(43)ユーミンがSMAPに伝えた『守ってあげたい』という思い

こんにちは、検索迷子です。


今日は、10月31日放送『スマスマ』のS-liveでの、松任谷由実さんとSMAPがコラボをした『守ってあげたい』について触れたい。


本来ならもう一曲のパフォーマンス曲である、新曲の『Smile for me』についても触れたいところだが、2曲の世界観は異なるため、特に印象深かった『守ってあげたい』だけをレビューする。

宇宙図書館(通常盤)

宇宙図書館(通常盤)


私はこれまで、数曲ではあるがSMAPの楽曲のレビューをしてきて、SMAPが歌っている場面が本当に好きなんだなと毎回思う。特に、最近の『スマスマ』のS-liveは、どれも書き残したくなるような質の高さで、番組後、書こうかなぁといつも思う。


でも、Twitterの反響にそのまま感化されるのではなく、自分が独自に書けることってあるだろうかと思ったり、下調べの時間がかかることから気軽に書き出せないこともあり、しだいに時間が過ぎて、書けずじまいのことも多い。


今回のパフォーマンスは、ユーミンが番組放送後の11月1日にTwitterでつぶやいた言葉を見て、『今』このタイミングを逃しては、後悔するという思いがわいて書こうと思った。

@yuming_official
松任谷由実】今、マイケルが亡くなったときみたいな気持ち。なんでもっと早くSMAPを応援してること、堂々と表明しなかったんだろう。
11:31 - 2016年11月1日


お金をもらって記事を書いているわけではないからこそ、自分のために書き残したいと強く思うものは、その本能に従おうと思った。言葉にしない感情は、自分の内面だけにしまい込まれ、表面的には「感想ゼロ」の状態になる。誰にも何も伝わらない。


だから、全力のパフォーマンスをしてくれた演者や、関係するスタッフに感謝の気持ちを伝えるには、受け手の自分も振り絞るような思いで、言葉にするしかない。

『守ってあげたい』の曲への、木村さんと中居さんの思い

まず、この曲にまつわる背景を少し書いておきたい。


今回のパフォーマンスが「新曲+もう一曲」のなかで、1972年(中居さん、木村さんが生まれた年)に荒井由実として活動をはじめ、40年以上第一線で活躍して楽曲数の多いユーミンが、この曲を選んだのは偶然ではないように思う。推測ではあるが、そう思った理由を2つ書く。


1つめは、ユーミンは『スマスマ』2006年5月22日放送以来、今回2度目の出演だが、前回の2006年出演時に話はさかのぼる。そのときのエンディングトークで木村さんが、その日は歌われなかった『守ってあげたい』が、中学時代に好きになった女の子とリンクする思い出深い曲、という話をユーミンに伝えていた場面があった。


そして、そこにかぶせるように中居さんが、「俺も好きなんだけど、、」と恥ずかしそうに話し、木村さんが中居さんと同じ曲が好きだという事実に照れたように「ふざけんな」と言っていた。この、どっちがよりこの曲が好きかをまるで競い合うかのような会話に、ユーミンが「照れるな」と発言している場面があった。こうした、木村さんと中居さんが好きな曲だったということも、選曲理由の一つだったのだろうかと思う。


少し補足すると『守ってあげたい』は、このエンディングトークをリアルタイム視聴していた際に、あれ、木村さんが中学時代にリリースされた曲だったかなと思った覚えがある。


この曲は1981年6月21日にリリースされた楽曲で、1989年6月28日にCDシングルで再リリースされている。72年生まれの木村さんと中居さんは、発売時に聴いていたのではなく、思春期のどこかで耳にして、この曲に心を奪われた時間があったのだと思うと、ロングセラーの威力を感じる良曲だということが再確認できる。このように、彼ら2人がこの曲を過ごした時間があったということが、選曲理由の1つめかと思わされた。


もう1つの理由は、ユーミンが今回の出演にあたり、彼らに送りたいメッセージが、この楽曲に詰まっていたとのでは思わされたことにある。


この曲、ざっくりと歌詞を解釈すると、「子供時代をともに時間を過ごした仲間が、大人になって少し落ち込んでいる状態にあると知り、私が今の苦しみからあなたを守ってあげたい、だから昔の夢を忘れずに夢をつかまえてと願う」といった、大切な存在への愛を伝える歌だ。


