れていた。

6.FISHBOYさんは、魔法をかけるように弾く

FISHBOYさんのダンスは、何年も前のものから大量に動画で見てきたつもりでいたが、もうその動画で見てきたものが一掃されるくらい、この日、至近距離で見たダンスが一番凄いと思った。


そう思った一番の理由は、FISHBOYさんの空間と時間の概念を変えてしまうダンスにある。動画を見ているときもそれを感じていたが、目の前で実際に見ると、いい意味で空間と時間に歪みが生まれるのだ。


どこが違うんだろうと思ったら、映像で見るものは、四角い画角のなかにダンスが埋め込まれている感じで、平面的に視聴しているからなんだと気づいた。そして、FISHBOYさんのダンスはその画角を飛び越えて、時間を止めたり進めたりして、空間として、頭や視覚が認識している幅や奥行きや高さを、ぐわんと、ぶるんと変えたりする。


うわ、時間とか空間って、日頃認識しているこのサイズではなくても、もっと世界って広いんだ、パーソナルスペース以上に動けるスペースってあるんだとびっくりした。閉塞したものを打破するかのように踊る姿を見ながら、もっと伸び伸びと酸素を吸って、羽を伸ばして生きられる領域ってあったんだと気づかされた。


日々同じような生活パターンで過ごしていると、たとえばビルの一階しか見ていなくて、あるときふと、視線を上に向けると、二階以上にこんな場所があったんだとはっとするようなことがある。また、いつも見慣れた光景で、ここでこんな夕焼けが見られるなんて知らなかったと気づく瞬間がある。FISHBOYさんのダンスは、そういう、「いつもの空間を非日常なものに変える」動きがある。


POPダンスというジャンルは筋肉を弾くことで表現するものと、FISHBOYさんの説明でだんだんわかってきた。でもずっと、ダンスを見るポイントは、筋肉を弾くダンサーさんの身体能力の凄さだけかと思っていたが、だんだん、弾かれた筋肉が表現する、空間と時間の歪みの面白さを楽しむものなのかと思えるようになってきた。


この日、FISHBOYさんがぽんっと手を開いたとき、本当にシンプルにただ、手をグーからパーにしただけなのだが、その瞬間、びくんとした。うわ、今、手から星が瞬いたと大真面目に思ったくらいだった。


それくらい、今までここになかったものが、この世界に登場したみたいな感じがしたのだ。角度を変えて指先を上に向けて弾いたときも、あ、なんか指から光が出てきたみたいだと思った。


そこにはもちろん、実際には何もない。でも、さっきまでなかったようなものが「ある」ように見える。弾くたびに、空気に魔法をかけるように、無形のものを視覚的に有形にして、質感のなかったものに重さを乗せる。命がない無機質なものに、命を吹き込み生き物のようにする。そうか、画角のなかでわからなかったのは、この生命力の宿る感じなんだと思った。


FISHBOYさんが踊る、勢いやなめらかな感じは画面でももちろん伝わってきていたが、目の前で実際に、空間の質感が生まれたり、時間が今止まったという驚きを感じると、1グラムって、1秒って目に見えるものだったんだろうかとすら思えたのだ。


FISHBOYさんはステージの使い方も伸びやかで、どこまでも広がりを感じるように踊ると思った。空間が広いほど、全部を使い切って全力で踊るんだろうなと思った。


空間を制覇するというよりは、空間の広さを楽しんで、空間と会話しながら遊んでいるかのように本当に楽しそうに伸び伸びとターンをしたり、歩幅を広げたりしているように見えた。事前に振り付けで想定した規模感やサイズで踊るのではなく、空間があればあるほど燃えるという感じもした。


直前に、アマチュアのかたが最大8名くらいのチームで同じステージで踊っていたが、失礼ながら、ステージが広く感じるほど空間を持て余しているようにも見えていた。そのかたたちがステージを使い切れていなかったんだなと後から気づくほどに、FISHBOYさんがソロで踊っているときの、空間のフルサイズでの活用は圧巻だった。


即興で踊って来た場数の多さを感じるような、臨機応変な感性から来た空間のとらえかただった(もちろんeggmanという場所は何度も踊っているでしょうが、慣れた場という感じより、踊りながら空間とのつきあい方をアレンジしているように見えた)。


