望みをかなえる脳

こんにちは、検索迷子です。


脳について一般の人にわかりやすく書かれた書籍は、
興味を持って手にしてみる。
脳神経外科医の林成之(はやし・なりゆき)さんの本、
『望みをかなえる脳』『<勝負脳>の鍛え方』を読了した。

望みをかなえる脳

望みをかなえる脳

<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)

<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)

『<勝負脳>の鍛え方』については、2006年発行ということと、
掲載事例などが『望みをかなえる脳』と一部重複している点もあるため、
どちらか一冊ということであれば、『望みをかなえる脳』のほうがいいかもしれません。


脳について興味があるとはいえ、医療用語がわかるわけではなく、
海馬がと書いてあっても、図を参考に自分の頭をさわってみても今ひとつ、ぴんとこなくて、
どこの場所が脳かというリアリティがもちにくい。


そのため、脳関係の本を読むときは、メカニズムを理解するよりも、
行動や思考を変えて、脳を活性化するものという大雑把な読み方をする。


『望みをかなえる脳』で印象に残ったのは次のエピソードだ。
林さんは、本書のプロフィールによると次のような功績をお持ちである。

サッカー日本代表監督のイビチャ・オシム氏など多くの脳死寸前の患者の生命を救った脳低温療法は、世界にその名を知られる大発見となった。また、2008年の北京オリンピックでは連続金メダルを達成した北島康介選手をはじめとする競泳日本代表陣にアドバイスを行い大きな結果を生んだ。


医師として世界的に影響を与える高度な技術を持ち、
さらに脳を活用する方法をアドバイスできるといった、実践と理論の両面で本書は参考になるだろう。
印象的なエピソードがたくさんあったため、気になったエッセンスを取り上げる。
かなり引用が長くなるが、気になる箇所がそれだけ多数ある本だった。
なにか一つでも響くことがあるといいなと思います。

「仲間になりたい」本能を活用した最強の組織づくり

最強の救命救急チームをつくり上げたことに成功した経験として、次のくだりがあります。

プロローグ 脳では何が起こっているか?
「仲間になりたい」本能を活用した最強の組織づくり


・構成員の「仲間意識」を高めることでチームワークを結集すると同時に、メンバー個々の能力も最大限に発揮できる組織づくりをめざした。そのために、メンバーはいつも明るく前向きな姿勢でそれぞれの仕事に取り組み、「むずかしい」とか「疲れた」といった、"否定語"を使わないようにした。
・(中略)ミスや不足部分も相互にカバーしあえるようにし、文字どおりの「統合救急医学」を実現していった。
(中略)
とりわけ目標達成のために強く意識したのは、スタッフの「心」の問題、つまりチーム内の仲間意識を高めることでした。私たちの脳は、「生きたい(自己保存)」「知りたい(学習)」「仲間になりたい(同種保存)」という三つの大きな本能をもっています。
 このうち「仲間になりたい」という本能は、自分の生まれた国を理屈抜きで好きになったり、身内の人間を自然に大切にしたりする感情のことで、同種のものを愛したり同化したがる本能を人間の脳はあらかじめ備えています。自分の所属する集団を好きになり、その仲間になりたい、あるいは仲間や集団のために自分の力を尽くしたいという気持ちは人間にとってきわめて自然なものなのです。
(中略)
 そうした脳の特性やメカニズムを生かした、脳科学に基づいたチーム構築を行うことで、私たちはケタ違いの救急医療活動を実現したわけです。
 その成果は小さくないもので、多くの新しい知識を得るとともに、いくつかの画期的な治療法を開発することもできました。世界で最初に編み出した「脳低温療法」−脳の温度を低く保つことによって損傷した脳を回復させる新しい脳蘇生治療法−は、その大きな成果の一つです。
 また、治療や研究を重ねていく過程で、否定思考は脳の働きを減殺してしまうこと、脳は一貫性や左右対称を好むこと、脳は競争よりも共存的な性質を備えていることなど、脳のもつさまざまな特性が明らかになってきました。さらに、新しい考えや創造的な発想、高度な集中力や判断力のもとになる「思考のうねり」の仕組みが解明されるなど、目標達成のための脳の可能性についても多く知ることになりました。

マインド・クオリティ(MQ)