SMAPが現在置かれている状況、まさしく10代前半からともに時間を過ごした仲間同士が、不条理な状態のなかにいて空中分解の間際に追いやられているなかで、あなたたちを守ってあげたい、だからこれからも夢を持ち続けて、というダイレクトなメッセージをこの曲を通して、ユーミンは伝えようとしてくれたのではないかと思った。


選曲理由を推測するだけでも胸が熱くなるのに、パフォーマンスの素晴らしさは、それ以上のメッセージをくれた。

ユーミンの歌う姿に、歌にできることの幅広さを知る

視聴直後、最初に思ったのは、歌にはこんなに深く対話ができる力があるのだということだった。歌詞がフィットしているということ以上に、歌を歌っている表情、立ち姿、視線、指先など、全身でユーミンSMAPが対話をしながら歌っていることが伝わってきて、あらゆる場面で心臓をわしづかみにされた。


特に、ユーミンの包容力のある、人間味にあふれる歌い方の意外性はとても大きかった。ずっと目尻を下げて微笑みを絶やさず、SMAPに視線を向けて、手を振ったり、うなづいたり、前傾姿勢になったり、手を伸ばしたりしながら、ユーミンは歌を通してSMAPに語りかけていた。そして、SMAPもそれを受け取ろうとしていた。


数々の偉業を成し遂げ、大ステージの経験が豊富なユーミンの歌のイメージは、金属的な声質から、ポーンと空中に声を飛ばすような感じだった。歌詞は「恋愛ソングの教祖」とも言われることから、心にダイレクトに届くが、大衆向けに広く歌を届けるタイプのかたかと思っていて、目の前にいる、対少数に直接メッセージを伝える歌い方をするかたという印象は薄かった。


そういえば、2011年の東日本大震災の被災地支援で、NHKと共同で「(みんなの)春よ、来い」プロジェクトを行っていたことで、『第62回NHK紅白歌合戦』に出演時に、声が震えていたのを観た際は、感受性がとても豊かなかたなんだと驚いたことを思い出した。


繊細な感情を表す歌詞と同じほどに、繊細な感覚をくみ取り、それが歌う姿にダイレクトに出るかたなんだろうかと、今回、見方をあらためようと思うほどに、歌っているときの姿が慈愛に満ちていた。


歌って人をこうやってダイレクトに包み込む力を持ち、全身でその気持ちって伝えられるんだとはっとするほどに、このときのユーミンは包容力にあふれ美しさを放っていた。


特に、円形になってSMAPと向き合って歌う姿は、ユーミンは自分がどのようにカメラに撮られているかという意識は皆無で、目の前にいるSMAPに心の底から語りかけるように歌っていた。歌って、歌である以前に言葉そのものなんだと思わせてくれる、そんな素敵な歌いかただった。

『守ってあげたい』の歌いだしからのパフォーマンスを振り返る

『守ってあげたい』を歌うSMAPは、私がこれまで歌の映像を観てきたなかでも、あれ? と思うような表情をしていた。SMAPユーミンのパフォーマンスの流れを、以下に歌いだしから振り返ってみたい。


冒頭、ユーミンの正面向きのソロから始まった歌は、歌いだしすぐに「その瞳を」で稲垣さん、草なぎさんのほうに視線を向けて、「忘れないで」の歌詞で、横向きがちに立っていた木村さんに視線を向け、目尻を思いっきり下げて木村さんに右手を振っている。木村さんは歯を見せて恥ずかしそうに微笑みを返している。そして、香取さんはその歌詞の時、右手握りしめて肩あたりで揺らし、歌詞を口ずさんでいる。草なぎさん、稲垣さんも穏やかな微笑みでたたずんでいる。


この「忘れないで」の歌詞のとき、ユーミンは語尾を少し揺らしながら歌っている。このあとの他の箇所でも、ユーミンは語尾揺れをしていて、ああ、いろんな感情を込めて歌っているんだなと思った。歌のクオリティにこだわるなら、撮影をし直すほどの箇所もあったのではないかと思うが、この語尾揺れの感じがまさしく、ユーミンの思いが伝わるライブなのだと思った。


