人生の旅をゆく

こんにちは、検索迷子です。


しばらく旅をしていない。
そのせいか、旅行に行きたいという気持ちが高まり、
ずっと旅行のガイドブックや、
海外の写真集を眺めていた。


実際に、旅行のための具体的な計画はいつのなるだろう。
なかなか、いざ旅行と思ってもという気持ちにもなっていた。


そんなとき、タイトルに目が行き手にした本がある。
『人生の旅をゆく』よしもとばななさん著、
NHK出版刊だ。

人生の旅をゆく

人生の旅をゆく


未読だが、2もあるようだ。

人生の旅をゆく 2

人生の旅をゆく 2


実際の旅先で感じたことを綴ったエッセイをまとめた一冊だが、
旅に行きたくなるというより、
旅を通して何を感じるかという心を研ぎ澄ませていたい、
という気持ちにさせられた本だ。


旅先の風景、出会った人、
そのとき感じたことが、そのまま自分の今になる。


何をどう感じるか、それが旅のなかで喚起される。
日常とは異なる時間のなかで、そのセンサーが際立つ。
旅とはそういうものなのだと気づかされる。

単純に、バカみたいに


印象的だった一つを紹介したい。
旅先でこういうことを思う気持ちに共感し、
はっとした内容だ。

II
自分以外の種類の生命に寄り添う、そんなことの全てが人生によい味わいを与えてくれる


単純に、バカみたいに

(前略)
たまに海外に行くとほっとする。日本みたいなわけのわからないがんばり方を要求されないからだ。


(中略)
日本では、何か重いものがべったりと空気の中にある感じがする。(略)
私は、現代の要求にのまれてしまい、今はもう現実に参加できなくなったり、とことん体を壊してしまったり、人相が悪くなってきりきりしてしまっていて、もう話もできなくなってしまったような知人がいっぱいいる。
何ものかよ、元の彼女たちを返してくれ! と心から思う。
私の頭の中には、その人たちが元気で生き生きしていた頃の映像がいっぱいつまっている。それは何があっても損なわれるべきではないものだった。
みんなかけがえのない才能、替えられない笑顔、優しい心を持った普通のお嬢さんたちだったのに、どうしてあんなことになってしまったんだ、と言いたい。


(中略)
ストレスが楽しいことや生きやすさを上回ってしまい、壊れてしまう。人生は一度しかないし、自分はひとりしかいない。そんないちばん基本的なことを忘れてしまう。
私たちは、食べるために生まれてきたのではなく、もちろん金のためでもなく、楽をするために生まれてきたのでもなく、子孫を残すためでもなく、長生きするためにでもなく………自分の情熱を燃やすために、向いていることをこの人生でやりつくすために生まれてきたのではないだろうか。愛する人びとへの愛情を抱きながら、たくさんのよき思い出をつくって、それを大事に抱えて悔いなく死ぬためにここにいるのではないだろうか?

自分の情熱を燃やすために、向いていることをこの人生でやりつくすために生まれてきたのではないだろうか。


この一行に出会ったとき、
そうだよ、
と、すとんと思った。


組織に長くいると、
自分を既製品のなかに押し込めることが求められる気持ちがする。
交換可能な存在となり、自分という我をあまり出さないよう、
セルフコントロールが必要になる。


それはおかしなことなのだと、わかってはいたが、
こうして、改めて突きつけられてみると、
その異常さにはっとした。


向いていることをやりつくす、
その一言に出会えて良かったと思う。


旅に出なければ、
こういう状況に気がづかないわけではないことは承知しているが、
旅に出て、日本から出ることで、
人として生きることの基本を気づくというのはあるだろう。


旅に出たい気持ちと、
閉塞感を脱したい気持ちを、
この一冊はともに満たしてくれた気がする。


どんな場所に行っても、
鈍った心には、霞んだ目には何も響かない。
少なくとも、何かを感じ取る力を磨いて、
旅に出て、そして何かを持ち帰れる自分でありたいと思う。


では、また。