第1章 頭がいいとはどういうことなのか?
心のよさは頭のよさ−「マインド・クオリティ(MQ)」


それはひとえに仕事で成果をあげるには、コミュニケーションや対人関係能力、高い意欲や協調性といったIQでは測定しきれない「人間力」が必要とされるからです。その総合的な能力はIQだけに秀でた学校秀才タイプにはとうてい満たすことができないものなのです。
 真に優秀な人材はこの人間力にもすぐれているのであり、また、すぐれた人間性を備えた人でないと仕事の場で高い技量や能力を十分にはっきすることはできません。では、人間性の具体的な中身、すなわち、頭の良さの土台となる「心の条件」にはどんなものがあるでしょうか。
 それが図表(82・83ページ)に掲げた「マインド・クオリティ(MQ)」です。このMQは私が考えたものですが、これによって頭のよさの基礎となる心の条件、つまり高い能力につながっていく人間性をかなり正確に判定できる評価システムといえます。
(中略)
このMQ表は脳の働きを活性化して頭のよさをつくり出す心の条件でもあるのです。みなさんのお仕事にもきっと役立つと思いますので、自分がどれぐらい達成しているか確認してみてください。
 簡単に説明しておけば、MQ表は三つに分かれています。人間が基本的に備えておいてほしい心や態度(基本的MQ)、日常生活を営むうえで身につけておいてほしい心や態度(日常生活MQ)、仕事を行う氏のプロフェッショナルとしてもっていてほしい心や態度(職業的MQ)です。
(中略)
 心をよくしようと努めるうちに頭もよくなり、勉強や仕事において目標を達成し、たしかな成果をあげる力を備えていることをかならず実感できるはずです。

最終的に何をしたいのか

第2章 ケタ違いの成果をあげる脳
目的と目標を取り違えるな


 アメリカの心理学者マクスウェル・マルツはサイコサイバネティックスという目的実現理論を唱えて、人間が目的を達成するにはどうすればよいのかを明快に説きました。
(中略)心の中で成功のイメージさえ保持できていれば、人はかならず成功の地点までたどり着けるという理論を考え出したのです。「思えばかなう」という成功哲学の基礎となるような理論で、それを実践すればおのずと成功に近づくことから、サイコサイバネティックス理論は成功の「自動達成装置」とも呼ばれているようです。
 その内容もきわめて明快で、「目的と目標を明確にすること」「目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する」「目的を達成するまで、その実行を中止しない」の三点に集約されます。
 つまり、最終的に何をしたいのか、その目的を明確にする。その目的を達成するために何が必要なのか、具体的な目標を立てる。その目標を一つずつ堅実に実行していく。こうした段階を着実に踏んでいくことで、私たちは最終目的まで確実に到達することができる。その三つのプロセスを実践するかしないかが成功する人としない人を分けるという、拍子抜けるするほどシンプルな理論です。
 しかし実際に、この理論を実践するのはそれほど簡単なことではありません。たとえば第一の、目的と目標を明確にする点においても、私たちはその二つをつい混同してしまう過ちを犯しやすいものです。
 お金をためて充実した暮らしがしたい。このとき充実した暮らしをすることが目的で、そのためにお金をためることは目標(手段)です。しかし、いつのまにかお金をためることが目的化してしまう。こういう過ちを人間は犯しがちなものです。
(中略)いい結果を得るためにはなにより、いいプロセスを経ることが重要ですが、それができないために目的を達成できなくなるのです。
 企業社会でもこうしたことは少なくないのではないでしょうか。企業にとって儲けは最終目的ではありません。企業にとって最大の目的は消費者の生活向上と、それを通じての社会貢献にあるはずです。そのための目標の一つとして、売り上げや利益を上げることがある。ところがいつのまにか、目標の一つにすぎない「儲ける」ことが最大の目的になってしまう。