そのあと、「包むように」で右手をふわりと香取さんと中居さん方向に広げるが、中居さんはちょっと照れたように右側に視線をそらし、香取さんは少し歯を見せて笑っている。このとき、木村さんと中居さんは、ユーミンを中心に対角線上にいるかのように、右側の同じ角度に体をずらしている。下三人がまっすぐユーミンを見ているのに対して、このお二人がほんとうにシャイなかたなのがわかる。


「遠い夏」から始まる、木村さんパートを聴いて、その穏やかな歌いかたがとても意外な感じがした。木村さんのソロ、この曲ではここだけなのだが、これまでスローバラードを歌う時の木村さんは、歌詞にあまり左右されず、力強い声量で歌詞を際立たせ、身体を思いっきりかしげるように歌う姿の印象があった。


でも、この時の木村さん、そのあとのサビに続く中居さんにまるで、サビは頼むなと、バトンを渡すような声量で少し抑えたような歌い方をしていたのだ。そして、中居さんが歌いだしたあと歌詞を口ずさみながら、木村さんは上むき加減の遠くに視線を向けている。まるで歌う中居さんに寄り添うかのように、歌詞通りの幼少期に思いを馳せるかのように、少しの間そこにたたずんでいたのだ。


中居さんのソロパート。「あんな気持ちで夢をつかまえてね」と、もともと歌詞もいい箇所だが、中居さんの歌い方に何よりも胸を打たれた。この曲全体を通して、一番胸を打たれるくらいの歌い方だったのだ。SMAPのリーダーとして、夢をつかまえることに誰よりも熱心にやってきた、中居さんにしか歌えないと思うほどに感動する箇所だった。


中居さんは、この歌が本当に好きなんだと思うような感情の込めかたをしていた。サビで高音ということもあるが、中居さんが高音を本気で歌う時に見られる、思いっきりおなかに力を入れるためにひざを曲げる姿勢も良かった。でもなにより、オリジナルの歌の語尾「つかまえてねー」ではなく、「つかまえてねぇぇん」と中居さんらしい独特な歌い上げをしているところが、本当にぐっとくる箇所だったのだ。


そして、そのあと全員で一列に並んだ際、中居さんは胸に手を当てながら歌っているが、これも印象に残る姿だった。


この木村さん、中居さんと続くサビで、後ろにいたユーミンは二人の背中を見ながら、本当に愛おしそうにまずは木村さんを見て、中居さんを見て、中居さんの最高音にいく手前では目を潤ませつつ、歯を出して微笑んでいる。これまでこんなに温かい見守りの視線で、この二人を見てきた人はいないのではないかと思うくらい、本当に愛おしさがさく裂するかのような目をしていた。


間奏のとき、木村さんと中居さんの意外なシンクロが2箇所あった。一つは、最後の「Cause I love you」直後の「ジャーン」の音で、木村さんは後ろに下がりつつ右手を上げてリズムをとり、中居さんはポーズは違うが、同じ音で右手を横にさばくようなポーズをしている。続けて、2番に入る直前二人は「タタタ」と右手で同じようなポーズでリズムを刻んでいる。


この偶然のリズムの取り方のシンクロを見ながら、木村さんと中居さんの中に流れるリズム感の血とか、歌に対する気持ちの乗り方って本当に近いんだなと思ったのだ。ほかのメンバーは、こういう大ぶりなアクションはしないだけに余計に、木村さんと中居さんのシンクロが際立つように思った。


そして、2番。
草なぎさんは、ギターを始めてから本当に歌がうまくなったと思う。歌声がとても安定していて、特に今回思ったのが、語尾がきれいになったということだ。そして、メンバーの誰よりもユーミンをしっかりとまっすぐに見て微笑む姿、特に目元が優しくて、本当にいい表情だと思った。


香取さんは、このわずかなフレーズのなかで、声の響き方が圧倒的によくて、歌が本当にうまいなぁと思わされた。また、最後の「歩いている」のとき、香取さんは胸に手を当てているが、後半に向けて、香取さんは感極まったかのようにこの胸に手を当てるしぐさをずっとしている。


稲垣さんは、この歌のなかでずっと精神が安定しているような感じで、いつもの稲垣さんらしい歌いかた、左肩を少しさげた前傾姿勢になり、右手の指先を開き気味にして優雅に空気をそよがせ、ふんわりと優しい歌い方が本当に良かった。中間管理職と言われるのがわかるほどに、今回のこの歌でずっと、全体の空気感のバランスをとっていたようにもみえた。