FISHBOYさんとは、6回ほどお会いしてお話をさせていただいているが、その都度に毎回不思議な気持ちになるのだが、画角のなかでイメージするFISHBOYさんの体格より、ご本人がずっとスレンダーなのだ。


ヒットする瞬間の肩とか、ローリングや体重移動する際の腰回りを映像で見ていると、とても力強くインパクトがあり、映像では「体の厚みや、見えている面の幅」を感じるのだが、実際はとても細くてびっくりする。


お二人を比較するということではないが、Show-heyさんと同じ振り付けを、並んで踊っているからこそわかったことがある。Show-heyさんは立ち姿一つとっても、線を中心に集めるようにより細いスタイル、極端な言いかたをすれば、モデル立ちのようなラインを細くしなやかにするようなイメージがある(実際にはそうではなくても、繊細なラインを維持している)。


対してFISHBOYさんは、バトル形式で対戦型のダンスをしてきたためか、相手をしっかり見据える姿勢で踊るんだなと気づいた。この日のほかのダンサーさんたちを見て気づいたが、ダンス中正面を見続けるかたって少ないんだということだ。足元や立ち位置の確認、振り付け上の演出からか、意外とずっと顔を上げて踊るダンサーさんって少ないのだと思った。


でも、FISHBOYさんはとても姿勢がよく、首が座っていて(赤ちゃんにしか使わない表現かと思うが、この言いかたが一番しっくりくる)基本的に顔をしっかり上げて、中心軸がぶれず、肩の位置が常に正面にあるような印象なのだ。だから踊っている表情の目まぐるしい変化に目が行き、表情の豊かさがとても印象に残る。


この立ち姿もまた、空間の奥行きや幅を変えて、視覚のトリックにはまるかのような、FISHBOYさんがかける魔法なのかもしれない。その魔法を目の前でかけてもらったようで、なんだかとても幸せな気分になるような時間だった。常に目をそらさず挑むような立ち姿でありつつ、ぽんっと、空間に魔法をかけるような姿は、自分のなかにある何かも瞬時に弾いてもらえるようで本当に楽しい。

7.クラブイベントに行こうか迷っているかたに

FISHBOYさんとShow-heyさんのダンスイベントに行って、自分があまりにも感動したので、行こうかどうか迷っているかたに、ちょっとしたクラブ体験記のようなことを書いておきたい。


この日のイベント内容での、eggmanに限定した感想で、クラブイベント全般の応用性がどれくらいあるかはわからない。


でも、何も情報がないよりはいいかと思って書いておく。些細なことで行くのをためらって、現地で得られる感動を取りこぼすのは、本当に惜しいと思っているので、気になっているかたはぜひ足を運んでみてほしい。


何よりも、行きたいと思うなら、行ったほうがいいと思う。もう、これに尽きる。
理由はいくつでもあるが、何より、今この時しか見られない最高のダンスを、至近距離で見られる時間の尊さを感じられることが、一番大きい。当日、受け取ったものの大きさを考えたら、何を迷っていて今まで行かなかったのだろうかという、そっちの後悔のほうが大きかった。


私も先に書いた通り、迷いながらも、FISHBOYさんとShow-heyさんのダンスを一人でも見に行きたいと思って行って、クラブを人生で初体験した。そして、RADIOFISHのライブとはまるで違う、ご本人たちの専門ジャンルのダンスパフォーマンスを見られて大満足だった。


行ったことのあるかたに事前にお話を聞いたりもして、それなら一人でも大丈夫かもと思えたのもあるし、行けば見知った顔に誰か会えるだろうと思って出向き、実際に現地でほかのかたたちとお会いできた。


しばらく一人で見ていた時間も、ダンス自体を楽しんでいたので、全く退屈しなかった。DJタイムや、年齢層が違うかた若いかたたちがいてもまるで疎外感もなく、フロアで踊っているかたたちも少しいたが、大半はなんとなく時間を過ごしているかたが多く、慣れてないかたって意外と多いのかもと思った。


誰かの邪魔をしない限り、誰も自分に白い目を向けたりはせず(誰も自分を特に注目などしない)、観客としてそこにいても別に誰にも迷惑をかけないし、自分さえ楽しもうと思えば、いくらでも楽しめる。


