理科系の作文技術

こんにちは、検索迷子です。


30年前に発行され、今もなお読み継がれている作文技術の名著を読んだ。
木下是雄(きのした・これお)著、『理科系の作文技術』だ。
この本を良書として紹介している人は多いが、
最終的に手にしたきっかけは、以前ご紹介した克元さんの本にもあったからだ。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))


木下さんの著書は、レポートを書く際に、人から勧められて以下を参考にしたことがある。

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)

レポートの組み立て方 (ちくま学芸文庫)


あえて、理科系とついているため、自分には関係なさそうかと思って手にしたが、
思いのほか、この本が実用的であることに驚いた。
もっと早くに読んでいればよかったと思うことが多かった。


理科系としているが、本書の序章によると、
「理科系の人が仕事のために書く文書で、他人に読んでもらうことを目的とするもの−だけを対象として取り上げる。それらを一括して理科系の仕事の文書と呼ぶ」としており、
無駄のない、他人に読ませる文書を書く手法が盛り込まれている。


作文技術の本は多数あるが、30年近く経ってもこの本は使える本だと思った。
30年前は印刷技術も違い、事例や出版事情はハードの変遷はあるものの、
むしろ、数多くの本よりもコストパフォーマンスが高いと思う。


文書技術面については、良書は他にも多数ある。
この本は、それだけでなく、本を作るために欠かせない要素である、
統一表記や構成、記号類、組み方など、他の本には見られないことが出ている。


こうした本を形作る要素は、現在では、印刷関連の本にしかなかったり、
校正や校閲に詳しい人の領域のと思われているため、
特に、ワープロが普及してからは、記載してある本が非常に減ったように思う。


今は、文章を手書きで書く人は激減して、ワープロソフトを使ったり、
ネット上で直接書き込んだりと、誰でも入力が簡単にできる仕組みができている。
また、驚くほどタイピングが早く、単純入力が得意な人も多い。


ところが、誰でもできるゆえに、雑な入力によるタイプミス
整合性のとれない文章や、表記の不統一、文体や文末のムラなど、
プロとは思えない文章や体裁が出回っているのも事実だ。
誰でもすぐに入力して、インターネット上で公開できるメリットでもあり、
体裁にこだわらない文章や体裁や、組み方が出回っている。


ツールを使って自動化が進むのは望ましいことだが、
反面、文章をわかりやすく伝える技術の一部である「整合性」が損なわれるのは、
とても残念だ。


同じ言葉を表す漢字が、何種類も出てくるだけで、
読み手は同じモノなのかというストレスを感じる。
文字変換されたものをそのまま入力して、見直すことも、
事前に表記ルールも作成しないまま作られているものも、
私はとても気になる。


当人は、すぐアップできたと思っていても、
読み手は行きつ戻りつしていたりすることもあるのだ。
それが商用サイトなら、企業の校正や、校閲部門、QC部門の有無や、
力の入れ具合まで透けて見える。


最近ではなかなか、書式の体裁そのものを体系的に伝える情報源が減ってきた。
情報を構成する要素について、この一冊はコンパクトに伝えてくれている。
一部は古いとはいえ、校正記号を赤字で印刷してある新書なんて、
今はあるのだろうか。
企業にいて、書類に赤字を入れるという作業は校正者でなくとも意外と多い。
ちょっとした書類の訂正に役立つ。ぜひ、これは参考にしてほしい。


作文技術についてはいうまでもなく読み応えがあり、
さらに、情報加工の面でも貴重な情報が多く、
一冊の情報量としては文句なしに応用可能なことが多い。


括弧類に全て、正式な名前があるとか、そういうことだけでも、
知っていると何かと便利です。


書類を作るということは、読み手があってのこと。
この本が読み継がれてきた理由が、本当に良くわかります。
読み手がわかりやすく、見やすく書類を読むために、
どれだけ細やかな心配りができるか、その精神を教えてくれます。


どんなにツールが高機能になっても、配慮が行き届いた文書は書けません。
使う人が文書にはそのまま出てしまうものです。
ここ間違ってるよと、書類のミスを指摘される人が多い人は、
どんな項目を気にして書類を作ればいいのか、
本書で学ぶとよさそうですね。


雑な文章を書く人は、それだけで信頼されなくなっていきます。
この人の文章は細かくチェックしなければと、
他の人の仕事を増やしますからね。


では、また。