また、稲垣さんがソロパートのために前列にいったことで、木村さんと中居さんの間の立ち位置は空間になった。このタイミングで、それまで中居さんだけが横に身体を向けていたのが、木村さんも正面向きから中居さんと背中合わせになるかのように身体を横に向け、そして、背中合わせの状態で、同じように時折あごをあげて上を見ていた。


このあとの、ユーミンの「夢を形にして」の歌詞のとき、ユーミンの目には涙があふれているように見えた。この語尾の「て」の音、オリジナルでは4拍くらいあると思うが(あいまいですが)、ユーミンは胸が詰まったかのようで2拍しか歌えていないし、最後に目を正面に向けて見開きながら、かすかに口元がゆがんで歌い終えている。


そして、このときの木村さんの表情、目をつぶり歌詞を口ずさむこのときのこの顔、見たことがないほどに感情が高ぶったような表情をしていて、とてもはっとさせられた。木村さんがこんなにせつない顔で、目をつぶって口ずさむなんてと。


そして、また全員が円形になって歌うパートに来て、草なぎさんは安定した感じで歌っているが、中居さんは横向きで照れているし、木村さんも伏し目がちで歌い、香取さんは胸に手を置きながら泣きそうな表情になっている。


ここで、ユーミンがさらに、「Cause I love you」を思いのたけをぶつけるかのように潤んだ目で、思いよとどけとばかりに、右手を伸ばした前傾姿勢で歌っている姿を観ると、本当にもうユーミンはラストに向けてSMAPだけしかこの瞬間見ていないくらい集中して、彼らに愛を伝えようとしているのが十分に伝わった。


稲垣さんが、「守ってあげたい」の歌詞のとき手をグーにする姿、「あなたを苦しめる」のところで草なぎさんが下がり眉具合になる姿、中居さんと木村さんが歌いながら一瞬目をつぶる姿、そして最後に香取さんがもう泣く寸前と言わんばかりに、一番最後の「Cause I love you」でもう歌えないと言わんばかりにマイクを離して、正面に向く時に息を吐いた姿など、どのシーンも、一秒も見逃したくないと思うほどの表情を全員がしていた。


私は、趣味でボイストレーニングを2年ちょっとやっているが、あくまで素人なのでまるで専門的な見方はできない。でも、香取さんが胸を抑えながら歌ったのは、もうまさしく嗚咽をこらえるには胸に手を置いて制御するしかないということや、ここぞというときに声をだすためには中居さんのように膝を曲げて、おなかに力を入れるというのはレッスンを通して実感している。


また、ユーミンが今回、自分の歌唱の細部よりも、この日この時のライブ感を優先して、これをOKテイクとしたことが、本当になによりも素晴らしいことだと思っている。SMAPと一緒の6人の時空でしか実現できなかったものを、視聴者にこうした形で届けてくれたことに、本当に感謝したいと思う。


今回、ほぼ1秒単位で映像を止めて細かく書いた。でも、もともと私はレポートをするタイプの書き手ではないので、本当はもっとシンプルに感想を書きたいと思いつつも、SMAPSMAPでいる1秒がほんとうにかけがえのないものに思い、細かく映像に見入り、いまこの時を生きるSMAPを記録したいと思った。


SMAPが伝説になることなんて、望んではいない。
SMAPを過去形でなんか、語りたくない。


このさきもずっと、素晴らしいパフォーマンスを見せ続けてほしい。
夢はまだこの先に続いている。


SMAP5人で歌い続けてほしい。願いはそれだけだ。


では、また。

コラボブログについて

今日は、「剛 しっかりしなさい!」のブログ運営者である、凪(なぎ)さんのコラボブログ 【SMAPとココカラ】(42)真夏の脱獄者〜華麗なる逆襲を受けて、コラボブログ第43回として書いた。


主旨について
ブログ主旨については、下記にリンク先を掲載している。
【コラボブログ:SMAPとココカラ】(2)SMAPとファンは、もはや一つの組織の最下段、【コラボブログ:SMAPとココカラ】(4)木村拓哉さんの自己犠牲の精神の序盤で紹介している。