私はフロアの中央くらいにいたが、お二人の、目の前で歓声を聴き取ったとはっきりわかるような耳の動きや、目の輝きや表情の変化、舌をぺろっとするところ(お二人とも)や汗を至近距離で見て、命がけで踊っているんだという息遣いをダイレクトに感じて、本当にびっくりした。ステージとフロアの床の段差は50センチほどで、一番前列はステージのヘリギリギリに座ることができて、まさに触れられそうな距離感で見られる近さだと思った。


何より発見だったのは、ダンサーさんにとって踊るエネルギー源って、観客の歓声なんだなとつくづくわかったことだった。私は以前から動画を見ていて、イエーイとかヒューとかやばーい、と声を出すタイミングのセオリーがあるのだろうか、へんなところで声を出したら恥ずかしいのではと思っていた。


でも結論から言えば、どこで声を出してもいいというのがわかった。なぜなら、歓声が上がれば上がるほど、どのタイミングでもダンサーさんのボルテージが上がるのが伝わってきたからだ。この歓声一つで、きっとまた、次もステージに上がろうとか、もっとがんばれると思えるんだなと思うほどに、歓声ごとに表情が変わるのがわかった。


なかでも、FISHBOYさんはRADIOFISHの楽曲の世界観では、自分は笑って踊らないとも発言されているが、そんなFISHBOYさんが歓声のたびに、嬉しさがこぼれんばかりに、キラッキラに目を見開いて笑うのは見れたのは、こちらも本当に嬉しくなるような姿だった。この一瞬の歓声が聞きたくて、だから踊っているのかもしれないと思うほどで、ああ、この場所がホームで大好きなんだなとつくづく思わされた。


今日は話題に触れないが、ダンス直後にYASさんのご配慮で、今話題のRADIOFISHということでMCタイムがあり(予定外のように見えた)、おもにFISHBOYさんがお話しをした。


その際、5分ほどのダンスでこんなに息が切れるんだというほどの、呼吸の荒さにも驚いたが、何よりも、これまでに見たことがないほどテンションが高いFISHBOYさんがいて、物凄くびっくりした。踊った直後には、全身からアドレナリンが出て、興奮冷めやらぬ状態が来るんだなあと、いかにその5分が濃いものだったのかと、全力のパフォーマンスに頭が下がる思いがした。


服装やフロア環境
それから、現地に何を着ていくかという悩みは誰もが持つと思うが、クラブは暗いので、そもそも人をそんなに認識できないのと、主役は自分ではないと考えれば、特別な服装でなくてもいいと思う。露出度の高まる夏はどうかわからないが、冬場は誰もがそれなりにモコモコしているので、周囲を見渡しても服装が印象に残った人はいなかった。


ただ、300名くらい入るフロアの大半は、床に体育座りが基本の観覧スタイルのため、防寒対策はしたほうがいいだろう。eggmanは、空調が少し寒い感じがした。


フロアの後方に、仕切りなしの喫煙用カウンターテーブルが数席あるため、空気清浄機か何かの影響か、フロアの熱気を想定して室温が高くないせいもあるかもしれないが、いずれにしても人の出入りが多いため、ドアがひんぱんに開閉するので、足元が冷えないようにしたほうが良さそうだ。


持ち物や荷物
持ち物で言えば、入口前で顔写真付き身分証明書の確認をしているので、それは忘れずに。また、入口の手前に靴箱サイズのロッカーがあって荷物を入れられるが、個数が限られている。


ロッカーは外にあるため、一度荷物を入れると再入場ができないこともあり、私は上着もカバンもそのまま持って入ったが、上着はひざかけにちょうどよく、かばんはお尻が痛いときに寄り掛かれたりして、それほど邪魔にはならなかった。DJタイムで踊りたいかたは身軽なほうがいいと思うが、大荷物でなければ持ち込んでも問題ないと思う。


荷物以上に邪魔になったのが、実はドリンクのプラカップだった。会場は時間が深まるとともに人が増えていくため、どんどん前に詰めるように言われて、何度も体育座りのまま移動をして、その都度、飲みかけのカップが邪魔になった。


一度座るとお手洗いに立つこともできないほどの密着度になるため(トイレに行こうと立ち上がりかけて、身動きが取れずあきらめている人を何人も見た)、次に行くときはDJタイムで全員が立ち上がるまで、ドリンクは飲まないほうがいいと学んだ。


