ワインバーグの本を読む(6)

こんにちは、検索迷子です。


今日もワインバーグの本を読む(3)の続きです。
先日は、ワインバーグの本を読む(4)では第1〜4章、
ワインバーグの本を読む(5)では第5〜10章をご紹介しました。


今日は、『パーフェクトソフトウエア −テストにまつわる幻想』の11章からの内容です。

パーフェクトソフトウエア

パーフェクトソフトウエア

『パーフェクトソフトウエア −テストにまつわる幻想』の第11章からの内容


以下、抜粋引用します。
見やすさを考えて、章ごとに区切りますが、内容については一切手を加えていません。

第11章 情報伝達のプロセス−(1)取り込み


まとめ
 取り込みは能動的なプロセスである。取り込みを制限する要因、情報源、先入観の入った意味づけによってデータがどのように風味づけされているかといったことに注意しよう。データを押し込まれるという受け身の立場ではなく、少なくとも何を取り込むかは自分でコントロールできるはずである。


よくある間違い
1.どのような情報が欲しいのかよく考えない。
2.欲しい情報を積極的に求めない。
3.取り込みと意味づけをごっちゃにする。
4.テスト担当者に、特定の場所でバグを探すことを禁じる。
5.テストのために十分な機器やツールを用意しない。
6.「黄金の象シンドローム」に屈する。

ここでいう、「黄金の象シンドローム」について補足入力します。
何の、ぞう?
と私が疑問に思ったためです。本書の実際の6.の解説の全文です。

6.「黄金の象シンドローム」に屈する。
ソフトウエアテストの専門家、ジェームズ・バックは、近年のテストに見られる重大な病理のひとつを「黄金の象シンドローム」と読んでいる。白い象は単なる無用の長物だが、それが黄金でできていて費用がかかっていた場合、とにかく使ってみようと考える人が現れる。高価なテストツールが、設計が悪くて信頼性が低く、ツールの都合に合わせた方法でしかテストできないしろものだったりすると、なにかとトラブルの元になる。そのようなツールは、安ければ迷わず捨てることができる。ところが高かった場合、それを買った人は失敗したと思われたくない。そのために、もっと大きな失敗をする。

第12章 情報伝達のプロセス−(2)意味づけ


まとめ
 データはそれだけで意味をもつものではないし、明確なものでもない。取り込んだデータに意味づけするのは人間であり、意味づけのしかたは人によって異なる。同じデータに何通りもの解釈があることを心に留めておくべきである。


よくある間違い
1.データが何を意味するのか、すぐに結論を出そうとする。
2.前もって期待される結果を文書化せずにテストを実行する。
3.前もって期待される結果を文書化しすぎる。
4.1人で意味づけしようとする。
5.意味づけによって完全に意義が決まると考える。

第13章 情報伝達のプロセス−(3)意義づけ


まとめ
 私たちの感情は、ものごとがいかに重要かという情報を伝えてくれる。感情に注意し、耳を傾け、些細な問題より先に重要な問題に対処すれば、手に入った情報に対して最善の策をとることができる。


よくある間違い
1.修正の難しさを意義と混同する。
2.反応速度の意義を正しく判断できない。
3.意義に政治的な意味があることに気づかない。
4.意義づけに「合理的」または客観的な方法があると信じている。
5.新しい情報が手に入ったときに、意義づけをやり直さない。
6.意義づけが「子守歌の言葉」に左右される。
7.プロジェクトチームにおける自分の行動の意義を無視する。

第14章 情報伝達のプロセス−(4)反応


まとめ
 テストまでプロジェクトが正しくマネジメントされていなければ、もはや適切な反応はほどんど不可能である。多くの場合、最初からきちんとやり直す以外に、プロジェクトを救える反応はない。


よくある間違い
1.運にたよる。
2.スケジュールに間に合わせるため、テストの時間とリソースを削る。
3.テストによってプロジェクトの現状に関する情報があきらかになった時点で、スケジュールと見積もりの調整をしない。
4.プロセスデータを収集しない。
5.テストがいつ始まるか理解していない。
6.テストしてもしかたないものをテストする。

行動経済学的に読み解く


「黄金の象シンドローム」は、行動経済学でいう、
損失回避性や現状維持バイアス
保有効果や、後悔回避性に近い概念で、損切りができない感情なのでしょうね。
覚えておきたい用語です。


ちなみに用語を補足すると、次のとおりです。

日本ブランド戦略研究所−ブランド用語集より引用。

保有効果とは
【英】endowment effect
保有効果とは、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる心理現象のことをいう。


損失回避性とは
【英】loss aversion
損失回避性とは、利益から得られる満足より同額の損失から得られる苦痛の方が大きいことから、損失を利益より大きく評価する人間心理のことをいう。


後悔回避性とは
【英】regret aversion
後悔回避性とは、後悔を避けたいという信念が意思決定に大きな影響を与える人間心理のことをいう。


これらを行動経済学的なアプローチで読むなら、次のサイトも面白いと思います。

読売ADリポート(オッホ)−行動経済学は消費者をどう見ているか(明治大学教授 友野典男氏)


――先ほど、消費者は自分の経験を基にできるだけ失敗しない選択をすると言われましたが、これはどういう心理から出てくる行動なのでしょうか。


 行動経済学では、「損失回避性」や、そこから導き出される「現状維持バイアス」という言葉で説明されるのですが、その一番単純な例が、「同じ物を買ってしまう」という行動です。
 「損失回避性」というのは、人は同額なら損失を利得より強く評価する傾向を言います。例えば、50%の確率で1000円もらえるが、同じ確率で1000円失うくじがあったとしても、大抵の人はそのくじを引くこと自体を拒否します。1000円をもらう確率と失う確率が五分五分だとしても、人は損失の方を強く評価するからです。
 また、ランチの時にいつもの定食屋につい足を運んでしまうのは、下手な店に当たってしまうよりはという気持ちが働くためで、これが「現状維持バイアス」です。
 ただ、商品選択を誤っても損失の少ない商品、例えばスナック菓子のようなものでは損失回避の力は弱まると思います。逆に、マンションなどの高額物件では損失回避性は大きく働くということです。


友野典男先生は、『行動経済学−経済は「感情」で動いている』の著者でもあり、
こうした行動経済学的な知識があれば、ワインバーグの本も面白く読めます。

行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)



今日は、14章まで。
明日以降、最終章までを入力します。
思いのほか、ちょっと立ち止まって考えてしまう言葉が多くて、
入力がはかどりませんが、それだけ読み応えのある本なのです。


では、また。