『ハーモニー』試写会

こんにちは、検索迷子です。


韓国映画、『ハーモニー 心をつなぐ歌』の試写会に行ってきました。
今日は、その感想を書こうと思います。
映画、『ハーモニー 心をつなぐ歌』の公式ホームページはこちらです。


喜怒哀楽がフル稼働する


映画のチラシに、
「韓国で300万人が号泣した、実話から生まれた感動の物語」とあったが、
鑑賞前はその文字を見て、よくありがちな感動作なのだと思っていた。


でも、正直、号泣した。
後半、ずっと泣きながら観ていた。
観ている観客が嗚咽をこらえられなくなったり、
鼻をすすっている音が絶えず止まらず、
他の人も泣いているのだからと、もう心置きなく泣いた。


喜びや楽しいシーンでは大爆笑が起こり、
怒りのシーンでは理不尽さに空気が震え、
哀しみのシーンでは、こらえきれなくなるという場内の一体感があった。
スクリーン上で起こる出来事全てに、感情移入をして、
どうしてこういうことが、と思う気持ちが幾度も訪れた。


実在する刑務所の合唱団


本作は、韓国の清州女子刑務所に実在する女性合唱団がモデルとなっている。
刑務所ということは、当然、登場するのは服役者ばかりだ。


刑務所が舞台ということで、薄暗いイメージを持っていたのだが、
この女子刑務所は、服役者は表向きにはとても元気に、
メイクをしたり、軽口をたたいたりと人間くさく生きている。
そして、監守とも仲良しだったりする。
それがどこまで実態なのかは不明だが、刑務所とは一見思えないほどだ。


でも、服役者それぞれの犯罪がセピア色の回想シーンで描かれて、
彼女たちは過去のある日、追い詰められて罪を犯したのだと知る。
罪人として、その罪を償うために今ここにいるのだ、
そして、この刑務所での時間は当面ずっと続き、
単調な毎日のなかで生きていくしか道はないのだとわかる。
だからと言って嘆き悲しむのではなく、淡々と毎日を生きている。


そんななかで、合唱団に感動した主人公が、
自分たちも歌を歌いたいと結成したのがこの合唱団のストーリーだ。


でも、本作は、ただの合唱団のストーリーではない。
合唱団に所属する一人ひとりの抱える家族との関係、
自分の過去と未来と向き合い、
折り合いがつけられない思いを歌を通して浄化させたり、
思いを託したりということなのだ。
だから選ばれている歌は、とてもメッセージ性があるものになっている。


18か月だけの母親


主人公の女性在監者ジョンヘは、刑務所内で出産した。
決まりにより18か月だけ刑務所で子育てが許されている。
だが、その後は養子縁組によって離れ離れになってしまう。


歌が下手だった彼女は、子守歌さえ満足に歌えない。
その彼女が、すくすくと育つわが子との時間を一日一日を慈しむよう、
生きている姿がせつない。
そして、歌によって楽しい日々をより深めていこうとしていた。


どんなに愛するわが子でも、自分が刑務所にいる以上、
外の世界を見せることも育て上げることもできない。
それがどれだけつらいことか。
養子縁組の日、一度は別れを告げて、なごり惜しさにその場に引き返しても、
自分にできることは何もないのだと知ってしまう無力感。
彼女は、歌があったことで未来に光がわずかに灯った。


ジョンヘを演じた、キム・ユンジンは、
お調子者とも見える元気な女性であり、
子どもには愛情あふれる母親であり、
哀しみのなかでは壊れそうな繊細さを見せていた。
彼女の喜怒哀楽に、思いっきり感情移入をして観ていた気がする。

Wikipedia - キム・ユンジン


閉ざした心を美声で開く


新入りの服役囚として入ってきたユミは、
人と衝突するばかりでなく、自分をも痛めつけてしまう痛々しい少女だった。
音大出身ということでその美声によって、人と心を通わす気持ちを取り戻していく。


ユミを演じたカン・イェウォンは、
映画『TSUNAMI』で、レスキュー隊員を振り回す女子大生を演じていた。
あまりにも役柄が違うため、同一人物と気がつかなかった。
彼女は実際にも音大出身のようです。


以前、映画『TSUNAMI-ツナミ-』のレビューをしました。


死刑因として指揮者として


この映画にいい味を出してくれたのは、
死刑因ムノクを演じた、ナ・ムニだった。
家族に見捨てられたムノクは、刑務所内では皆の母親のように温かかった。


音大で元ピアノを教えていたときに罪を犯した心の傷もあり、
合唱団のとりまとめをなかなか聞き入れてはくれなかったが、
彼女が心を揺り動かされ、再びピアノを弾き始める。
そして、合唱団の歌唱指導、指揮者としてなくてはならない人物となっていく。


私は、このハーモニーの映画は、
キム・ユンジンが主人公の映画ではあるが、
ナ・ムニのストーリー全般に引き寄せられてしまった。


今、たとえどんなに模範因として生きていても、
誰かに必要とされていても、それでも罪人なのだろうかと、
何度も考えさせられた。



それはそれ、これはこれと現実に返る


このほかにも味のある女優さんがたくさん登場し、
どの女性もこの映画のハーモニーを奏でる一員なのだと思った。


誰もが愛らしく、ここが服役している人たちだと忘れるような、
そういうキャラクターだった。
合唱団も見違えるほどうまくなり、表情が生き生きとしていった。


でも、合唱団が外部講演に招かれたときの屈辱的な出来事、
そして、ラストに向かって、
社会とは、制度とはそういうものなのかと怒りにも似た、
やりどころのない思いがする。


もう、主人公が子どもと別れたシーンより先に、
これ以上つらいことはないと思ったのに、
なぜこれほどまで、なぜこんなことまでと胸が締め付けられた。



最近観た映画のなかで、特に女性には観て欲しい映画ですね。
もう、あらゆる感情という感情が全開になります。


感動というだけでなく、苦しいほどのせつなさで泣けてきます。


号泣のあと、
いろんなことはあるけど、
それでも、自分は今日も明日も生きていくんだ、生きるしかないんだと、
最後は静かなメッセージをもらえます。


では、また。