撮影可否
あと、撮影に関しては、私が行った日のイベントはアマチュアのかたが多かったせいか、クラブイベント動画でよく見かけるような、スマホでの撮影者は皆無だった(少なくとも私のいた場所から撮影している人はいなかった)。結局、パフォーマンス中の撮影可否に関してはわからずじまいだった。撮影したいかたは、関係しそうなかた(ダンサーさんとか)に聞いてみるほうがいいかもしれない。


チケット手配と料金の仕組み
それから、チケットの手配はそのイベントごとに異なるだろうが、クラブならではのわかりにくいところを補足すると、料金の見方は、「adv 2500円/1D」とあるものは、前売り1ドリンク付き、「door 3000円/1D」は当日券1ドリンク付きということだ。


よくSHiNさんがTwitterで質問に返信しているように、「何とかというチームのゲストです」というと、前売り価格で入れることもあるようだ。ご本人に事前に許可がなくても入場できた、という話も聞いたことがある。


また、前売りを買っても座席指定でないことも多いようなので、当日思い立っていくことも全然可能だと思う。席という概念はなく、基本は自由な場所に座る感じだが、先に入った人から前に詰めるのがマナーなようだ。


私は、前売りで申し込まないと当日ひるんで行かないかもと思ったので、GKKJの問い合わせフォームからチケットの取り置きを依頼して、後日、取り置き済みの返信メールをもらって当日受付で名乗った。


時間
イベント時間はそれぞれ異なるが、DJタイムがスタートの場合はよほど音楽やダンス好きでない限り、スタート時間から行かずに、ダンスパフォーマンスの時間の少し前から行ってもいいだろう。またお目当てのダンスを見た後も、好きな時間に帰って差し支えないと思う。ただ、時間帯が深夜なので、電車のかたはどこかで時間をつぶしたり、遠方のかたは宿泊先の確保は必要だと思う。


こうやってつらつらと、文字にしてしまえばなんてことのないことばかりだ。たったこれだけのことだが、クラブイベントの申込みの方法がわからない、行ったことがある人が身近にいないというだけで、敷居を勝手に高く感じてしまい、行きにくいと言うこともあるのを払しょくしたく、念のために書いておいた。繰り返すが、あくまでこの日のイベント形式ではこうだった、という程度で読んでいただきたい。


かなり長文になったが、書くのを迷っていたのをやっと放出できて、良かったと思っている。


果たしてこれが誰かの役に立つのかはわからないが、情報がないより、RADIOFISHを応援したい思う、誰かの行動の後押しになれば嬉しい。


以前、リリイベの楽しみ方という記事を書いたところ、私の記事を常滑のリリイベに当日の朝読んで、どうしてもリリイベに行きたくなり、関東から気づいたら新幹線に乗っていたというかたの武勇伝を後日知り(そのときは交流がなかったかた)、記事が後押しとなって楽しい思いができたとお礼をしていただいたことがあった。


記事一つ、不安要素をかき消すきっかけ一つで、人は未体験ゾーンに行ける。


私にとって、今回イベントに行こうと思ったきっかけは、FISHBOYさんの「RADIOFISHとソロのダンスの表現方法の違い」の話からソロダンスへの興味が膨らんだ話だったり、ラジオ観覧の場に告知に訪れたShow-heyさんの姿だった。


いつか機会があったら見たいという気持ちでいると、永遠にクラブに足を運ばないような気がして、だから今、この瞬間のダンスを受け取ろうと熱烈に思ったのだ。

8.FISHBOYさん、Show-heyさんに

お二人のダンスの素晴らしさを堪能できる場に行けて、楽しかったです。本当にありがとうございました。


見せていただいたものがあまりに素晴らしく、文字化はナンセンスかもと思いましたが、二週間以上経ち、やっとあの日の高揚感を言葉にしてみました。


まだまだ書く力は足りませんが、ダンスの感動を微力でも表現していき、一般のかたに、ほんの少しでも伝えていける一人でありたいと思って書きました。


手探りで書いているため、ダンスの解釈の違いなどがあれば、どうぞ、ご指摘ください。


長文をお読みいただき、ありがとうございました。


では、また。

          • 追記-----

この記事を書いた時点では、公式動画は公開されていなかったが、後日、主催者のGKKJさんから公式動画が公開されたため、以下にリンクを貼っておきます。


2017.1.14 GKKJ PRESENTS 「EXPRESS vol.8 」- show-hey&FISHBOY
https://youtu.be/O_EhO-QwhKM