二つ以上の得意技を持つ

第2章 ケタ違いの成果をあげる脳
なぜ「相手の長所を打ち砕く」勝負法が有効なのか


メジャーリーガー・イチローのすぐれた技量についてはここで指摘するまでもありませんが、私がとくに彼にプロを感じるのは初球打ちが多い点です。野球においては、初球というのは最大といっていい勝負どきです。
(中略)一般に日本人選手は初球に手を出さない人が多いといわれています。じっくりと自分が打ちやすい球が来るのを待つ。こういうタイプ、いわゆるスロースターターが多いのです。これは日本人特有のメンタリティと関係しています。国技である相撲などがいい例ですが、何度か仕切りをするうちにだんだんと気合を入れていく。そのように最初は、相手の調子や周囲の様子を見ながら自分の調子を高めていく勝負法をとる人が日本人にはとても多い。
 しかし、これは思考や機能が「一気に高まる」という脳の特性から見れば、あまりいい方法とはいえません。やはりイチローのように、最初から能力全開で行くやり方が脳科学的には理にかなっているのです。
 同様に、勝負のときは「相手の弱点を突く」という人が多いものです。(中略)しかし、その方法は勝負のレベルが低いうちは有効でも、レベルが高くなってくると通用しないことが多くなってきます。
 なぜなら、トップレベルの選手になればなるほど弱点は少なくなるからです。
(中略)では、目標達成のためにはどうしたらいいのか。相手の弱点を突くのではなく、逆に相手の長所を打つ砕くことが肝要です。つまり相手の得意技を打ち破るのです。それでこそ相手に与えるダメージもより大きくなり、また、選手としての自分の力を大きく伸ばすこともできる。それがポジティブで前向きなセオリーだからです。
(中略)この話を反対の観点から見ると、相手に自分の得意技を打ち砕かれたときの対処法もわかってきます。それは二つ以上の得意技をもつことです。仕事でいえば、これは人に負けないという能力や専門性を複数もつこと。そうすれば一つを封じられても、別の能力を発揮して窮地を脱したり、変わることなく成果をあげることができます。
(中略)二つ以上の能力や専門性、多様な思考法などをもっていると、それぞれの間の相違点をテコに脳はより深い思考をすることが可能になる。レオナルド・ダ・ヴィンチほどの万能の天才でなくても、物理学者が音楽を愛好したり、絵描きが小説も書いてみたり、一つの専門性だけにとどまらずに分野を超えた活動をすると、そこに相乗作用が働いて、さらに活性化される仕組みを私たちの脳は供えているのです。

失敗を許し、弱点を認める

第3章 正しい脳、間違える脳
人の失敗を許し、自分の弱点を認めるという強さ


 自分を守ろうとする仕組みが行きすぎると、自分自身の破壊につながってしまう。これは脳のもつ怖い一面であるといえます。この脳のもつ"自己攻撃性"は人間の本能と深く関係しています。
(中略)「生きたい」という本能は、生きるために自分を守りたいという強い考えを私たちの中に生み出します。それが自己保存の本能です。
(中略) ところが、この自己保存機能がまた過剰に働くと−脳の防衛反応と同じように−自他への攻撃性を生んでしまうのです。
(中略)では、その自己防衛が自他への攻撃へ転じてしまいやすい脳や本能のもつ欠点を克服するにはどうしたらいいのでしょうか。それは脳科学的に見て、主に二つの方法があると思われます。
 一つは前に述べた、相手の「失敗を許す」寛容さです。もう一つは、自分で「自分の弱点を認められる」という素直さです。
(中略)自分の弱みの正確な分析と素直な表明は立派な人材育成法の一つになりうるものです。それができる上司は人を育てるし、それができる部下は伸びていく。それはまた、失敗を許し、弱点を認め合う「人を育てる組織」の形成にもつながっていきます。

望みをかなえる脳

最後に、本書の書名でもあり、表紙扉裏にも掲載されている、
『望みをかなえる脳』7つのポイント、です。

第4章 感動が脳を生かす
「望みをかなえる脳」のつくり方


1.自分の弱点を明確にし、期限を設けて解決する。
2.勝負を好きになり、先生や上司を信じる。
3.空間認知脳を鍛える。
4.決断・実行は自分の意志で行う。
5.否定語を使わず、極限の訓練で心技体の力を発揮する才能を磨く。
6.勝ち方にこだわり、成功や勝利の達成を阻止する脳の落とし穴にはまらない。
7.素直な性格を磨き、無我の気持ちでシータリズムによって勝負をかける。

引用は以上です。
なんとなく、経験や感覚でこうかもしれないなと思っていた部分、
経験則を実際の科学によって裏づけを得たような気持ちになったこともあるでしょう。


望みをかなえる脳を作りたいものです。


では、また。